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俺のサイズとニルスさんの家のお孫ちゃん2
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「その事は家に帰ってからゆっくりと話そうかの。結論を急ぐことではないからのぉ」
「はい」
頷いた後は無言で歩いた。
黙っているとグルグルと余計だったかなとか、ネガティブな思考に陥ってしまう。
なんだか俺、日本で暮らしていた時より感情の起伏が激しい気がする。
気のせいかな? でも、すぐ動揺したり涙が出たり、そうかと思えば甘えたくなって、我儘言い始めてしまう。
こんなの子供の体に気持ちが引きずられてるなんてだけじゃない、三人が俺に甘いと分かってて、それでやってるんだから質が悪すぎる。
「ウヅキ君は、もう少し甘えて我儘になってもいいと思うんじゃがのぉ」
「これ以上ですか? 俺甘え過ぎだと思いますが」
「恩を返したい云々言っている人間が、甘え過ぎ等ある訳が無かろう。狐獣人はの、子に甘いんじゃよ。それに輪を掛けて甘いのが熊獣人じゃよ。そんな私等に出会ってしまったのだから、ウヅキ君は諦めて甘やかされていたらいいんじゃよ」
そう言うと、ニルスさんはひょいと俺の体を抱き上げた。
「ニルスさん?」
「役に立とうとか、恩を返そうとか、その考え方は立派じゃよ。だがの、子供時代は短いんじゃから甘えられる内に大人に甘えておればいいんじゃよ」
「でも」
甘え過ぎて、呆れられたら? そうなったら俺嫌われちゃうんじゃないのかな。
ああ、そうだよ俺怖いんだよ。三人に嫌われるのが怖いんだよ。
だって母さんに愛されなかったんだ。血が繋がった母さんにすら愛されなかったのに、今は優しい三人が俺に愛想をつかす日が来るんじゃないかと怯えてるんだ。
「勿論甘いとは言っても悪いことをしたら叱るし、して良い事と悪い事はちゃんと教える。それは大人の愛情じゃからの」
「はい。俺すぐいい気になっちゃうから、沢山叱って下さい」
俺が真剣な顔で言えば、ニルスさんはふふふと笑って頭を撫でてくれた。
「さあ、ついた。ウヅキ君ここが私の商会じゃよ」
大きな建物の前で俺を地面に下ろすと、ニルスさんは手を繋いでくれた。
「大きい」
ニルスさんの商会は、石造りの大きな建物だった。
一階はお店なのか、鉄の格子が表に付いたガラスが嵌められた大きな扉が印象的だ。
ガラスはわざとなのか完全な透明ではなく、中は覗けない。
「九尾の狐商会?」
扉の上の壁に『九尾の狐商会』の文字と九本のしっぽがある狐の絵が描かれた看板が掛けられていた。
「この商会の名前じゃよ。九尾の狐というのはの、狐獣人には夢物語で憧れの存在なんじゃよ」
「神様?」
「そうじゃの、神様に近い存在じゃな。さあ、中に入ろう」
看板って、この世界にもあるんだな。
変なところに感心しながら、手を引かれ中へと入る。
「わ、ごめんなさいっ!」
扉を開いた途端、何かにぶつかった。
いや、ぶつかって来てその反動で尻もちをついちゃった?
「うわあっーんっ!」
「ど、どうしよう。ごめ、ごめんね。怪我したりしてない? 大丈夫? 痛いの痛いの無くなってー!」
尻もちをついている子供は、大声で泣き出してしまって俺は大慌てでしゃがみ込むと怪我してないか確認をしながら気休めに痛いの痛いのと叫んでしまった。
そしたら魔力が抜けた気がしたんだ。
防御壁を使った時みたいな感覚がした。
「ホルン。勝手にぶつかって来て、その挙げ句に泣くとはいかんよ。ウヅキ君に謝りなさい」
「ホルン?」
俺の隣にしゃがみ込み泣いている子の頭を、撫でているニルスさんが呼んだ名前を口にすると、ホルンと呼ばれた子は俺に両手を伸ばしポカポカと殴り始めた。
「こいちゅが悪いニョーーっ。ホルはわりゅくにゃいーーっ! わああっん。じぃちゃが怒ったーっ!」
「すまんのお、ウヅキ君。ホルン泣いて我儘言う子は九尾様に叱られるんじゃよ。勿論じいちゃんも叱るがの」
ああ、ニルスさんの声が優しい。
ホルン君? を抱き上げて背中を仰け反らせて大泣きしている背中を撫でながら優しく諭すのは、優しいおじいちゃんって感じだ。
「ホル、ホルンは、わりゅくないよ」
「そうかのお? 扉が開きそうだったから外に飛び出そうとしたんじゃないのかの」
「ちがうにょ」
「一人で外に行っては駄目だと、言われてはおらんかったかのう?」
外は数は多くないものの、馬車が走っている。
あの勢いで外に出たら万が一ってこともある。まあ、その前に扉を開いて中に入ってきた人にぶつかるんだろうけれど。
でも、ニルスさんが慌てていないってことは、これ何度もやっているのかも。
「さあ、ホルン、どうだったかの」
「めって、言われた。ホルン、めっよって、とうちゃに言われたよ」
「そうさの。覚えていたのは偉いのう」
ニルスさんに頭を撫でられて、ホルン君は漸く泣き止んだんだ。
「はい」
頷いた後は無言で歩いた。
黙っているとグルグルと余計だったかなとか、ネガティブな思考に陥ってしまう。
なんだか俺、日本で暮らしていた時より感情の起伏が激しい気がする。
気のせいかな? でも、すぐ動揺したり涙が出たり、そうかと思えば甘えたくなって、我儘言い始めてしまう。
こんなの子供の体に気持ちが引きずられてるなんてだけじゃない、三人が俺に甘いと分かってて、それでやってるんだから質が悪すぎる。
「ウヅキ君は、もう少し甘えて我儘になってもいいと思うんじゃがのぉ」
「これ以上ですか? 俺甘え過ぎだと思いますが」
「恩を返したい云々言っている人間が、甘え過ぎ等ある訳が無かろう。狐獣人はの、子に甘いんじゃよ。それに輪を掛けて甘いのが熊獣人じゃよ。そんな私等に出会ってしまったのだから、ウヅキ君は諦めて甘やかされていたらいいんじゃよ」
そう言うと、ニルスさんはひょいと俺の体を抱き上げた。
「ニルスさん?」
「役に立とうとか、恩を返そうとか、その考え方は立派じゃよ。だがの、子供時代は短いんじゃから甘えられる内に大人に甘えておればいいんじゃよ」
「でも」
甘え過ぎて、呆れられたら? そうなったら俺嫌われちゃうんじゃないのかな。
ああ、そうだよ俺怖いんだよ。三人に嫌われるのが怖いんだよ。
だって母さんに愛されなかったんだ。血が繋がった母さんにすら愛されなかったのに、今は優しい三人が俺に愛想をつかす日が来るんじゃないかと怯えてるんだ。
「勿論甘いとは言っても悪いことをしたら叱るし、して良い事と悪い事はちゃんと教える。それは大人の愛情じゃからの」
「はい。俺すぐいい気になっちゃうから、沢山叱って下さい」
俺が真剣な顔で言えば、ニルスさんはふふふと笑って頭を撫でてくれた。
「さあ、ついた。ウヅキ君ここが私の商会じゃよ」
大きな建物の前で俺を地面に下ろすと、ニルスさんは手を繋いでくれた。
「大きい」
ニルスさんの商会は、石造りの大きな建物だった。
一階はお店なのか、鉄の格子が表に付いたガラスが嵌められた大きな扉が印象的だ。
ガラスはわざとなのか完全な透明ではなく、中は覗けない。
「九尾の狐商会?」
扉の上の壁に『九尾の狐商会』の文字と九本のしっぽがある狐の絵が描かれた看板が掛けられていた。
「この商会の名前じゃよ。九尾の狐というのはの、狐獣人には夢物語で憧れの存在なんじゃよ」
「神様?」
「そうじゃの、神様に近い存在じゃな。さあ、中に入ろう」
看板って、この世界にもあるんだな。
変なところに感心しながら、手を引かれ中へと入る。
「わ、ごめんなさいっ!」
扉を開いた途端、何かにぶつかった。
いや、ぶつかって来てその反動で尻もちをついちゃった?
「うわあっーんっ!」
「ど、どうしよう。ごめ、ごめんね。怪我したりしてない? 大丈夫? 痛いの痛いの無くなってー!」
尻もちをついている子供は、大声で泣き出してしまって俺は大慌てでしゃがみ込むと怪我してないか確認をしながら気休めに痛いの痛いのと叫んでしまった。
そしたら魔力が抜けた気がしたんだ。
防御壁を使った時みたいな感覚がした。
「ホルン。勝手にぶつかって来て、その挙げ句に泣くとはいかんよ。ウヅキ君に謝りなさい」
「ホルン?」
俺の隣にしゃがみ込み泣いている子の頭を、撫でているニルスさんが呼んだ名前を口にすると、ホルンと呼ばれた子は俺に両手を伸ばしポカポカと殴り始めた。
「こいちゅが悪いニョーーっ。ホルはわりゅくにゃいーーっ! わああっん。じぃちゃが怒ったーっ!」
「すまんのお、ウヅキ君。ホルン泣いて我儘言う子は九尾様に叱られるんじゃよ。勿論じいちゃんも叱るがの」
ああ、ニルスさんの声が優しい。
ホルン君? を抱き上げて背中を仰け反らせて大泣きしている背中を撫でながら優しく諭すのは、優しいおじいちゃんって感じだ。
「ホル、ホルンは、わりゅくないよ」
「そうかのお? 扉が開きそうだったから外に飛び出そうとしたんじゃないのかの」
「ちがうにょ」
「一人で外に行っては駄目だと、言われてはおらんかったかのう?」
外は数は多くないものの、馬車が走っている。
あの勢いで外に出たら万が一ってこともある。まあ、その前に扉を開いて中に入ってきた人にぶつかるんだろうけれど。
でも、ニルスさんが慌てていないってことは、これ何度もやっているのかも。
「さあ、ホルン、どうだったかの」
「めって、言われた。ホルン、めっよって、とうちゃに言われたよ」
「そうさの。覚えていたのは偉いのう」
ニルスさんに頭を撫でられて、ホルン君は漸く泣き止んだんだ。
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