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わくわくの朝ご飯作り
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「まあまあ、ウヅキ坊ちゃま。朝早くからどうなさったのですか」
朝、楽しみ過ぎていつもより早く目が覚めてしまった俺は、裏庭で一人でラジオ体操していた。
ラジオ体操って凄いよね、曲が無くても身体が動きを覚えていて自然に動けてしまう。
しかも凄くこれってよく考えられて作られているんだって、今更ながらに実感する。
「おはようございます。ロッタさん、これから素振りするのでその前に準備運動していました」
何となくまだ緊張していて、強張りそうな顔を無理矢理笑顔にして挨拶をする。
料理を担当しているロッタさんもニルスさん達と同じ狐獣人だ。旦那さんのポンチョさんは厩屋を担当している。
「準備運動、でございますか?」
「はい。身体が冷えた状態でいきなり激しく動くと足とか腰とかの筋を痛めやすくなるので、その予防です」
「まあ、ウヅキ坊ちゃまは物知りなのですね。確かに寒い日の朝早くから動くとぎっくり腰になったりしますね」
ポンと手を打ってそう話す気さくな様子に、警戒していたしっぽが緊張をとく。
俺がいくら表情を都取り繕うと頑張っても、しっぽが正直過ぎるのが困る。
「あ、あの」
「はい」
「朝ご飯、素振りが終わったらお手伝いしに行っていいですか? 水汲みでもなんでも言いつけて下さい」
「はい。奥様からその様に言いつかっておりますが、よろしいのでしょうか」
「はい。俺で出来そうなことならなんでも。あ、あと」
「焼き鍋で卵料理を作られるのですね」
「はい」
言いながら、ちょっともじもじしてしまう。
料理の担当している人に、自信を持って料理と作らせてと言える程の腕じゃない。
ロッタさんは焼き鍋って言うんだね、鉄鍋とか焼き鍋とか言い方色々あるみたいだ。
「卵は茹でるかスープに入れる程度しかありませんが、焼き鍋で作られるのですね」
「はい。だから油とか調味料とかも使うんです」
油は高いけれど家にあるから大丈夫とは言われてるけれど、本当に使って大丈夫かな。
「畏まりました。昨日買われた焼き鍋はすぐに使える様に油慣らししてございますので」
「ありがとうございます。お手数かけて申し訳ありません助かります」
ぺこりと頭を大きく下げた。
挨拶とお礼と謝罪は大事だって、店長と奥さんに教えて貰っているからそれだけはちゃんとするんだ。
「ふふふ。手間等ありませんからいつでも仰って下さいまし」
「ありがとうございます」
狐獣人の人って、皆こんなに優しいんだろうか。
優しく笑って頭を撫でてくれるロッタさんに、俺はへへへっと笑顔になる。
ニルスさんの家の使用人さん達とも仲良くなれたら、凄く嬉しい。
「では後ほど。素振り頑張って下さいね」
「ありがとうございます」
去っていくロッタさんに手を振って、ラジオ体操の続きをした後蹴りの練習に入る。
昨日ワルドさんと戦った時、途中から妙に動きが良くなってワルドさんの動きも良く見える様になった。
家に戻ってから自分を鑑定したら、習得技のところで蹴り(レベル中の上)、瞬殺(レベル中の下)に上がっていて、気配察知(下の下)、体術(下の下)、対人術(下の下)、攻撃力上昇(魔力を力に掛け攻撃力を上げる。任意で使用魔力を変化させることで攻撃力を自由に上げられる)というのが増えていた。
つまり俺は無意識に魔力を攻撃力に変えていて、だからあんなに攻撃がワルドさんに入ったんだ。
「大神様、また過保護したのかな」
それってズルって言わないのかな。
それとも、俺が努力し続けた結果だったんだろうか。
経験値倍増取得とか、運動能力上昇とか、身体堅固とかを元々持ってるから他の人よりも有利と言えばそうなんだけど、そういうのまで考えたらズルじゃないものなんて何一つないけど。
「努力、努力」
貰ってしまったものは返せないんだから、それを気にしても仕方ない。
だから、俺は大神様がくれたものに胡坐をかかずに努力し続けるんだ。
「沢山努力して、さすがゲルトさんがパーティーを組もうと言っただけあるって、言われる様になるんだ」
体力がついてきたんだろう。素振りの回数もどんどん増えている。
強くなって、ニルスさんとマリアさんとゲルトさんに恩を返せる様になるんだ。
「よし。頑張ろ」
前向きな気持ちで俺は素振りを始めたのだった。
※※※※※※※※※※※※
「ロッタさんお待たせしました。遅くなってごめんなさい」
「いいですよ。坊ちゃまはお芋の皮は剥けますか。洗って籠に入っている分ですが」
「はい。じゃあ、この鍋にお水いれますね」
お芋の入った籠の隣にあった鍋を浄化し、生活魔法で水を入れる。
「まあ、生活魔法がお上手なんですね」
「そんなに得意じゃないので、こういう時練習するようにしてるんです。大丈夫ですか?」
「ええ。生活魔法の水は綺麗ですからね。助かります。でも魔力は大丈夫ですか?」
「はい。俺魔力多いんです」
嫌がられてないと分かって安心して椅子に座りお芋の皮を剥き始める。
「あら、上手。安心してお願い出来そうですね。では私はパンを焼く準備をしますので、お芋の方お願いします」
「はい。これ終わったら玉ねぎの皮を剥いていいですか?」
「え、はい。坊ちゃん良くお分かりになりましたね。よろしくお願いします」
沢山のお芋の皮をするする剥いて、ぽちゃんぽちゃんと水を張った鍋に入れていく。
使用人さんもいるからだろうか、台所には沢山の食材が置いてある。
使っている鍋も大きいし、お芋の数も多い。
「なんか楽しい」
こんなに一度に沢山のお芋を剥いた事なんかないから、なんだかとっても楽しかった。
この世界に来て、俺楽しいことばっかりだ。
大神様ありがとうございます。俺毎日楽しいです。
心の中でお礼を言いながら、俺はお芋の皮を剥き続けたんだ。
朝、楽しみ過ぎていつもより早く目が覚めてしまった俺は、裏庭で一人でラジオ体操していた。
ラジオ体操って凄いよね、曲が無くても身体が動きを覚えていて自然に動けてしまう。
しかも凄くこれってよく考えられて作られているんだって、今更ながらに実感する。
「おはようございます。ロッタさん、これから素振りするのでその前に準備運動していました」
何となくまだ緊張していて、強張りそうな顔を無理矢理笑顔にして挨拶をする。
料理を担当しているロッタさんもニルスさん達と同じ狐獣人だ。旦那さんのポンチョさんは厩屋を担当している。
「準備運動、でございますか?」
「はい。身体が冷えた状態でいきなり激しく動くと足とか腰とかの筋を痛めやすくなるので、その予防です」
「まあ、ウヅキ坊ちゃまは物知りなのですね。確かに寒い日の朝早くから動くとぎっくり腰になったりしますね」
ポンと手を打ってそう話す気さくな様子に、警戒していたしっぽが緊張をとく。
俺がいくら表情を都取り繕うと頑張っても、しっぽが正直過ぎるのが困る。
「あ、あの」
「はい」
「朝ご飯、素振りが終わったらお手伝いしに行っていいですか? 水汲みでもなんでも言いつけて下さい」
「はい。奥様からその様に言いつかっておりますが、よろしいのでしょうか」
「はい。俺で出来そうなことならなんでも。あ、あと」
「焼き鍋で卵料理を作られるのですね」
「はい」
言いながら、ちょっともじもじしてしまう。
料理の担当している人に、自信を持って料理と作らせてと言える程の腕じゃない。
ロッタさんは焼き鍋って言うんだね、鉄鍋とか焼き鍋とか言い方色々あるみたいだ。
「卵は茹でるかスープに入れる程度しかありませんが、焼き鍋で作られるのですね」
「はい。だから油とか調味料とかも使うんです」
油は高いけれど家にあるから大丈夫とは言われてるけれど、本当に使って大丈夫かな。
「畏まりました。昨日買われた焼き鍋はすぐに使える様に油慣らししてございますので」
「ありがとうございます。お手数かけて申し訳ありません助かります」
ぺこりと頭を大きく下げた。
挨拶とお礼と謝罪は大事だって、店長と奥さんに教えて貰っているからそれだけはちゃんとするんだ。
「ふふふ。手間等ありませんからいつでも仰って下さいまし」
「ありがとうございます」
狐獣人の人って、皆こんなに優しいんだろうか。
優しく笑って頭を撫でてくれるロッタさんに、俺はへへへっと笑顔になる。
ニルスさんの家の使用人さん達とも仲良くなれたら、凄く嬉しい。
「では後ほど。素振り頑張って下さいね」
「ありがとうございます」
去っていくロッタさんに手を振って、ラジオ体操の続きをした後蹴りの練習に入る。
昨日ワルドさんと戦った時、途中から妙に動きが良くなってワルドさんの動きも良く見える様になった。
家に戻ってから自分を鑑定したら、習得技のところで蹴り(レベル中の上)、瞬殺(レベル中の下)に上がっていて、気配察知(下の下)、体術(下の下)、対人術(下の下)、攻撃力上昇(魔力を力に掛け攻撃力を上げる。任意で使用魔力を変化させることで攻撃力を自由に上げられる)というのが増えていた。
つまり俺は無意識に魔力を攻撃力に変えていて、だからあんなに攻撃がワルドさんに入ったんだ。
「大神様、また過保護したのかな」
それってズルって言わないのかな。
それとも、俺が努力し続けた結果だったんだろうか。
経験値倍増取得とか、運動能力上昇とか、身体堅固とかを元々持ってるから他の人よりも有利と言えばそうなんだけど、そういうのまで考えたらズルじゃないものなんて何一つないけど。
「努力、努力」
貰ってしまったものは返せないんだから、それを気にしても仕方ない。
だから、俺は大神様がくれたものに胡坐をかかずに努力し続けるんだ。
「沢山努力して、さすがゲルトさんがパーティーを組もうと言っただけあるって、言われる様になるんだ」
体力がついてきたんだろう。素振りの回数もどんどん増えている。
強くなって、ニルスさんとマリアさんとゲルトさんに恩を返せる様になるんだ。
「よし。頑張ろ」
前向きな気持ちで俺は素振りを始めたのだった。
※※※※※※※※※※※※
「ロッタさんお待たせしました。遅くなってごめんなさい」
「いいですよ。坊ちゃまはお芋の皮は剥けますか。洗って籠に入っている分ですが」
「はい。じゃあ、この鍋にお水いれますね」
お芋の入った籠の隣にあった鍋を浄化し、生活魔法で水を入れる。
「まあ、生活魔法がお上手なんですね」
「そんなに得意じゃないので、こういう時練習するようにしてるんです。大丈夫ですか?」
「ええ。生活魔法の水は綺麗ですからね。助かります。でも魔力は大丈夫ですか?」
「はい。俺魔力多いんです」
嫌がられてないと分かって安心して椅子に座りお芋の皮を剥き始める。
「あら、上手。安心してお願い出来そうですね。では私はパンを焼く準備をしますので、お芋の方お願いします」
「はい。これ終わったら玉ねぎの皮を剥いていいですか?」
「え、はい。坊ちゃん良くお分かりになりましたね。よろしくお願いします」
沢山のお芋の皮をするする剥いて、ぽちゃんぽちゃんと水を張った鍋に入れていく。
使用人さんもいるからだろうか、台所には沢山の食材が置いてある。
使っている鍋も大きいし、お芋の数も多い。
「なんか楽しい」
こんなに一度に沢山のお芋を剥いた事なんかないから、なんだかとっても楽しかった。
この世界に来て、俺楽しいことばっかりだ。
大神様ありがとうございます。俺毎日楽しいです。
心の中でお礼を言いながら、俺はお芋の皮を剥き続けたんだ。
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