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冒険者登録1
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「ここが冒険者ギルド」
ニルスさんの家で一晩過ごした翌朝、ご飯を食べた俺はニルスさんとゲルトさんと一緒に冒険者ギルドにやってきた。
ニルスさんの家は、凄く大きくて使用人さんも数人いてなんだか落ち着かない感じがした。
だけど部屋は慣れるまではゲルトさんと一緒にと言われて、内心ホッとしたけどゲルトさんに申し訳ない気持ちにもなった。
旅の間何度と宿に泊まり、その度にゲルトさんと同室になったんだけどシングルベッド二つにそれぞれ寝ても俺がいつの間にかゲルトさんの方に行っていて、朝になると大焦りというのを繰り返してたから、一人で眠れないんだろうって思われてるんだと思う。
寝相悪くは無いはずだし、なんならベッドが離れている部屋も多かったのに毎回ゲルトさんのベッドにいる俺って何なんだろう。
ゲルトさんに抱き込まれて寝るのが幸せすぎて、しっぽの動きみたいに無意識に移動してしまうんだろうか。
これが今の大きな悩みだったりする。
「ウヅ」
「あ、はい」
俺がぼんやりしているうちに、二人は中に入ろうとしていたから小走りに近づいた。
「気負わなくていいからな。ちゃんとお前はゴブリンも狩れる」
「はい」
ゲルトさんに小声で励まされて、俺は胸を張って中へと入った。
「あ、ゲルトが戻って来たみたいだ」
「なんだ? ニルスさんと子供?」
「ニルスさんの孫じゃないよな、狐獣人じゃない」
ガヤガヤと話し声が聞こえてきて、視線も感じる。
そしてお酒の匂いが奥の方から漂ってくる。
緊張で冷や汗が出そうになるけど、奥歯を噛んで無表情を保とうとする。
大丈夫、しっぽも耳も普通だ。
緊張しながらゲルトさんの横を歩くと、人族っぽい女の人が座っている受付と書かれた札が立っている机の前でゲルトさんが足を止めた。
「ゲルトさんお帰りなさいませ」
「ああ、護衛依頼達成の手続きを頼む」
俺と話すよりだいぶ低いゲルトさんの声に、俺は一瞬で緊張がとけて聞き惚れてしまう。
ゲルトさんの低い声、格好いい。
「ギルドカードお返しいたします。依頼料は現金とギルド預けどちらになさいますか」
「預けておく」
「畏まりました」
「ウヅ」
「は、ひゃい」
か、噛んだ。
恥ずかしくて涙が出そうだけど、必死に堪えてゲルトさんの隣に向かう。
「この子の冒険者登録を頼む。保証人は俺とニルスさんだから、その手続きも一緒にな。あと俺とパーティーを組むからその手続きも頼む」
「失礼ですが、お幾つになりますか」
「じ、十歳です」
俺が精一杯背伸びしながら十歳と言った途端、背後から「嘘だろ、あれ幼児だろ」とかか「あんなの冒険者なんて続かねえよ」とか「ゲルトがパーティーを組むだと?」なんて声が聞こえてきた。
「保証人、グリームの町に住民登録はされていないのですね。畏まりました。代筆は必要ですか?」
この人いい人だ。
俺が幼く見えてもちゃんと手続きさせようとしてくれて、子供扱いもしないし、視線も合わせようとしてくれている。
「自分で書けます」
ただ、文字は書けても机に手が届かない。
何せ机の高さが俺の目よりも上なんだ。
「ではこちらの書類に、ええと」
「ほら」
ゲルトさんは俺を抱き上げると、左腕だけで抱っこして俺にペンを持たせた。
少し書きにくいし、かなり恥ずかしいけれど俺は早く書類を書こうと必死に手を動かした。
「あの、属性の欄はどうしたらいいですか?」
「そちらは簡易鑑定の魔道具で確認してから職員が記入いたしますので、分かる箇所のみご記入下さい」
レベルとか属性とか全部鑑定して書いてもらった方がいいのかな。
年齢と名前と種族を書いて習得魔法に、生活魔法水、火、浄化と書いて終わりだ。
「お願いします」
「はい、承りました。ご記入ありがとうございます」
「ゲルトさんありがとう」
俺が言うとゲルトさんはゆっくりと下ろしてくれたからホッとする。
抱っこされるのはだいぶ慣れて来たけれど、知らない人ばかりの場所で注目されての抱っこは恥ずかし過ぎる。
「では鑑定はあちらの部屋で行います。お二人もお手数ですがご一緒に……」
「よう、ゲルト。子守の依頼か」
なんとか登録出来そうだ、安心した俺の前に凄くお酒臭い人が突然割り込んで来たんだ。
ニルスさんの家で一晩過ごした翌朝、ご飯を食べた俺はニルスさんとゲルトさんと一緒に冒険者ギルドにやってきた。
ニルスさんの家は、凄く大きくて使用人さんも数人いてなんだか落ち着かない感じがした。
だけど部屋は慣れるまではゲルトさんと一緒にと言われて、内心ホッとしたけどゲルトさんに申し訳ない気持ちにもなった。
旅の間何度と宿に泊まり、その度にゲルトさんと同室になったんだけどシングルベッド二つにそれぞれ寝ても俺がいつの間にかゲルトさんの方に行っていて、朝になると大焦りというのを繰り返してたから、一人で眠れないんだろうって思われてるんだと思う。
寝相悪くは無いはずだし、なんならベッドが離れている部屋も多かったのに毎回ゲルトさんのベッドにいる俺って何なんだろう。
ゲルトさんに抱き込まれて寝るのが幸せすぎて、しっぽの動きみたいに無意識に移動してしまうんだろうか。
これが今の大きな悩みだったりする。
「ウヅ」
「あ、はい」
俺がぼんやりしているうちに、二人は中に入ろうとしていたから小走りに近づいた。
「気負わなくていいからな。ちゃんとお前はゴブリンも狩れる」
「はい」
ゲルトさんに小声で励まされて、俺は胸を張って中へと入った。
「あ、ゲルトが戻って来たみたいだ」
「なんだ? ニルスさんと子供?」
「ニルスさんの孫じゃないよな、狐獣人じゃない」
ガヤガヤと話し声が聞こえてきて、視線も感じる。
そしてお酒の匂いが奥の方から漂ってくる。
緊張で冷や汗が出そうになるけど、奥歯を噛んで無表情を保とうとする。
大丈夫、しっぽも耳も普通だ。
緊張しながらゲルトさんの横を歩くと、人族っぽい女の人が座っている受付と書かれた札が立っている机の前でゲルトさんが足を止めた。
「ゲルトさんお帰りなさいませ」
「ああ、護衛依頼達成の手続きを頼む」
俺と話すよりだいぶ低いゲルトさんの声に、俺は一瞬で緊張がとけて聞き惚れてしまう。
ゲルトさんの低い声、格好いい。
「ギルドカードお返しいたします。依頼料は現金とギルド預けどちらになさいますか」
「預けておく」
「畏まりました」
「ウヅ」
「は、ひゃい」
か、噛んだ。
恥ずかしくて涙が出そうだけど、必死に堪えてゲルトさんの隣に向かう。
「この子の冒険者登録を頼む。保証人は俺とニルスさんだから、その手続きも一緒にな。あと俺とパーティーを組むからその手続きも頼む」
「失礼ですが、お幾つになりますか」
「じ、十歳です」
俺が精一杯背伸びしながら十歳と言った途端、背後から「嘘だろ、あれ幼児だろ」とかか「あんなの冒険者なんて続かねえよ」とか「ゲルトがパーティーを組むだと?」なんて声が聞こえてきた。
「保証人、グリームの町に住民登録はされていないのですね。畏まりました。代筆は必要ですか?」
この人いい人だ。
俺が幼く見えてもちゃんと手続きさせようとしてくれて、子供扱いもしないし、視線も合わせようとしてくれている。
「自分で書けます」
ただ、文字は書けても机に手が届かない。
何せ机の高さが俺の目よりも上なんだ。
「ではこちらの書類に、ええと」
「ほら」
ゲルトさんは俺を抱き上げると、左腕だけで抱っこして俺にペンを持たせた。
少し書きにくいし、かなり恥ずかしいけれど俺は早く書類を書こうと必死に手を動かした。
「あの、属性の欄はどうしたらいいですか?」
「そちらは簡易鑑定の魔道具で確認してから職員が記入いたしますので、分かる箇所のみご記入下さい」
レベルとか属性とか全部鑑定して書いてもらった方がいいのかな。
年齢と名前と種族を書いて習得魔法に、生活魔法水、火、浄化と書いて終わりだ。
「お願いします」
「はい、承りました。ご記入ありがとうございます」
「ゲルトさんありがとう」
俺が言うとゲルトさんはゆっくりと下ろしてくれたからホッとする。
抱っこされるのはだいぶ慣れて来たけれど、知らない人ばかりの場所で注目されての抱っこは恥ずかし過ぎる。
「では鑑定はあちらの部屋で行います。お二人もお手数ですがご一緒に……」
「よう、ゲルト。子守の依頼か」
なんとか登録出来そうだ、安心した俺の前に凄くお酒臭い人が突然割り込んで来たんだ。
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