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スライムを狩ってみよう5

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「あれがスライム」

 馬車の中からそっと様子を見て、俺はちょっと、いやかなり引いてしまった。
 なんていうか想像してたのよりもグロかった。
 なんだろう、一言で言えば大きな半透明のゼリーの塊に見えなくもない。
 大きさはそうだなあ、スライム一体の大きさがお店の十二ロールトイレットペーパーが八パック入ってくるダンボール位かなあ?
 この例えはおかしいかな、スライム四角いわけじゃないし。でも多分それ位の大きさなものが、ふるふると震えながらちょっとずつ動いている。
 核というのはあの真ん中の赤いもので、あれを壊せばいいんだね。
 でも、こんなにいるなんて俺の探索では分からなかったよ。十体以上いないか、これ。
 団体でいるの凄く気持ち悪いんだけど。

「ウヅ、大丈夫か?」
「え、あ、はい。想像と違ってたので驚いただけです」

 俺、アドリブに弱いタイプなんだよな。
 動揺するとどんどん言葉が丁寧になっていく。

「魔物ってなんなんでしょうね」

 あれで生きてるとか不思議すぎる。
 スライムって何を食べるんだろう。

「あの、取り敢えず何をやっても襲ってはこないんですよね」
「ああ、スライムに触れると取り込もうとするが、離れていれば大丈夫だ。あいつらは動きも遅い」
「じやあ、試してみてもいいですか?」

 取り込もうとすると聞いて、近づきたくない気持ちが更に強くなる。
 気持ち悪すぎて近づきたくないけど、子供でも狩る魔物から逃げるのは流石に嫌だ。
 でも、これ触るのも近寄るのも嫌だなあ。

「試す? ああ、いいぞ」
「じゃあ、行きます」

 あんなのに神様から貰った短剣は使いたくないし、木の槍持って近づくのも出来れば避けたい。

「ウヅキ君頑張ってね」
「無理だと分かったらそう言うんじゃぞ」

 二人は心配そうにしてるけど、俺の好きにやらせてくれるみたいだ。

「行きます」

 ひょいっと馬車から飛び降りる。
 俺の背にはかなり高い御者台も、身体能力高いのか難なく飛び降り綺麗に着地すると、足元に転がっているなるべく尖った感じの石ころを数個掴んで、スライムに近付いた。

「鑑定」

スライム:HP1のこの世界最弱の魔物。時々狩られた後に魔石を残す。核は物理攻撃で破壊できる。剣先、投石で攻撃可能。

 俺の鑑定だいぶ説明が増えてきた。

「投石でもいける。俺の力でも大丈夫?」

 拾った石を足元に置き、まず一個目を力いっぱい投げてみる。
 魔石が落ちるなら、沢山落ちて欲しい。
 そしたらそれをニルスさん達に渡すんだ。力の弱い俺でも少しづつでもいいから返せるようになりたい。
 魔石一杯落ちろ、いっぱいいっぱい落ちろと念じながら投げてみたんだ。

 ぷよん。の後にぷしゅうと空気が抜けるような音がしてスライムが崩れていく。
 それと同時に半透明部分が減っていき、核だけがふるふる動く余計に気持ち悪い状態になる。

「気持ち悪い……もういいよね? えいっ!」

 また力いっぱい次の石を投げる。
 大きさは様々だけど、結構石が落ちてる場所で良かった。

「おや」
「まあ」
「なっ!」

 後ろから声が聞こえるけれど、俺は気にせずにどんどん石を投げていく。
 石が足りなくなったらまた集めて、また投げ続け気がつけばスライムは姿を消して辺りにはキラキラしたものが落ちていた。

「なんか最後の方、投げる力強くなってた?」

 首を傾げながら、あのキラキラしたものが気になって後ろを振り返る。
 近付いて大丈夫なのかな?

「ウヅ」
「ゲルトさん」
「石を投げ始めた時は驚いたが、ちゃんと狩り出来たな」

 なぜか笑いながら言ってるけど、これだって狩りだよね?

「はい。あの、スライム沢山いて、触ると取り込まれるっていうから、あの、それになんだか沢山いるの気持ち悪いというか」

 側に寄りたくなかったんだよなぁ。

「ぷっ。そうか、気持ち悪かったか」

 ぐしゃぐしゃっとゲルトさんは機嫌良さげに俺の頭を撫でまくる。

「あの、それで、キラキラしたのがアチコチにあるんですけど、あれ何ですか?」

 核は全部攻撃出来た筈なんだけどなあ、何体か核が残ってるのかな。

「キラキラ? ちょっと待ってろ」
「あ、浄化!」

 何となくヌメヌメしている地面を、ゲルトさんに歩かせたくてスライムがいた辺りの地面全体に浄化の魔法を掛けると、ヌメヌメがすっかり消えて綺麗な地面になった。

「ウヅ……」

 なぜか残念なものを見るような顔を一瞬した後、ゲルトさんはキラキラしているところに向かい始めた。

「これ魔石だ、こっちにも」
「え、そんなに落ちるものなんですか?」

 待ってろと言われたけれど、俺は我慢できずにゲルトさんのところに走っていく。
 浄化した地面は湿ってさえいないのが、凄い。

「ほら、これがスライムの魔石だ。手を出してみろ」
「これが」

 ジャラジャラと俺の手のひらに魔石を落していくゲルトさんは、困った様な悩んでいる様な顔をしているから、俺は不安になってしまう。

「俺、何か悪いことしましたか? 石を投げたのが悪かったですか?」

 さっき槍を教えて貰ったのに、自分で勝手に投石に変更してしまったことだろうか。
 確かに勝手な事をした。

「このスライムは怖くないと言っただろ。狩れるならどんなやり方でも問題ない。もっと幼い子にさせるときは大人が抱き上げて槍で刺させるんだかなら。ウヅが一人で出来ないならそうしようと思っていたし」

 それはなんていうか、接待狩りとでもいうんじゃないだろうか。
 石を投げる俺も俺だけど、そんな狩り方初めてだってしたくない。

「それじゃあどうして」
「魔石が落ちすぎてるんだよ。スライムは十体狩って一つ魔石を落とす程度なんだ、殆どのスライムが落とすなんて聞いたことないんだよ」
「そ、そうなんですか?」

 それ、多分なんかの取得率が上がるとか書いてあったのが原因だと思う。
 それに俺、魔石落ちろって念じながら石を投げてたし。

「取り敢えず馬車に戻ろう。魔石は全部拾ったから」
「はい」

 俺は両手一杯の魔石を落とさないように、気を付けて歩き始めた。

「なんにせよウヅ、初めての狩り成功おめでとう。冒険者に一歩近づいたな」

 急に上から言葉が降ってきて、俺は驚いて立ち止まってしまう。

「ゲルトさん」
「槍で狩らなきゃっていう固定観念を無視して、自分で工夫できたのも偉かった」
「あの」
「ただし、スライムの中には体液が飛び散ると危険な種類もいるから、種類によって使い分けるんだぞ」
「はい」

 もしかしなくても、褒めてもらえたんだ。
 ゲルトさんが困惑しているのも気が付かずに、俺は単純に喜んでいたんだ。
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