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スライムを狩ってみよう3
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「ウヅキ君、ゲルト君を起こしてきてくれるかしら」
「はい」
ニルスさんは馬車を停めてしまったから、俺はマリアさんに言われるがままにゲルトさんを起こしに御者台から扉を開いて馬車の中へと入る。
「ん? ウヅも寝に来たのか?」
俺が中に入ると、声を掛ける前にゲルトさんは薄目を開けて手招きした。
俺が寝ていた時は、壁に取り付けられているベッド用の台を使ってたけれど、ゲルトさんは壁に寄り掛かる様にして寝てたみたいだ。
それで十分に寝れるのかな、ちょっと心配。
「あのね」
「うん、おいで」
馬車は俺の背丈の半分くらいの囲いがあって、屋根の部分は幌になったり、囲いと同じ木製に変えて箱馬車にもなる不思議な作りで馬車全部が魔道具なんだそうだ。
ゲルトさんは壁に寄りかかり、その体勢のまま近付いた俺を抱き込んだ。
「体冷えたか? 寒くないか」
薄目状態で俺を見ながら、のんびり口調で聞いてくる。
なんだかこんな些細なことがたまらなく嬉しくて、しっぽが揺れる。
「うん、あのね。遠くにスライムがいるんだよ」
「スライムか、あいつらは襲ってこないから怖くないぞ」
ゲルトさんに抱き込まれて幸せな気持ちになっている俺は、離れたくないなぁとつい両腕をゲルトさんの背に回してしまう。
「あのね、ニルスさんが俺の練習にいいものが出たって、それでマリアさんがゲルトさんを起こしてきてって」
俺はゲルトさんが好きだから、こうしてくっついてるとドキドキするけれど、ゲルトさんはそんな感情がないから呑気なものだ。
こうして抱きしめているのだって、寝ぼけて抱き枕程度の感覚なんだろうけれど、それは仕方ない。
「ん? 起こす?」
「うん、俺の練習? 俺スライム狩れるかな」
パチリとはっきり目を開けたゲルトさんは、俺を抱っこしたまま立ち上がり馬車の外に出た。
「ゲルト君早く起こしてすまなかったのう」
「いえ、スライムをウヅに狩らせると聞きました」
さっきまでののんびりとした話し方じゃない、キリッとしたゲルトさんは格好いいと思う。
あぁ、俺なんでこんな子供の姿なんだろ。
子供の姿というか、子供。
ただでさえ、同性っていうのがあるのに、こんな子供を相手に考えるわけがない。
ゲルトさんは十七歳なんだって、日本に住んでた時の俺なら同じ年なのになあ。
今の俺は、泣いて慰められ、甘やかされて抱っこされてる。
こんなの、好きとか嫌い以前の話だ。
獣人って寿命が長いから七歳位の年の差なんて何でもないらしいけど、でも子供と大人の七歳差ってやっぱりちょっと大きなハンデだと思うんだよねえ。
「そうさの、狩りの練習にいいじゃろう」
「そうですね、でもだいぶ遠いみたいですが、よく見つけましたね」
「ウヅキ君が見つけたのよ。目がいいのね」
見つけたのは探索の能力のお陰だけど、一応肉眼でも見えたから良しとしよう。
「そうか、ウヅ凄いな」
くしゃくしゃと頭を撫でられて、嬉しくて照れてしまう。
「たまたま見つけただけです。なんか遠くに変な形の物がいるなって」
「そうか。ニルスさん、ちょっとスライムのところに行く前にここで練習させてみてもいいでしょうか」
「ゲルト君の良いと思う方法で構わないよ」
「ありがとうございます。ウヅ、下ろすよ」
あっさりと地面に下ろされて寂しいなあと内心しょんぼりしながらも、今はスライム狩りをするんだと気持ちをすぐに切り替えた。
「まず確認だ。ウヅはスライムがどういう魔物か知ってるか?」
「知らないです。見たこともないです」
自信なく答える。
魔物なんていない世界に住んでいたんだから仕方がないけれど、スライムってこの世界だとどこにでもいる魔物なのかな。
「そうか、スライムは色々種類があるけれどこの辺りに出るのは一般的なスライムだ。あいつらは弱いし自分からは攻撃してこない。狩るとたまに小指の先程の魔石を残すものがいる程度で、それは魔導ランプの燃料に出来るんだ」
「魔石?」
「そう魔石、あまり出ないがな。で、スライムは真ん中に赤い核みたいなものがあって、その周りは薄い膜で包まれた水分、とろみのあるスライム液と呼ばれるもので覆われているんだ。ここまで理解できたか?」
「何となく分かった気がします」
水風船の中に核があるイメージを想像して頷く。
もしこのイメージが正しいとしたら、魔物って凄いな。
なんでそんなのが動けるのか理解できない。
「スライムの膜を破っただけじゃ駄目で、核を壊さないといけないんだが、核は脆いから衝撃を受けるとすぐに壊れるんだ。だから子供のレベル上げに丁度いいんだよ」
「そうなんですね」
子供のレベル上げってまさに俺の為にある様な獲物だね、そりゃニルスさんも俺の練習用って思って当然だ。
じゃあ俺でもなんとかなるのかな、よし頑張るぞ。
「はい」
ニルスさんは馬車を停めてしまったから、俺はマリアさんに言われるがままにゲルトさんを起こしに御者台から扉を開いて馬車の中へと入る。
「ん? ウヅも寝に来たのか?」
俺が中に入ると、声を掛ける前にゲルトさんは薄目を開けて手招きした。
俺が寝ていた時は、壁に取り付けられているベッド用の台を使ってたけれど、ゲルトさんは壁に寄り掛かる様にして寝てたみたいだ。
それで十分に寝れるのかな、ちょっと心配。
「あのね」
「うん、おいで」
馬車は俺の背丈の半分くらいの囲いがあって、屋根の部分は幌になったり、囲いと同じ木製に変えて箱馬車にもなる不思議な作りで馬車全部が魔道具なんだそうだ。
ゲルトさんは壁に寄りかかり、その体勢のまま近付いた俺を抱き込んだ。
「体冷えたか? 寒くないか」
薄目状態で俺を見ながら、のんびり口調で聞いてくる。
なんだかこんな些細なことがたまらなく嬉しくて、しっぽが揺れる。
「うん、あのね。遠くにスライムがいるんだよ」
「スライムか、あいつらは襲ってこないから怖くないぞ」
ゲルトさんに抱き込まれて幸せな気持ちになっている俺は、離れたくないなぁとつい両腕をゲルトさんの背に回してしまう。
「あのね、ニルスさんが俺の練習にいいものが出たって、それでマリアさんがゲルトさんを起こしてきてって」
俺はゲルトさんが好きだから、こうしてくっついてるとドキドキするけれど、ゲルトさんはそんな感情がないから呑気なものだ。
こうして抱きしめているのだって、寝ぼけて抱き枕程度の感覚なんだろうけれど、それは仕方ない。
「ん? 起こす?」
「うん、俺の練習? 俺スライム狩れるかな」
パチリとはっきり目を開けたゲルトさんは、俺を抱っこしたまま立ち上がり馬車の外に出た。
「ゲルト君早く起こしてすまなかったのう」
「いえ、スライムをウヅに狩らせると聞きました」
さっきまでののんびりとした話し方じゃない、キリッとしたゲルトさんは格好いいと思う。
あぁ、俺なんでこんな子供の姿なんだろ。
子供の姿というか、子供。
ただでさえ、同性っていうのがあるのに、こんな子供を相手に考えるわけがない。
ゲルトさんは十七歳なんだって、日本に住んでた時の俺なら同じ年なのになあ。
今の俺は、泣いて慰められ、甘やかされて抱っこされてる。
こんなの、好きとか嫌い以前の話だ。
獣人って寿命が長いから七歳位の年の差なんて何でもないらしいけど、でも子供と大人の七歳差ってやっぱりちょっと大きなハンデだと思うんだよねえ。
「そうさの、狩りの練習にいいじゃろう」
「そうですね、でもだいぶ遠いみたいですが、よく見つけましたね」
「ウヅキ君が見つけたのよ。目がいいのね」
見つけたのは探索の能力のお陰だけど、一応肉眼でも見えたから良しとしよう。
「そうか、ウヅ凄いな」
くしゃくしゃと頭を撫でられて、嬉しくて照れてしまう。
「たまたま見つけただけです。なんか遠くに変な形の物がいるなって」
「そうか。ニルスさん、ちょっとスライムのところに行く前にここで練習させてみてもいいでしょうか」
「ゲルト君の良いと思う方法で構わないよ」
「ありがとうございます。ウヅ、下ろすよ」
あっさりと地面に下ろされて寂しいなあと内心しょんぼりしながらも、今はスライム狩りをするんだと気持ちをすぐに切り替えた。
「まず確認だ。ウヅはスライムがどういう魔物か知ってるか?」
「知らないです。見たこともないです」
自信なく答える。
魔物なんていない世界に住んでいたんだから仕方がないけれど、スライムってこの世界だとどこにでもいる魔物なのかな。
「そうか、スライムは色々種類があるけれどこの辺りに出るのは一般的なスライムだ。あいつらは弱いし自分からは攻撃してこない。狩るとたまに小指の先程の魔石を残すものがいる程度で、それは魔導ランプの燃料に出来るんだ」
「魔石?」
「そう魔石、あまり出ないがな。で、スライムは真ん中に赤い核みたいなものがあって、その周りは薄い膜で包まれた水分、とろみのあるスライム液と呼ばれるもので覆われているんだ。ここまで理解できたか?」
「何となく分かった気がします」
水風船の中に核があるイメージを想像して頷く。
もしこのイメージが正しいとしたら、魔物って凄いな。
なんでそんなのが動けるのか理解できない。
「スライムの膜を破っただけじゃ駄目で、核を壊さないといけないんだが、核は脆いから衝撃を受けるとすぐに壊れるんだ。だから子供のレベル上げに丁度いいんだよ」
「そうなんですね」
子供のレベル上げってまさに俺の為にある様な獲物だね、そりゃニルスさんも俺の練習用って思って当然だ。
じゃあ俺でもなんとかなるのかな、よし頑張るぞ。
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