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一緒に旅しよう1
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「起きたのか?」
「ゲルトさん」
眠い目を擦りながら馬車の後ろから顔を出すと、焚き火の前にゲルトさんが座っていた。
その近くにはニルスさんとマリアさんも座っている。
空は暗いけれど、まだ皆が寝る時間じゃないのかな。
時計が無いから時間が分からないんだ。
「冷えてきたが寒くないか? ん? 震えているみたいだな。火にあたるといい」
毛布に包まっていた俺には、外はだいぶ寒く感じて俺は小さく震えてしまう。
寝てろって言われたのに外に出ていいのかな、どうしようと躊躇っていると足音もなくゲルトさんは馬車に近づいて俺の両脇の下辺りに手を添えると軽々と抱き上げた。
抱き上げた? 俺、抱き上げられてるよっ!
「うわっ!!」
馬車の中から顔を出しただけだった俺を、軽々と抱きあげてしまったゲルトさんにビックリして俺は大声を上げてしまう。
熊獣人のゲルトさんの体は大きい。そして、俺の体は小さ過ぎる位に小さいらしい。
だから軽々と抱き上げられても当然なんだと思うけれど、こんなことされた事ないから驚くやら焦るやらドキドキするやらで顔が熱くなってしまった。
そして俺の感情のまま、ぶわっと広がるしっぽ、そしてピンッと警戒警報並みに立ち上がる耳に、俺は違う意味で焦りまくった。
「ウヅキ君?」
驚きが凄すぎて、ぶわっとしっぽの毛並みが逆立っているし耳もピンッと反応してると気がついて、俺は恥ずかしくてジタバタしてしまう。
俺、卯月だった頃は感情の変化が表情に出ないって言われてたのに、こんな露骨に感情が出るなんて恥ずかし過ぎるよ。
なにこれぇ。
「大丈夫よ落ち着いてウヅキ君、こちらにいらっしゃい」
手足をバタつかせ半泣きの俺に両手を伸ばし、マリアさんはゲルトさんから俺を受け取ってくれて漸く俺は落ち着いたけど、まだ逆立ったしっぽの毛は元に戻らない。
「怖がらせたか?」
「ごめんなさい。あの、こういうのされたこと無くて驚いただけ。怖くないよ。ごめんなしゃいっ。いひゃいっ」
怖がってないとブンブン首を横に振る。
怖くないって言いたくて、焦る俺は焦るあまりに舌を噛んでしまい涙目になりながら、ゲルトさんに精一杯笑顔を返す。
寝る前にゲルトさんが俺を膝の上に座らせてくれた。
あれだって初めてだったけれど、あの時は店長と奥さんのことで頭が一杯だったからまだマシだったんだ。
だから怖くないんだって言いたかった。
怖がっているなんて、思われたくなかったんだ。
「あらあら」
「マリアさん重いよね。下ろして下さい」
本当はもう少しこうして甘えていたいけれど、我慢してそう言えばマリアさんはにっこりと笑いながら焚き火の方に俺を抱いたまま歩き始めた。
こうして抱っこされると、人肌、獣人も人肌? って温かいんだなって分かる。
そして抱っこされると、体温だけで温かいんじゃなくて、心の中もぽかぽかして来て離れがたいんだ。
「マリアさん」
「ウヅキ君は体温が高いわね。夜になって冷えてきたからあったかいわ」
「俺抱っこしてたら温かいですか?」
ぽんぽんと背中を撫でながらマリアさんが笑うから、俺は条件反射で両腕をマリアさんの背中に回して抱き着いてしまう。
今の俺の腕は短いから、背中に回したつもりで届いていない様な気もするけれどこんな体でも役に立てるのかな。
そしたら俺も甘えられて一石二鳥って奴だ。
って、俺元は高校生だっていうのに、何で甘えたいとか。子供の体に精神引きずられ過ぎだろう。
こういうの、恥ずかしい考え方だよね。
「ええ、温かいわ」
「重くないですか? 俺、マリアさんに迷惑……」
遠慮したほうがいいと思うのに、期待でしっぽがユラユラ揺れてしまう。
甘えてもいいのかな、許してくれるのかなって期待しちゃうんだ。
「お馬鹿さんね。迷惑な訳がないわ。夜は冷えて寒いからこうしていられたら温かいし、私は嬉しいけれどウヅキ君は嫌かしら?」
「やじゃない。嫌じゃないです」
マリアさんは俺が甘えやすい様に言ってくれているんだろうか。
年齢にしたら俺のおばあちゃんと言ってもいい位の年齢に見えるマリアさんは、年の甲で俺が甘えたがっているのを察しているのかな。
優しい人なんだな、きっと。
人見知りな俺がこんなにすぐに他人と仲良くなれちゃうって珍しいんだけど、神様が何かしてくれてたのかな。
なんだかニルスさんもだけど、マリアさんも初めて会った人に思えないんだよなあ。
それとも俺が子供だから、甘えたい気持ちが素直に出て来ちゃうのかな。
「じゃあこのままでもいいかしら?」
「マリアさんの負担にならないですか?」
甘やかしてくれる存在なんて俺は知らないから。
店長と奥さんにすら出来なかった甘えを、俺は恐る恐る今日初めて出会ったマリアさんにしてしまったんだ。
「負担だなんてあるわけがないわ」
「じゃあ、少しだけこうしていてもいいですか」
そっとマリアさんの胸元に頬を寄せた。
拒絶されたらどうしようと、怖かったけれどマリアさんはふふふと笑って背中を撫でてくれたんだ。
「お腹すいてないか。スープの残りを温めようか」
「そうさの。温かい物を飲んだら体も温まるだろう。ウヅキ君どうかな」
ゲルトさんとニルスさんがマリアさんに抱っこされている俺の顔を覗き込みながら、優しいことを言ってくれた。
「ううん。お腹すいてないです。今日、沢山食べたから」
「……。そうかのう、ではお腹がすいたら遠慮せずにいうんだよ。スープは沢山残っているしパンもあるからの」
「ありがとうございます。ニルスさん」
俺があまり食べていないと夕飯の時に三人が心配していたから、余計に心配してくれているんだろう。
そんな風に心配されるのも、なんだか嬉しくって頬が緩んでしまう。
「焚火あったかいですね。火にあたるって温かいんですね」
俺は幸せな気持ちになりながら、マリアさんに抱っこされていたのだった。
「ゲルトさん」
眠い目を擦りながら馬車の後ろから顔を出すと、焚き火の前にゲルトさんが座っていた。
その近くにはニルスさんとマリアさんも座っている。
空は暗いけれど、まだ皆が寝る時間じゃないのかな。
時計が無いから時間が分からないんだ。
「冷えてきたが寒くないか? ん? 震えているみたいだな。火にあたるといい」
毛布に包まっていた俺には、外はだいぶ寒く感じて俺は小さく震えてしまう。
寝てろって言われたのに外に出ていいのかな、どうしようと躊躇っていると足音もなくゲルトさんは馬車に近づいて俺の両脇の下辺りに手を添えると軽々と抱き上げた。
抱き上げた? 俺、抱き上げられてるよっ!
「うわっ!!」
馬車の中から顔を出しただけだった俺を、軽々と抱きあげてしまったゲルトさんにビックリして俺は大声を上げてしまう。
熊獣人のゲルトさんの体は大きい。そして、俺の体は小さ過ぎる位に小さいらしい。
だから軽々と抱き上げられても当然なんだと思うけれど、こんなことされた事ないから驚くやら焦るやらドキドキするやらで顔が熱くなってしまった。
そして俺の感情のまま、ぶわっと広がるしっぽ、そしてピンッと警戒警報並みに立ち上がる耳に、俺は違う意味で焦りまくった。
「ウヅキ君?」
驚きが凄すぎて、ぶわっとしっぽの毛並みが逆立っているし耳もピンッと反応してると気がついて、俺は恥ずかしくてジタバタしてしまう。
俺、卯月だった頃は感情の変化が表情に出ないって言われてたのに、こんな露骨に感情が出るなんて恥ずかし過ぎるよ。
なにこれぇ。
「大丈夫よ落ち着いてウヅキ君、こちらにいらっしゃい」
手足をバタつかせ半泣きの俺に両手を伸ばし、マリアさんはゲルトさんから俺を受け取ってくれて漸く俺は落ち着いたけど、まだ逆立ったしっぽの毛は元に戻らない。
「怖がらせたか?」
「ごめんなさい。あの、こういうのされたこと無くて驚いただけ。怖くないよ。ごめんなしゃいっ。いひゃいっ」
怖がってないとブンブン首を横に振る。
怖くないって言いたくて、焦る俺は焦るあまりに舌を噛んでしまい涙目になりながら、ゲルトさんに精一杯笑顔を返す。
寝る前にゲルトさんが俺を膝の上に座らせてくれた。
あれだって初めてだったけれど、あの時は店長と奥さんのことで頭が一杯だったからまだマシだったんだ。
だから怖くないんだって言いたかった。
怖がっているなんて、思われたくなかったんだ。
「あらあら」
「マリアさん重いよね。下ろして下さい」
本当はもう少しこうして甘えていたいけれど、我慢してそう言えばマリアさんはにっこりと笑いながら焚き火の方に俺を抱いたまま歩き始めた。
こうして抱っこされると、人肌、獣人も人肌? って温かいんだなって分かる。
そして抱っこされると、体温だけで温かいんじゃなくて、心の中もぽかぽかして来て離れがたいんだ。
「マリアさん」
「ウヅキ君は体温が高いわね。夜になって冷えてきたからあったかいわ」
「俺抱っこしてたら温かいですか?」
ぽんぽんと背中を撫でながらマリアさんが笑うから、俺は条件反射で両腕をマリアさんの背中に回して抱き着いてしまう。
今の俺の腕は短いから、背中に回したつもりで届いていない様な気もするけれどこんな体でも役に立てるのかな。
そしたら俺も甘えられて一石二鳥って奴だ。
って、俺元は高校生だっていうのに、何で甘えたいとか。子供の体に精神引きずられ過ぎだろう。
こういうの、恥ずかしい考え方だよね。
「ええ、温かいわ」
「重くないですか? 俺、マリアさんに迷惑……」
遠慮したほうがいいと思うのに、期待でしっぽがユラユラ揺れてしまう。
甘えてもいいのかな、許してくれるのかなって期待しちゃうんだ。
「お馬鹿さんね。迷惑な訳がないわ。夜は冷えて寒いからこうしていられたら温かいし、私は嬉しいけれどウヅキ君は嫌かしら?」
「やじゃない。嫌じゃないです」
マリアさんは俺が甘えやすい様に言ってくれているんだろうか。
年齢にしたら俺のおばあちゃんと言ってもいい位の年齢に見えるマリアさんは、年の甲で俺が甘えたがっているのを察しているのかな。
優しい人なんだな、きっと。
人見知りな俺がこんなにすぐに他人と仲良くなれちゃうって珍しいんだけど、神様が何かしてくれてたのかな。
なんだかニルスさんもだけど、マリアさんも初めて会った人に思えないんだよなあ。
それとも俺が子供だから、甘えたい気持ちが素直に出て来ちゃうのかな。
「じゃあこのままでもいいかしら?」
「マリアさんの負担にならないですか?」
甘やかしてくれる存在なんて俺は知らないから。
店長と奥さんにすら出来なかった甘えを、俺は恐る恐る今日初めて出会ったマリアさんにしてしまったんだ。
「負担だなんてあるわけがないわ」
「じゃあ、少しだけこうしていてもいいですか」
そっとマリアさんの胸元に頬を寄せた。
拒絶されたらどうしようと、怖かったけれどマリアさんはふふふと笑って背中を撫でてくれたんだ。
「お腹すいてないか。スープの残りを温めようか」
「そうさの。温かい物を飲んだら体も温まるだろう。ウヅキ君どうかな」
ゲルトさんとニルスさんがマリアさんに抱っこされている俺の顔を覗き込みながら、優しいことを言ってくれた。
「ううん。お腹すいてないです。今日、沢山食べたから」
「……。そうかのう、ではお腹がすいたら遠慮せずにいうんだよ。スープは沢山残っているしパンもあるからの」
「ありがとうございます。ニルスさん」
俺があまり食べていないと夕飯の時に三人が心配していたから、余計に心配してくれているんだろう。
そんな風に心配されるのも、なんだか嬉しくって頬が緩んでしまう。
「焚火あったかいですね。火にあたるって温かいんですね」
俺は幸せな気持ちになりながら、マリアさんに抱っこされていたのだった。
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