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初めての野営5
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「そうなんですか」
そしたら俺はどうやって生きて行ったらいいんだろう。
「でも年齢が達していたら断わるなんて出来ないんじゃ。外見で判断されてしまうんですか」
それって理不尽だと思うけど、どうなんだろ。
「年齢はそうでも、力のない子供が出来るものは限られている。冒険者は依頼を受けるか魔物の討伐で金を稼ぐんだから、力が無いものは生きていけない。体が小さいウヅには負担が多すぎると思うんだ」
「それは」
今生活魔法すら覚えていない俺には、こう言われてしまうと反論出来ない。
「俺料理は少しなら出来ます。計算だって得意です。体が小さくても体力がないわけじゃありません」
隠蔽で隠しているけれど、俺の体力は一般の人より多いはずなんだ。
それに神様がくれた言語理解の能力もある。
何も出来ないわけじゃない。ないよね?
「それでも駄目ですか」
駄目なのかな、そんなに俺小さくなってるのかな。
なんだか顔が段々俯いてきてしまう。耳もへにょりとしてしまう。
「料理ができるの? じゃあ、一緒に今晩のご飯を作りましょうか」
「そうだな、どこかの店に紹介するにしてもどの程度出来るのか分からない事には話にならないからね」
ニルスさんとマリアさんがしょんぼりしてしまった俺に話しかける。
「料理します。あの、火は点けられませんけど」
話しかけられて耳がピンと立つけれど、俺は火の生活魔法すら覚えてないと思い出し、マリアさんへ言いながら、またへにょりと耳が下ってしまう。
「火はいいのよ、慣れないと危ないから。そうねお芋の皮むきをおねがいしようかしら」
「はいっ!」
それなら得意だ。
奥さんに教えてもらってからは、皮むきは俺がやっていたんだから。
「じゃあこっちにいらっしゃい。あなたはゲルト君とうまの世話をお願いね」
「ああ」
マリアさんに手を引かれた俺は、焚きをする為に枯れ枝を集めた場所に移動した。
「お芋はこれよ」
「洗うのは泉でいいですか」
「あそこで洗うと水が濁ってしまうから、まずは水汲みしましょうか」
「はい。あ、俺が持ちます」
木製のバケツをマリアさんが両手に下げ、泉の方に歩こうとするのを引き止める。
「あら、じゃあ一つお願いするわね」
「はい」
バケツを一つ受け取ると、それは結構重かった。
地球にあったプラスチック製のバケツの軽さから比べたら、あのバケツ十個分程度になるんじゃないだろうか。
両手で持ち手を掴んで歩くけれど、そもそも体が小さいから地面にバケツの底が付かない様にするだけでも一苦労だ。
「大丈夫?」
「はい」
重いけど持てないわけじゃない。
むしろ高校生の体だった頃より力があるかもしれない。
あの体だって痩せてたけど力はあった。
店で重いもの沢山扱ってたから、体力だってあった。
でも、今のほうが上な気がするのはどうしてだろう。
「じゃあ水を汲んでね。ゆっくり泉の中に入れないと水が濁ってしまうからね」
「ゆっくり、そっと」
井戸の水だって汲んだことがない俺は、ちょっとドキドキしながらバケツを泉に入れた。
体が小さいから当然腕も短い俺は、バケツを抱える様にしながらやっと水を汲む。
「大丈夫? 持てる? そんなに水を入れなくてもいいのよ」
「大丈夫です」
バケツの持ち手を両手で持っていたけれど、どうしても歩き難くて片手持ちに変えたけれどそれでも何とか運ぶことは出来そうだ。
やっぱりこの体は結構力があるかもしれない。
「ゆっくりでいいのよ、無理しないで」
「大丈夫です!」
たっぷり水を汲んだバケツを軽々運べるのが嬉しくて、俺は早足でさっきの場所に戻りバケツを置くとマリアさんの所に走って戻る。
「持ちますっ」
「これはいいから、お芋を洗ってくれる?」
「でも」
「水は何回も汲まないといけないから、また後でお願いするわ」
「はい」
マリアさんの持っているバケツの方が大きいと気がついて、もしかして俺が使ったバケツならこの世界の子供には簡単な作業なのかもしれないと考えてしまった。
比べられる人がいないからどうしようもないけど、何だか焦ってしまう。
「じゃあお芋洗います」
走って戻り芋を入れられる物を探すと、調理道具が置いてある場所に木の椀があった。
「マリアさん、これ使ってもいいですか」
「いいわよ」
返事を貰ってから木の椀を二つ取り、片方に水を汲む。
芋は少し土が残っているから、まずそれを足元に生えていた雑草をむしり擦り落とし、それから木の椀から右手に水を掬って一つ目の芋に掛けてもう一度雑草で擦り洗い、終わったらもう一つの椀に入れる。
それを渡された芋分繰り返して、水を変えてもう一度洗うと綺麗になった。
「マリアさん洗い終わりました」
洗い終わった芋を水を入れていた方の椀に入れ、もう片方はざっと洗い流す。
「上手に洗えたわね。じゃあ次は皮むきね」
「はい」
「怪我しないように気をつけるのよ」
声を掛けられて、奥さんにもそう言われながら習ったなと思い出して懐かしくなった。
俺はなんにも知らない子供で、給食の味噌汁に入っていたジャガイモがどんな形をしているのか、切り身で焼かれて出てくる魚が、海や川で生きている魚なんだってことも知らなかった。
店長も奥さんも俺の無知を笑わずに、いつも優しく教えてくれたんだ。
「まあ上手」
スルスルと芋の皮をむき、碗に入れていく。
この体でも問題なく作業が出来て、俺はまた一つ安心材料を見つけたんだ。
そしたら俺はどうやって生きて行ったらいいんだろう。
「でも年齢が達していたら断わるなんて出来ないんじゃ。外見で判断されてしまうんですか」
それって理不尽だと思うけど、どうなんだろ。
「年齢はそうでも、力のない子供が出来るものは限られている。冒険者は依頼を受けるか魔物の討伐で金を稼ぐんだから、力が無いものは生きていけない。体が小さいウヅには負担が多すぎると思うんだ」
「それは」
今生活魔法すら覚えていない俺には、こう言われてしまうと反論出来ない。
「俺料理は少しなら出来ます。計算だって得意です。体が小さくても体力がないわけじゃありません」
隠蔽で隠しているけれど、俺の体力は一般の人より多いはずなんだ。
それに神様がくれた言語理解の能力もある。
何も出来ないわけじゃない。ないよね?
「それでも駄目ですか」
駄目なのかな、そんなに俺小さくなってるのかな。
なんだか顔が段々俯いてきてしまう。耳もへにょりとしてしまう。
「料理ができるの? じゃあ、一緒に今晩のご飯を作りましょうか」
「そうだな、どこかの店に紹介するにしてもどの程度出来るのか分からない事には話にならないからね」
ニルスさんとマリアさんがしょんぼりしてしまった俺に話しかける。
「料理します。あの、火は点けられませんけど」
話しかけられて耳がピンと立つけれど、俺は火の生活魔法すら覚えてないと思い出し、マリアさんへ言いながら、またへにょりと耳が下ってしまう。
「火はいいのよ、慣れないと危ないから。そうねお芋の皮むきをおねがいしようかしら」
「はいっ!」
それなら得意だ。
奥さんに教えてもらってからは、皮むきは俺がやっていたんだから。
「じゃあこっちにいらっしゃい。あなたはゲルト君とうまの世話をお願いね」
「ああ」
マリアさんに手を引かれた俺は、焚きをする為に枯れ枝を集めた場所に移動した。
「お芋はこれよ」
「洗うのは泉でいいですか」
「あそこで洗うと水が濁ってしまうから、まずは水汲みしましょうか」
「はい。あ、俺が持ちます」
木製のバケツをマリアさんが両手に下げ、泉の方に歩こうとするのを引き止める。
「あら、じゃあ一つお願いするわね」
「はい」
バケツを一つ受け取ると、それは結構重かった。
地球にあったプラスチック製のバケツの軽さから比べたら、あのバケツ十個分程度になるんじゃないだろうか。
両手で持ち手を掴んで歩くけれど、そもそも体が小さいから地面にバケツの底が付かない様にするだけでも一苦労だ。
「大丈夫?」
「はい」
重いけど持てないわけじゃない。
むしろ高校生の体だった頃より力があるかもしれない。
あの体だって痩せてたけど力はあった。
店で重いもの沢山扱ってたから、体力だってあった。
でも、今のほうが上な気がするのはどうしてだろう。
「じゃあ水を汲んでね。ゆっくり泉の中に入れないと水が濁ってしまうからね」
「ゆっくり、そっと」
井戸の水だって汲んだことがない俺は、ちょっとドキドキしながらバケツを泉に入れた。
体が小さいから当然腕も短い俺は、バケツを抱える様にしながらやっと水を汲む。
「大丈夫? 持てる? そんなに水を入れなくてもいいのよ」
「大丈夫です」
バケツの持ち手を両手で持っていたけれど、どうしても歩き難くて片手持ちに変えたけれどそれでも何とか運ぶことは出来そうだ。
やっぱりこの体は結構力があるかもしれない。
「ゆっくりでいいのよ、無理しないで」
「大丈夫です!」
たっぷり水を汲んだバケツを軽々運べるのが嬉しくて、俺は早足でさっきの場所に戻りバケツを置くとマリアさんの所に走って戻る。
「持ちますっ」
「これはいいから、お芋を洗ってくれる?」
「でも」
「水は何回も汲まないといけないから、また後でお願いするわ」
「はい」
マリアさんの持っているバケツの方が大きいと気がついて、もしかして俺が使ったバケツならこの世界の子供には簡単な作業なのかもしれないと考えてしまった。
比べられる人がいないからどうしようもないけど、何だか焦ってしまう。
「じゃあお芋洗います」
走って戻り芋を入れられる物を探すと、調理道具が置いてある場所に木の椀があった。
「マリアさん、これ使ってもいいですか」
「いいわよ」
返事を貰ってから木の椀を二つ取り、片方に水を汲む。
芋は少し土が残っているから、まずそれを足元に生えていた雑草をむしり擦り落とし、それから木の椀から右手に水を掬って一つ目の芋に掛けてもう一度雑草で擦り洗い、終わったらもう一つの椀に入れる。
それを渡された芋分繰り返して、水を変えてもう一度洗うと綺麗になった。
「マリアさん洗い終わりました」
洗い終わった芋を水を入れていた方の椀に入れ、もう片方はざっと洗い流す。
「上手に洗えたわね。じゃあ次は皮むきね」
「はい」
「怪我しないように気をつけるのよ」
声を掛けられて、奥さんにもそう言われながら習ったなと思い出して懐かしくなった。
俺はなんにも知らない子供で、給食の味噌汁に入っていたジャガイモがどんな形をしているのか、切り身で焼かれて出てくる魚が、海や川で生きている魚なんだってことも知らなかった。
店長も奥さんも俺の無知を笑わずに、いつも優しく教えてくれたんだ。
「まあ上手」
スルスルと芋の皮をむき、碗に入れていく。
この体でも問題なく作業が出来て、俺はまた一つ安心材料を見つけたんだ。
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