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白い空間? なんだこれ4

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 母さんはその後何事も無かったかのようにアパートに戻って来て、俺は元と変わらない日常を過ごした。
 平日の食事は給食が命綱俺の家のことをある程度知っていたのか、担任の先生がこっそり余っているパンをくれたり放課後に給食で余っていた牛乳を飲ませてくれたりしたこともあった。
 それで何とか命をつないだ。

 俺が少し大きくなると母さんは、俺に買い物をさせるようになった。
 小さな体で牛乳とかペットボトルの水とか買うのは大変だったけれど、一円玉や五円玉は何故か母さんから貰えたので俺はそのためたお金を握りしめて二人の店に行くようになった。

 百円溜まれば見切り品と店長が言うものが買える。
 お店だから、お金がない時は行ってはいけないと思っていた。
 勿論二人はいつでもおいでと言ってくれたけれど、それは駄目だと自制していたんだ。
 だって、そうしないと毎日行ってしまいそうだったんだ。
 お腹いっぱい食べたい欲求も勿論あった。
 でも、もっと欲しかったのは二人の優しい笑顔だった。
 いつだって俺を笑顔で迎えてくれる二人に会いたくて、俺の名前を呼んでくれる二人に会いたくて店に行っていたんだ。

「あの二人に俺は恩なんて一言で済ませられないくらいのことをしてもらっていました。何もお礼が出来ないまま終わるのが辛いんです。それに奥さんにもっと長生きして欲しいから」
「君の命だよ」
「だからです。他の人の命を譲って欲しいなんてお願いできるわけ無い」
「悪いけれど、それは出来ないな。私は地球の世界の命には干渉出来ないから。君の場合は私が関わってしまっているから地球の神に頼み込んで償いのためにここに呼び寄せられたんだよ。そのせいで君の存在は地球ではなかった事に」

 すまなそうな声で神様は言葉を続けていたけれど、頭に入ってこなかった。
 いや、頭はないのか、声が聞こえても理解できなかったと言うべきか。

 俺の存在は地球ではなかった事になる?
 それは、誰も俺を知らないということ。
 母さんも、店長も、奥さんも、友達もクラスメイトも先生達も、鈴木も。

「それじゃ俺はなんのために生きていた?」

 誰の記憶にも残らない、だって俺は生きていなかったことになるんだから。
 母さんは俺を産んだりしていないし、俺は店長にも奥さんにも会っていなかった。

 ただ、俺の記憶の中に存在しているだけ、それってなんて虚しい。
 
「残っている寿命にこだわりなんてありませんから、償いは不要です」
「でも」
「俺のして欲しいことが出来ないのに? それならもう終わらせてください」

 すごく悲しいのに、涙すら今の俺は流せない。
 俺がいなくなっても、店長と奥さんに覚えていて欲しかった。
 落ち着いたら会いにいく、きっとそれだけが俺の希望で、その希望だけで俺は一人きりの生活に耐えるつもりだった。
 そう出来るのは、店長と奥さんのとの思い出があるからだ。
 俺が覚えていて、店長達も覚えてくれている。
 その思いがあったからなんだ。

「すまない。君を私の管理する世界で生きさせるつもりたった。君に新しい体を与え私の世界で幸せに生きてもらう事こそが償いになると、そう考えていた」
「知らない土地でひとり生きるのが幸せですか?」

 そんなので幸せになれるだろうか。
 母さんの借金を背負わなくていい、それしか利点が浮かばない。
 俺人付き合い下手くそだし、新しい環境に馴染めるまで時間が掛かる方だし。

「何か希望ある? 何があれば新しい環境でも幸せだと思うえる?」
「本があれば」

 小学校に入って中学卒業するまでは、放課後はほぼ図書室にいたんだ。
 母さんは教科書以外の本を俺が読みたがるなんて、想像すらしたことなかっただろうけれど、俺は読書が好きだった。

「あぁ、本は……あるけれど庶民が気軽に買えるものではない」

 消え入りそうな声で神様が言う、俺神様を困らせてばかりだな。
 どうしたらいいんだろう。
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