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白い空間? なんだこれ3
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「償いって、でも」
黒猫を助けたせいで俺が死んじゃったとしても、俺自身はそれを嫌だとは思えない。
あのまま俺が生きていても、神様は人生が変わるみたいな事を言ってくれてたけど、そうなるとは思えないんだよなあ。
だって母さんが借金してたところ、かなりヤバいところだったんだもん。
あれ、どうやったって一生搾取され続ける奴だと思う。
借金を返せと言ってきたから母さんが消えたと話した。そしたら、息子であるお前が払えないなら俺の親しい人間に無理矢理にでも払わせると言い出した。
そうじゃなきゃ俺の内臓を売るとか言って、顔は整ってるけれど筋肉ついた体つきしてるから売りは人気出ないだろうけどそれでもいいとか、生きてても死んでても借金を払わせると言わんばかりだった。
今、思ったけどもしかして母さんの借金の全額俺聞いてなかったかもしれない。
つまり終わりを知らないのに、毎月お金を払い続けるしかなかった。
あ、そういうことは、俺の死体はあの借金取りに引き取られたんだろうか。
それはちょっと悲しいかもしれない。
「卯月君。償いはさせてもらう。これは決定だよ」
「償いって俺の希望は聞いて貰えるんでしょうか」
「希望、どんなことかな」
「あの、俺は寿命が残ってるんですよね」
「そうだよ。でも、地球にある君の体は死んでしまったから生き返らせることは出来ないよ」
そんなことは出来ると言われても望まない。
だって、生き返っても待ってるのは借金を支払う為に生きる人生だ。
「それは望みません。でも、俺に残ってた寿命他の人にあげられませんか」
「他の人?」
「俺がお世話になった、店長の奥さん。癌みたいなんです」
店の立ち退きが決まる少し前に見つかった癌の治療を奥さんは始めたばかりだった。
少しステージが進んでいるけれど、諦めず治療を受けると二人は言っていたのに店の立ち退きが決まり、それが自分の治療費を稼ぐ為だと知って奥さんはすっかり気力を無くしてしまったんだ。
辛い治療を受ける気力も食事を取る気力も失って、点滴で命を繋ぐ日々。
料理が得意だった奥さんは、俺に色んなものを食べさせてくれた。
「店長と奥さんは俺の恩人なんです」
俺、は二人に初めて会った時の話を神様に話し始めた。
初めて二人に会ったのは、俺が八歳の夏だった。
母さんが何日も帰って来なくて、買い置きされていたパンが無くなって俺は二日程水だけで生活していたんだ。
学校がある日は給食があったから、母さんが俺の食事を忘れても何とか生きてこれたけれど生憎夏休み中で給食なんて期待できなかったから、俺は本当に腹ペコで子供ながら死ぬかもしれないと考えて外に出たんだ。
「俺は唯一持ってた百円玉を握りしめてアパートを出て、ふらふらしながら歩いていて倒れたんです」
「それで?」
「偶然通りかかった店長と奥さんが、俺をかかりつけのお医者さんに診せてくれて栄養失調だと」
母さんはアパートに戻ってこず、医者への診察代は店長が払ってくれたんだと思う。
その後俺自分の家に連れ帰り、麺が柔らかくなるまで煮たうどんを奥さんが食べさせてくれたんだ。
病院で点滴を受けて、重湯みたいなのを飲ませられて、それだけしか胃に入ってないからね。
風呂にずっと入ってなかったし、同じ服を着続けていた俺は汗臭いなんてもんじゃなかった筈なのに、嫌な顔一つせずに俺を膝に抱いて奥さんはうどんを食べさせてくれたんだ。
「それから俺は二人が経営する店に通うようになったんだよ。数日二人の家にお世話になった俺がアパートに帰ろうとすると、百円しか持ってない俺に、賞味期限が迫っていて売り物に出来ないものだと言って数個のパンとお菓子を売ってくれたんだ」
ビニール袋に入れながら、店長は食べ終わった包みはお店に持ってきてと言ってきたんだ。
意味が分からなかったけれど、俺は頷いてアパートに帰ったんだ。
「それで?」
「母さんは戻っていなくて、俺は一人で数日を過ごしたんだ。そして食べ終わったパンとお菓子の包みをビニール袋に入れてお店に持っていったんだ」
奥さんがまた抱っこしてくれるんじゃないかと期待しながら、俺は店に行ったんだ。
膝に抱っこされご飯を食べさせて貰った記憶なんて、俺には無かった。
赤ん坊の頃は流石に母さんも俺に食べさせてくれていたとは思うけれど、その記憶が無かったんだ。
「二人はよく来たねと俺を歓迎してくれて、お風呂に入れ着替をしたらご飯を食べようと言ってくれたんだ」
本当は駄目だと分かってたのに、俺は二人の優しさに甘えてしまったんだ。
黒猫を助けたせいで俺が死んじゃったとしても、俺自身はそれを嫌だとは思えない。
あのまま俺が生きていても、神様は人生が変わるみたいな事を言ってくれてたけど、そうなるとは思えないんだよなあ。
だって母さんが借金してたところ、かなりヤバいところだったんだもん。
あれ、どうやったって一生搾取され続ける奴だと思う。
借金を返せと言ってきたから母さんが消えたと話した。そしたら、息子であるお前が払えないなら俺の親しい人間に無理矢理にでも払わせると言い出した。
そうじゃなきゃ俺の内臓を売るとか言って、顔は整ってるけれど筋肉ついた体つきしてるから売りは人気出ないだろうけどそれでもいいとか、生きてても死んでても借金を払わせると言わんばかりだった。
今、思ったけどもしかして母さんの借金の全額俺聞いてなかったかもしれない。
つまり終わりを知らないのに、毎月お金を払い続けるしかなかった。
あ、そういうことは、俺の死体はあの借金取りに引き取られたんだろうか。
それはちょっと悲しいかもしれない。
「卯月君。償いはさせてもらう。これは決定だよ」
「償いって俺の希望は聞いて貰えるんでしょうか」
「希望、どんなことかな」
「あの、俺は寿命が残ってるんですよね」
「そうだよ。でも、地球にある君の体は死んでしまったから生き返らせることは出来ないよ」
そんなことは出来ると言われても望まない。
だって、生き返っても待ってるのは借金を支払う為に生きる人生だ。
「それは望みません。でも、俺に残ってた寿命他の人にあげられませんか」
「他の人?」
「俺がお世話になった、店長の奥さん。癌みたいなんです」
店の立ち退きが決まる少し前に見つかった癌の治療を奥さんは始めたばかりだった。
少しステージが進んでいるけれど、諦めず治療を受けると二人は言っていたのに店の立ち退きが決まり、それが自分の治療費を稼ぐ為だと知って奥さんはすっかり気力を無くしてしまったんだ。
辛い治療を受ける気力も食事を取る気力も失って、点滴で命を繋ぐ日々。
料理が得意だった奥さんは、俺に色んなものを食べさせてくれた。
「店長と奥さんは俺の恩人なんです」
俺、は二人に初めて会った時の話を神様に話し始めた。
初めて二人に会ったのは、俺が八歳の夏だった。
母さんが何日も帰って来なくて、買い置きされていたパンが無くなって俺は二日程水だけで生活していたんだ。
学校がある日は給食があったから、母さんが俺の食事を忘れても何とか生きてこれたけれど生憎夏休み中で給食なんて期待できなかったから、俺は本当に腹ペコで子供ながら死ぬかもしれないと考えて外に出たんだ。
「俺は唯一持ってた百円玉を握りしめてアパートを出て、ふらふらしながら歩いていて倒れたんです」
「それで?」
「偶然通りかかった店長と奥さんが、俺をかかりつけのお医者さんに診せてくれて栄養失調だと」
母さんはアパートに戻ってこず、医者への診察代は店長が払ってくれたんだと思う。
その後俺自分の家に連れ帰り、麺が柔らかくなるまで煮たうどんを奥さんが食べさせてくれたんだ。
病院で点滴を受けて、重湯みたいなのを飲ませられて、それだけしか胃に入ってないからね。
風呂にずっと入ってなかったし、同じ服を着続けていた俺は汗臭いなんてもんじゃなかった筈なのに、嫌な顔一つせずに俺を膝に抱いて奥さんはうどんを食べさせてくれたんだ。
「それから俺は二人が経営する店に通うようになったんだよ。数日二人の家にお世話になった俺がアパートに帰ろうとすると、百円しか持ってない俺に、賞味期限が迫っていて売り物に出来ないものだと言って数個のパンとお菓子を売ってくれたんだ」
ビニール袋に入れながら、店長は食べ終わった包みはお店に持ってきてと言ってきたんだ。
意味が分からなかったけれど、俺は頷いてアパートに帰ったんだ。
「それで?」
「母さんは戻っていなくて、俺は一人で数日を過ごしたんだ。そして食べ終わったパンとお菓子の包みをビニール袋に入れてお店に持っていったんだ」
奥さんがまた抱っこしてくれるんじゃないかと期待しながら、俺は店に行ったんだ。
膝に抱っこされご飯を食べさせて貰った記憶なんて、俺には無かった。
赤ん坊の頃は流石に母さんも俺に食べさせてくれていたとは思うけれど、その記憶が無かったんだ。
「二人はよく来たねと俺を歓迎してくれて、お風呂に入れ着替をしたらご飯を食べようと言ってくれたんだ」
本当は駄目だと分かってたのに、俺は二人の優しさに甘えてしまったんだ。
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