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陛下の決断2
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「陛下」
私はフィリップ殿下の笑顔を見て、思わず声に出していました。声を発してはいけないと言われていたにも関わらずそれは無意識の行動でした。
自分でも何がしたいのか分かりません、でも声に出してしまった以上無かったことには出来ないのです。
「フローリア嬢、何か」
咎められると内心恐れながら、私は考えをまとめようとしましたが、気持ちばかりが急いてしまい上手く出来ません。
「フィリップ殿下の罪は、本人の罪ではございません。子は親を選べません。それでも子に罪があるというのは、それは」
考えがまとまらぬまま、私は口を開きました。フィリップ殿下への愛情はありません、婚約者として辛い時期を過ごしたのはフィリップ殿下の行いが理由です。
そんな相手でも理不尽な刑罰を喜ぶことは出来ません。
フィリップ殿下は生まれたことが罪だと仰っていましたが、それはフィリップ殿下の罪なのでしょうか。フィリップ殿下が望んでそう生まれたわけではありません。
そんな事、出来るわけがないのです。それでも罪なのでしょうか、疑問に感じても陛下が罪と仰るならそれは罪になってしまいます。
この国はそういう国です、法があっても陛下のお心次第、それがこの国です。ですからこんな事を言う事がすでに不敬だと言われてしまう可能性があります。でも私は止まることなど出来ませんでした。
「違うというか、フィリップの愚行に苦しめられていたそなたが」
王太子殿下のお声に怒りは感じませんでした。
むしろ憐れみを持たれている様に思うのは何故でしょうか。
「私めはフィリップ殿下のお心を繋ぎとめるだけの才がありませんでした。フィリップ殿下がエミリアさんに何を感じて、何を幸せと思われたのかすら愚かな私めには理解出来ません。今私が言えることは、私にはフィリップ殿下の婚約者たる何かが足りなかった。王妃様がフィリップ殿下に精神操作の魔法を施していたとしても、フィリップ殿下はエミリアさんを愛し必要と感じました。ですが私には何かが足りなくて、フィリップ殿下が王妃様の魔法を破るまでには至らなかった。私に罪があるとするなら、その点だとそう考えております」
私の何が劣っていたのか、私はまだ理解出来てはいませんがエミリアさんにある何かが私には無く、それが現在の状況を生み出しているのだとしたらそれは私の罪なのだと思うのです。
「そう私は思わないけれど、フローリア嬢はあの愚弟であるフィリップに、それだけの情があるということなのだろうね」
王太子殿下はそう言って、私を見た後フィリップ殿下の方へ視線を動かしました。
その視線を、私はなぜか温かく感じてしまいました。
お二人の仲は決して良いものだとは言えなかった筈です。
それでも今の王太子殿下の視線は、半分だけ繋がった弟への思いやりにあふれた視線だと、そう思うのです。
「陛下。第三王子だとその地位を謀ったフィリップへの罪はいかほどか、ご決断を」
「フィリップの罪の源はなんだ」
「それは王妃様の不貞です」
「それならば、フィリップには非はない。己の生まれにフィリップは関係しない」
陛下のそのお言葉は、つまり神の裁きをフィリップ殿下が受けることはないということでしょうか。
混乱した私は王太子殿下のお顔をただ見つめるしかありません。
「成る程、ではフィリップは、陛下が決めた婚約に対し不貞を行った事、その婚約者を蔑ろにしていた。それに関しては?」
「フィリップが婚約者を蔑ろにしていたのであればそれは罪だ。フィリップの行く末を案じた故の選択を軽視した上での不貞など、許せるものではない。だが」
「それは罪ではないわ!あの娘は虐げていい存在、憎らしい王太后がフィリップを前にしてあの娘の髪を誉めたのよ、美しい金の髪だと、愛らしい青い瞳だと。そんな事が許せる筈がないわ。だから私はその娘を苦しめると決めたのよ!」
陛下の言葉を待つ私達の前に王妃様が叫び声をあげたのです。
私はフィリップ殿下の笑顔を見て、思わず声に出していました。声を発してはいけないと言われていたにも関わらずそれは無意識の行動でした。
自分でも何がしたいのか分かりません、でも声に出してしまった以上無かったことには出来ないのです。
「フローリア嬢、何か」
咎められると内心恐れながら、私は考えをまとめようとしましたが、気持ちばかりが急いてしまい上手く出来ません。
「フィリップ殿下の罪は、本人の罪ではございません。子は親を選べません。それでも子に罪があるというのは、それは」
考えがまとまらぬまま、私は口を開きました。フィリップ殿下への愛情はありません、婚約者として辛い時期を過ごしたのはフィリップ殿下の行いが理由です。
そんな相手でも理不尽な刑罰を喜ぶことは出来ません。
フィリップ殿下は生まれたことが罪だと仰っていましたが、それはフィリップ殿下の罪なのでしょうか。フィリップ殿下が望んでそう生まれたわけではありません。
そんな事、出来るわけがないのです。それでも罪なのでしょうか、疑問に感じても陛下が罪と仰るならそれは罪になってしまいます。
この国はそういう国です、法があっても陛下のお心次第、それがこの国です。ですからこんな事を言う事がすでに不敬だと言われてしまう可能性があります。でも私は止まることなど出来ませんでした。
「違うというか、フィリップの愚行に苦しめられていたそなたが」
王太子殿下のお声に怒りは感じませんでした。
むしろ憐れみを持たれている様に思うのは何故でしょうか。
「私めはフィリップ殿下のお心を繋ぎとめるだけの才がありませんでした。フィリップ殿下がエミリアさんに何を感じて、何を幸せと思われたのかすら愚かな私めには理解出来ません。今私が言えることは、私にはフィリップ殿下の婚約者たる何かが足りなかった。王妃様がフィリップ殿下に精神操作の魔法を施していたとしても、フィリップ殿下はエミリアさんを愛し必要と感じました。ですが私には何かが足りなくて、フィリップ殿下が王妃様の魔法を破るまでには至らなかった。私に罪があるとするなら、その点だとそう考えております」
私の何が劣っていたのか、私はまだ理解出来てはいませんがエミリアさんにある何かが私には無く、それが現在の状況を生み出しているのだとしたらそれは私の罪なのだと思うのです。
「そう私は思わないけれど、フローリア嬢はあの愚弟であるフィリップに、それだけの情があるということなのだろうね」
王太子殿下はそう言って、私を見た後フィリップ殿下の方へ視線を動かしました。
その視線を、私はなぜか温かく感じてしまいました。
お二人の仲は決して良いものだとは言えなかった筈です。
それでも今の王太子殿下の視線は、半分だけ繋がった弟への思いやりにあふれた視線だと、そう思うのです。
「陛下。第三王子だとその地位を謀ったフィリップへの罪はいかほどか、ご決断を」
「フィリップの罪の源はなんだ」
「それは王妃様の不貞です」
「それならば、フィリップには非はない。己の生まれにフィリップは関係しない」
陛下のそのお言葉は、つまり神の裁きをフィリップ殿下が受けることはないということでしょうか。
混乱した私は王太子殿下のお顔をただ見つめるしかありません。
「成る程、ではフィリップは、陛下が決めた婚約に対し不貞を行った事、その婚約者を蔑ろにしていた。それに関しては?」
「フィリップが婚約者を蔑ろにしていたのであればそれは罪だ。フィリップの行く末を案じた故の選択を軽視した上での不貞など、許せるものではない。だが」
「それは罪ではないわ!あの娘は虐げていい存在、憎らしい王太后がフィリップを前にしてあの娘の髪を誉めたのよ、美しい金の髪だと、愛らしい青い瞳だと。そんな事が許せる筈がないわ。だから私はその娘を苦しめると決めたのよ!」
陛下の言葉を待つ私達の前に王妃様が叫び声をあげたのです。
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