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王妃様の心の闇
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「お兄様は自分の子だとは言って下さらないの」
ここに、この部屋に王妃様とフィリエ伯爵以外誰もいないとでも言う様に、王妃様はフィリエ伯爵だけを見つめフィリエ伯爵だけに語りました。
「私はお義兄様の子を産んだのよ。大事に大事に守って、自分のお腹で育てたのよ。お義兄様の子を産む日を夢見て毎日を過ごして、お義兄様に似た子を産みたいと願っていたの。毎日毎日祈っていたの」
「知らない。私は知らない。自分の子だなんて、そんな恐ろしい事考えたくもないっ。私の子は妻が産んだ子供達だけだ。王妃様の様に美しくは無いが、私を愛し領民を愛し、子を愛する私の大切な妻の子、優しい優しい愛しい妻の子だけが私の子供だ。私は認めない。美しい顔をした恐ろしい心を持った義妹に騙されて神に背いて出来た子など、私の子ではない。そんな事望んだことも無い。義理とは言え妹との肌を合わせ子が欲しい等、そんな恐ろしくおぞましい事等望んだことなど一度もないっ!!」
それは叫びでした。
フィリエ伯爵の人となりを私は詳しく知りません。
ですが、フィリエ伯爵が自分の妻である伯爵夫人を大切に思っていることだけは理解出来ました。
王妃様は義兄であるフィリエ伯爵との間にフィリップ殿下と亡くなったと言われている紫の瞳の子供の二人を産んでいますが、それは王妃様だけが望んだ子でフィリエ伯爵には悪夢としか言いようのない話だった。
そう察せられるのです。
「お義兄様酷いわ。私達は愛し合っていたのに」
「そんなことは一度もない。私は騙されて、そして家族と領民を害すると脅されて従っていたにすぎない。父は少しでも家を繁栄させたかった。子供ながら美しい王妃様を見つけ、家の繁栄の為に養女にしたが私の妻にするつもりではなかった。私が幼い頃から妻を大切に思っていると知っていたから、彼女以外を妻に等絶対にしないと知っていたから」
王妃様は前伯爵の親戚の子だったと聞いています。
前伯爵が養女にし、陛下の婚約者選定の茶会に王妃様を出席させ見事陛下のお心を射止めたのです。
「お義兄様」
「私はずっと妻が好きだった。幼馴染の優しい女の子が好きで、父上に願って婚約者にしてもらったのだ。王妃様が陛下のお心を射止め婚約者と決まるまでは黙っていたが、ずっと子供の頃から大切に思っていた相手だったんだ」
「嘘。嘘よ。あんな平凡な女。善良である以外何の取柄も無い格下の女を好きだったなんて。そんな事信じられるわけがないわ。嘘よねお義兄様嘘だと言って」
こんな場だというのに、王妃様とフィリップ殿下の叫び方は似ていると思ってしまいました。
現実を認められず、叫び声をあげ髪振り乱す姿。
他人の意見等何も受け入れないその姿は、さすが親子と言わんばかりにそっくりでした。
「ずっとずっと好きだったのは妻だけだ。私はこれから先も何があろうと妻と妻が産んだ子だけを愛する。例えこの身が罰せられても、妻とその子だけを愛する。私が望んだ子は妻が産んだ子だけなのだから。私は望まない、王妃様の愛などたった一瞬でさえも望んだことはない。もう解放してくれ、王妃様から家族と領民を守れそして解放されるなら、私は今すぐ陛下から死を賜っても本望だ」
フィリップ殿下と双子の妹がこの世に生を受けたのは、フィリエ伯爵には不本意だったのだとこの言葉で悟りました。
王妃様の庭で、王妃様がフィリエ伯爵に言っていた言葉は確かにフィリエ伯爵を追い詰める様な言葉だったと思い出しました。
フィリエ伯爵は確かに言ってました『義妹として愛している、けれどそれ以上は無理だ』と。
そう言えば、どうしてあの時前伯爵夫人がまだ存命だと言っていたのでしょう。
アヌビートは最初に前伯爵夫人の命を奪ったと言っていたのに。
「どうして」
「フローリア嬢、どうかしたか」
「王太子殿下、質問をお許しください。アヌビートは前伯爵夫人を最初に殺めたと言っていました。でも私の記憶では先に亡くなったのは伯爵だった筈です」
それはあの庭での二人会話だけでなく、知識として貴族年間を暗記したから話せることでもありました。
フィリエ伯爵は前伯爵が無くなって爵位を継いだのです。
それは王妃様が王太子妃だった頃。第二王子懐妊の頃だった筈です。
「アヌビート。お前は嘘を言ったのか」
「い、いいえ。そうではありません。王妃様はまず前伯爵夫人を殺める様命令を出したのです。それは王太子妃になってすぐの事でした。ですが伯爵は病気療養中だとして、まだ存命だと誤魔化したのです」
あまりの事に部屋の中の人々皆言葉を失いました。
人の死を隠す。
何の理由もなく、生死を誤魔化したのです。
「なぜそんな事を」
「王太子妃となれば簡単に実家に戻るわけにはいきません。ですが当時王太子殿下だった陛下は、病の床についた義母を心配する王太子妃殿下に、見舞いの為に短時間でも家に戻る事を許されたのです。ですから王妃様は伯爵家に戻る理由として義母が重い病でも存命だとしたのです」
王妃様を溺愛する陛下は、義母を心配する王妃様の気持ちを尊重して許可を出したのでしょう。
そして王妃様は陛下の愛情を自分の欲の為に利用したのです。
「フィリエ前伯爵は王妃様が戻る為という言葉を信じ、生きている様に病気療養中だと偽装されたのです」
どこまでも王妃様の都合で、フィリエ伯爵家は振り回されていたのだと悟りました。
亡くなっているのに生きていると偽装されたという事は、神官の魂送りの言葉さえ贈られず。生きていると誤魔化され続けたのです。王妃様の為に。
ここに、この部屋に王妃様とフィリエ伯爵以外誰もいないとでも言う様に、王妃様はフィリエ伯爵だけを見つめフィリエ伯爵だけに語りました。
「私はお義兄様の子を産んだのよ。大事に大事に守って、自分のお腹で育てたのよ。お義兄様の子を産む日を夢見て毎日を過ごして、お義兄様に似た子を産みたいと願っていたの。毎日毎日祈っていたの」
「知らない。私は知らない。自分の子だなんて、そんな恐ろしい事考えたくもないっ。私の子は妻が産んだ子供達だけだ。王妃様の様に美しくは無いが、私を愛し領民を愛し、子を愛する私の大切な妻の子、優しい優しい愛しい妻の子だけが私の子供だ。私は認めない。美しい顔をした恐ろしい心を持った義妹に騙されて神に背いて出来た子など、私の子ではない。そんな事望んだことも無い。義理とは言え妹との肌を合わせ子が欲しい等、そんな恐ろしくおぞましい事等望んだことなど一度もないっ!!」
それは叫びでした。
フィリエ伯爵の人となりを私は詳しく知りません。
ですが、フィリエ伯爵が自分の妻である伯爵夫人を大切に思っていることだけは理解出来ました。
王妃様は義兄であるフィリエ伯爵との間にフィリップ殿下と亡くなったと言われている紫の瞳の子供の二人を産んでいますが、それは王妃様だけが望んだ子でフィリエ伯爵には悪夢としか言いようのない話だった。
そう察せられるのです。
「お義兄様酷いわ。私達は愛し合っていたのに」
「そんなことは一度もない。私は騙されて、そして家族と領民を害すると脅されて従っていたにすぎない。父は少しでも家を繁栄させたかった。子供ながら美しい王妃様を見つけ、家の繁栄の為に養女にしたが私の妻にするつもりではなかった。私が幼い頃から妻を大切に思っていると知っていたから、彼女以外を妻に等絶対にしないと知っていたから」
王妃様は前伯爵の親戚の子だったと聞いています。
前伯爵が養女にし、陛下の婚約者選定の茶会に王妃様を出席させ見事陛下のお心を射止めたのです。
「お義兄様」
「私はずっと妻が好きだった。幼馴染の優しい女の子が好きで、父上に願って婚約者にしてもらったのだ。王妃様が陛下のお心を射止め婚約者と決まるまでは黙っていたが、ずっと子供の頃から大切に思っていた相手だったんだ」
「嘘。嘘よ。あんな平凡な女。善良である以外何の取柄も無い格下の女を好きだったなんて。そんな事信じられるわけがないわ。嘘よねお義兄様嘘だと言って」
こんな場だというのに、王妃様とフィリップ殿下の叫び方は似ていると思ってしまいました。
現実を認められず、叫び声をあげ髪振り乱す姿。
他人の意見等何も受け入れないその姿は、さすが親子と言わんばかりにそっくりでした。
「ずっとずっと好きだったのは妻だけだ。私はこれから先も何があろうと妻と妻が産んだ子だけを愛する。例えこの身が罰せられても、妻とその子だけを愛する。私が望んだ子は妻が産んだ子だけなのだから。私は望まない、王妃様の愛などたった一瞬でさえも望んだことはない。もう解放してくれ、王妃様から家族と領民を守れそして解放されるなら、私は今すぐ陛下から死を賜っても本望だ」
フィリップ殿下と双子の妹がこの世に生を受けたのは、フィリエ伯爵には不本意だったのだとこの言葉で悟りました。
王妃様の庭で、王妃様がフィリエ伯爵に言っていた言葉は確かにフィリエ伯爵を追い詰める様な言葉だったと思い出しました。
フィリエ伯爵は確かに言ってました『義妹として愛している、けれどそれ以上は無理だ』と。
そう言えば、どうしてあの時前伯爵夫人がまだ存命だと言っていたのでしょう。
アヌビートは最初に前伯爵夫人の命を奪ったと言っていたのに。
「どうして」
「フローリア嬢、どうかしたか」
「王太子殿下、質問をお許しください。アヌビートは前伯爵夫人を最初に殺めたと言っていました。でも私の記憶では先に亡くなったのは伯爵だった筈です」
それはあの庭での二人会話だけでなく、知識として貴族年間を暗記したから話せることでもありました。
フィリエ伯爵は前伯爵が無くなって爵位を継いだのです。
それは王妃様が王太子妃だった頃。第二王子懐妊の頃だった筈です。
「アヌビート。お前は嘘を言ったのか」
「い、いいえ。そうではありません。王妃様はまず前伯爵夫人を殺める様命令を出したのです。それは王太子妃になってすぐの事でした。ですが伯爵は病気療養中だとして、まだ存命だと誤魔化したのです」
あまりの事に部屋の中の人々皆言葉を失いました。
人の死を隠す。
何の理由もなく、生死を誤魔化したのです。
「なぜそんな事を」
「王太子妃となれば簡単に実家に戻るわけにはいきません。ですが当時王太子殿下だった陛下は、病の床についた義母を心配する王太子妃殿下に、見舞いの為に短時間でも家に戻る事を許されたのです。ですから王妃様は伯爵家に戻る理由として義母が重い病でも存命だとしたのです」
王妃様を溺愛する陛下は、義母を心配する王妃様の気持ちを尊重して許可を出したのでしょう。
そして王妃様は陛下の愛情を自分の欲の為に利用したのです。
「フィリエ前伯爵は王妃様が戻る為という言葉を信じ、生きている様に病気療養中だと偽装されたのです」
どこまでも王妃様の都合で、フィリエ伯爵家は振り回されていたのだと悟りました。
亡くなっているのに生きていると偽装されたという事は、神官の魂送りの言葉さえ贈られず。生きていると誤魔化され続けたのです。王妃様の為に。
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