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計画的な行いだった
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「母上、母上」
今まで暴れていたのが嘘の様にフィリップ殿下は動くのを止めてしまいました。
ぶつぶつと呟いているのは、母上という言葉だけです。
解呪は成功したようですが、王妃様の魔法の影響はどんな風に殿下に作用していたのかわかりません。
「フィリップ、今何をしていたか分かるか」
「あに、うえ?」
うつ伏せのまま床に頬を付け、ぶつぶつと呟いていたフィリップ殿下は声を聞き、視線だけで王太子殿下を探しているようです。
「ここがどこか分かるか」
「フローリアに会いに」
「そうだ。お前はフローリア嬢を害そうとした」
「ち、違う。私はっ」
私を害そうとしたのは王妃様の命令なのでしょうか。
「違わないだろう。フローリア嬢にナイフを向けていて言い訳等見苦しい」
「違う、母上が、母上が」
先程の勢いはすでになく、フィリップ殿下は弱々しくそう繰り返すだけです。
「アヌビート、お前は母上になんと言われてここに来たのだ」
「わ、私はフィリップ殿下が侯爵令嬢の命を屠れなかった場合、診察をする振りをし毒を」
青い顔でアヌビートは王太子殿下に答えました。
王妃様は本当に私を殺めるつもりだったのだと、改めて知らされ体が震えますが、これは恐怖ではなく怒りからです。
「私を殺して、エミリアさんを放火の罪で牢へ入れ、フィリップ殿下に都合のいい相手を侯爵家の養女にしようと?」
「はい。王妃様はフィリップ殿下に相応しい相手を妻にするべきだと、王妃様の義兄であるフィリエ伯爵家の令嬢を養女になさろうとしていらっしゃるのです」
「伯爵家の令嬢? あの家にフィリップと年の合う娘はいない筈だが」
王太子殿下が疑問の声を上げます。
「それは」
「なんだ」
「申し訳ございません。フィリップ殿下には双子の妹姫がいらっしゃるのです。フィリップ殿下がお生まれになった際、妹姫は半死の状態でお生まれになり産声を上げませんでした。王妃様はその存在を隠し、王妃様の出産に立ち会っていた乳母に託すとご自分のご実家である伯爵家で秘密裏に育てられたのです」
フィリップ殿下が双子だったことは驚きですが、その妹を侯爵家の養女にしてフィリップ殿下の妻としようとしていたとは、思いもよりませんでした。
「侯爵家の親族でもない娘を養女になど出来るわけがないだろう。そもそもフローリア嬢が正当な後継ぎだというのに、母上は何を考えていらっしゃるのだ。何故一緒に育てずに存在を隠したのだ?」
王太子殿下の困惑していますが、私達も同じ思いです。
「妹姫の瞳の色でございます。紫の瞳をしていると気がついたから、存在を隠すしか無かったのです」
「紫、それは珍しいな。この国ではあまり見ない色だ。まて、珍しいが無くはない。確か前伯爵夫人の瞳は」
「はい。王妃様のご実家である伯爵家の前伯爵夫人、つまり王妃様の義母は隣国の出身で瞳の色が紫です」
「そうか母上は伯爵の遠縁だった筈。その母上から紫の瞳の子が生まれ、父上の子とするには無理があるか」
フィリップ殿下は銀髪に緑色の瞳です。
辛うじて王妃様の色を持っていたから王子として届けられたのです。
「嘘だっ! 嘘だ。私に妹などいません。私は父上の子です。父上の子ですっ!」
フィリップ殿下の悲痛な叫びは、部屋に空しく響いたのです。
今まで暴れていたのが嘘の様にフィリップ殿下は動くのを止めてしまいました。
ぶつぶつと呟いているのは、母上という言葉だけです。
解呪は成功したようですが、王妃様の魔法の影響はどんな風に殿下に作用していたのかわかりません。
「フィリップ、今何をしていたか分かるか」
「あに、うえ?」
うつ伏せのまま床に頬を付け、ぶつぶつと呟いていたフィリップ殿下は声を聞き、視線だけで王太子殿下を探しているようです。
「ここがどこか分かるか」
「フローリアに会いに」
「そうだ。お前はフローリア嬢を害そうとした」
「ち、違う。私はっ」
私を害そうとしたのは王妃様の命令なのでしょうか。
「違わないだろう。フローリア嬢にナイフを向けていて言い訳等見苦しい」
「違う、母上が、母上が」
先程の勢いはすでになく、フィリップ殿下は弱々しくそう繰り返すだけです。
「アヌビート、お前は母上になんと言われてここに来たのだ」
「わ、私はフィリップ殿下が侯爵令嬢の命を屠れなかった場合、診察をする振りをし毒を」
青い顔でアヌビートは王太子殿下に答えました。
王妃様は本当に私を殺めるつもりだったのだと、改めて知らされ体が震えますが、これは恐怖ではなく怒りからです。
「私を殺して、エミリアさんを放火の罪で牢へ入れ、フィリップ殿下に都合のいい相手を侯爵家の養女にしようと?」
「はい。王妃様はフィリップ殿下に相応しい相手を妻にするべきだと、王妃様の義兄であるフィリエ伯爵家の令嬢を養女になさろうとしていらっしゃるのです」
「伯爵家の令嬢? あの家にフィリップと年の合う娘はいない筈だが」
王太子殿下が疑問の声を上げます。
「それは」
「なんだ」
「申し訳ございません。フィリップ殿下には双子の妹姫がいらっしゃるのです。フィリップ殿下がお生まれになった際、妹姫は半死の状態でお生まれになり産声を上げませんでした。王妃様はその存在を隠し、王妃様の出産に立ち会っていた乳母に託すとご自分のご実家である伯爵家で秘密裏に育てられたのです」
フィリップ殿下が双子だったことは驚きですが、その妹を侯爵家の養女にしてフィリップ殿下の妻としようとしていたとは、思いもよりませんでした。
「侯爵家の親族でもない娘を養女になど出来るわけがないだろう。そもそもフローリア嬢が正当な後継ぎだというのに、母上は何を考えていらっしゃるのだ。何故一緒に育てずに存在を隠したのだ?」
王太子殿下の困惑していますが、私達も同じ思いです。
「妹姫の瞳の色でございます。紫の瞳をしていると気がついたから、存在を隠すしか無かったのです」
「紫、それは珍しいな。この国ではあまり見ない色だ。まて、珍しいが無くはない。確か前伯爵夫人の瞳は」
「はい。王妃様のご実家である伯爵家の前伯爵夫人、つまり王妃様の義母は隣国の出身で瞳の色が紫です」
「そうか母上は伯爵の遠縁だった筈。その母上から紫の瞳の子が生まれ、父上の子とするには無理があるか」
フィリップ殿下は銀髪に緑色の瞳です。
辛うじて王妃様の色を持っていたから王子として届けられたのです。
「嘘だっ! 嘘だ。私に妹などいません。私は父上の子です。父上の子ですっ!」
フィリップ殿下の悲痛な叫びは、部屋に空しく響いたのです。
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