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罪と偽り
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「おばあ様を手に掛けたのか、お前が」
「はい。今考えるとどうしてそんな恐ろしい事を、例え王妃様からの命令だとはいえ医師である私が人の命を奪うなど出来たのか。私はどうして、罪の意識もなく王妃様の命令に従い続けたのか。殺してください、今すぐに私を殺してください。こんなに罪を重ねた私が生きていていいわけがありませんっ!どうか、どうかっ」
涙を流しながら、自分の死を願う姿は哀れです。
この人がお兄様の命を奪ったというのに、どうしてか憎しみよりも先に哀れだと感じてしまうのです。
「お前に死を与えるのはまだ先だ、話してもらわなければならない事が沢山あるのだから」
「どんなことでもお答え致します。私の罪をすべて」
アヌビートは自分の罪だと言いますが、王妃様の魔法でどの程度自分の意思を操られていたのか、その辺りがわかりません。
ちらりとイオン様に視線を向けると、私のところに来てくれました。
「お嬢様、何か」
「解呪の魔法で彼の意識は正常になったと考えていいのでしょうか」
「はい。彼は繰り返し精神操作の魔法を掛けられていた様です」
「繰り返し。一度掛けただけでは足りないということ?」
精神操作の魔法について、私は詳しく知りません。
時間経過で自然に魔法が解けることはなく、術者は何度でも命令できるとは聞いていますが、繰り返し掛ける必要はあるのでしょうか。
「精神操作の魔法は、繰り返し掛けることで術者の命令に完全に逆らえなくなり、術が解かれない限り術者の操り人形の様に出来ると言われています。つまり、たった一度掛けられた程度であれば、小さな命令程度しか出来なくても繰り返し魔法を掛ける事でどんな命令も従う様になると考えられているのです。彼を解呪する前にお嬢様のお兄様の件を質問しましたが、その時は治療のかいなく亡くなったと話されただけでその他何も反応はありませんでした。ですが、解呪した途端自分が幼子を殺したのだと苦しみだしたのです」
王妃様が魔法によってアヌビートを操りお兄様を殺したのではないかと考えてイオン様に解呪して頂いたのですが、そんなに王妃様の魔法が凄いものだとは思っていませんでした。
魔法の効果はあるものの、王妃様の命令に逆らえなかった可能性も大きいと思っていたのです。
「ふむ。つまり本人の意思に関係なく母上の命令に従っていた可能性があるというのか」
「はい、王太子殿下その通りにございます」
イオン様の説明通り魔法で自分の意思に関係なく命令に従うしかなかったのだとしたら、アヌビートの罪をどうするか難しくなってきます。
「それでも、大罪です。私は今すぐ処刑されて当然の事をっ」
アヌビートは叫ぶように言いながら、涙を流し続けています。
この男がお兄様を殺したのです。まだ幼かったお兄様に医師の顔をして近付いて、そして。
「お前の罪はそれで全部か」
「罪、私の罪は。まだございます。私は嘘をつきました。フィリップ殿下がお生まれになった時、王妃様は侍女がぶつかった為早産になったとされていますが、あれは嘘です。王妃様は早産だと誤魔化す為、侍女に自らぶつかり転んだのです」
「なぜそれを」
「私はその場にいたのです。丁度脈を診に伺っていた時間でした。王妃様はすぐに私が対応できるよう、私がいる時間を狙ったのです。もし私が王宮の外に居て他の医師に見られたら大変ですから」
なんていうことでしょう。
王妃様はそこまで用意周到に準備をしてまで妊娠時期を偽装していたなんて、侍女にぶつかるだけではなく医師まで用意したうえで出産に望むとは。
「ではフィリップ殿下は陛下のお子ではないのですね」
王太子殿下の前で聞くには恐ろしい事を私は思い切って聞きました。
「そうです。フィリップ殿下の父親は陛下ではありません」
「そんな、どういう事だっ!」
アヌビートがはっきりとそう答えた時、扉が開きフィリップ殿下が入ってきました。
「聞いた通りだ。お前は父上の子ではない」
「そんな筈ない。私は、私はっ!」
フィリップ殿下の泣きそうな顔から、本当は彼も疑っていたのだと私は悟ったのです。
「はい。今考えるとどうしてそんな恐ろしい事を、例え王妃様からの命令だとはいえ医師である私が人の命を奪うなど出来たのか。私はどうして、罪の意識もなく王妃様の命令に従い続けたのか。殺してください、今すぐに私を殺してください。こんなに罪を重ねた私が生きていていいわけがありませんっ!どうか、どうかっ」
涙を流しながら、自分の死を願う姿は哀れです。
この人がお兄様の命を奪ったというのに、どうしてか憎しみよりも先に哀れだと感じてしまうのです。
「お前に死を与えるのはまだ先だ、話してもらわなければならない事が沢山あるのだから」
「どんなことでもお答え致します。私の罪をすべて」
アヌビートは自分の罪だと言いますが、王妃様の魔法でどの程度自分の意思を操られていたのか、その辺りがわかりません。
ちらりとイオン様に視線を向けると、私のところに来てくれました。
「お嬢様、何か」
「解呪の魔法で彼の意識は正常になったと考えていいのでしょうか」
「はい。彼は繰り返し精神操作の魔法を掛けられていた様です」
「繰り返し。一度掛けただけでは足りないということ?」
精神操作の魔法について、私は詳しく知りません。
時間経過で自然に魔法が解けることはなく、術者は何度でも命令できるとは聞いていますが、繰り返し掛ける必要はあるのでしょうか。
「精神操作の魔法は、繰り返し掛けることで術者の命令に完全に逆らえなくなり、術が解かれない限り術者の操り人形の様に出来ると言われています。つまり、たった一度掛けられた程度であれば、小さな命令程度しか出来なくても繰り返し魔法を掛ける事でどんな命令も従う様になると考えられているのです。彼を解呪する前にお嬢様のお兄様の件を質問しましたが、その時は治療のかいなく亡くなったと話されただけでその他何も反応はありませんでした。ですが、解呪した途端自分が幼子を殺したのだと苦しみだしたのです」
王妃様が魔法によってアヌビートを操りお兄様を殺したのではないかと考えてイオン様に解呪して頂いたのですが、そんなに王妃様の魔法が凄いものだとは思っていませんでした。
魔法の効果はあるものの、王妃様の命令に逆らえなかった可能性も大きいと思っていたのです。
「ふむ。つまり本人の意思に関係なく母上の命令に従っていた可能性があるというのか」
「はい、王太子殿下その通りにございます」
イオン様の説明通り魔法で自分の意思に関係なく命令に従うしかなかったのだとしたら、アヌビートの罪をどうするか難しくなってきます。
「それでも、大罪です。私は今すぐ処刑されて当然の事をっ」
アヌビートは叫ぶように言いながら、涙を流し続けています。
この男がお兄様を殺したのです。まだ幼かったお兄様に医師の顔をして近付いて、そして。
「お前の罪はそれで全部か」
「罪、私の罪は。まだございます。私は嘘をつきました。フィリップ殿下がお生まれになった時、王妃様は侍女がぶつかった為早産になったとされていますが、あれは嘘です。王妃様は早産だと誤魔化す為、侍女に自らぶつかり転んだのです」
「なぜそれを」
「私はその場にいたのです。丁度脈を診に伺っていた時間でした。王妃様はすぐに私が対応できるよう、私がいる時間を狙ったのです。もし私が王宮の外に居て他の医師に見られたら大変ですから」
なんていうことでしょう。
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「ではフィリップ殿下は陛下のお子ではないのですね」
王太子殿下の前で聞くには恐ろしい事を私は思い切って聞きました。
「そうです。フィリップ殿下の父親は陛下ではありません」
「そんな、どういう事だっ!」
アヌビートがはっきりとそう答えた時、扉が開きフィリップ殿下が入ってきました。
「聞いた通りだ。お前は父上の子ではない」
「そんな筈ない。私は、私はっ!」
フィリップ殿下の泣きそうな顔から、本当は彼も疑っていたのだと私は悟ったのです。
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