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捕らえられた罪人達は
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「離せっ!離せっ!私を誰だと思っての狼藉だっ。私は王子だぞ、伏してその罪を侘びるならその首を落とすだけで許してやる」
首を落とすのが許しなら、侘びなければ何をするとおつもりなのでしょう。
「ケネス」
「フローリアは少し離れていろ」
フィリップ殿下が逃れようとしても、ケネスの拘束は少しも緩みません。
それどころか、殿下の頬が床に擦り付けられそうな程容赦無しに体重を掛けている様に見えます。
日頃剣の稽古すら逃げ出しているという噂があるフィリップ殿下と、騎士になるため日々鍛えているケネスとでは元々の体の作りも違いますが、これでは流石に不敬が過ぎると言われないでしょうか。
「ケネス、そんなに力を込めたら骨が折れてしまうかもしれないわ」
フィリップ殿下が怪我をしても心は痛みませんが、ケネスか罪に問われたら困ります。
こんな人でも王子なのですから。
「フローリア嬢は優しいね、か弱き女性にナイフを向ける様な馬鹿は骨の二、三本折ってもいいんだよ。私が許す。おい、拘束しろ」
「はっ!」
笑いを含んだ口調で部屋の中に入ってきたのは、王太子殿下と配下の方々です。
王太子殿下の命令に従いフィリップ殿下を拘束すると、そのまま体をうつ伏せに床に転がして部屋を出ていきました。
「全く、謹慎の意味も理解できない馬鹿だとは知らなかったよ」
「あ、兄上何故こんな場所にっ。なぜ私を拘束するのですかっ!離してくださいっ。私が何をしたというのですか」
両腕を後ろ手に縛られ、足首もきつく縛られた状態でフィリップ殿下はそれでも抵抗しています。
僅かに顔を持ち上げながら叫ぶ姿は、哀れとしか言い様がありません。
「出先で侯爵と会って食事に誘われたのだが、まさかお前が騒ぎを起こしているとはね。こんなものが弟だなんて、情けない話だね。陛下も聞いたら失望しお嘆きになるだろう」
わざとらしいとしか言い様の無い、大きな大きな溜め息をついて、あろうことか王太子殿下はフィリップ殿下の腹部を蹴りました。
「なっ! 兄上、こんなこと母上が許さないっ! すべて報告しますからっ」
「報告? 出来るものならすればいい」
「ひっ!」
王太子殿下は陛下以上に温厚な方だと思っていました。
いつも穏やかに微笑んでいらっしゃる王太子殿下とは思えない行いに驚いた私は、側に来てくれたケネスの腕に思わず縋ってしまいました。
「お前と母上がしてきたことは王家の恥だ」
「私の何が恥だと。悪いのはフローリアだ」
「元婚約者の家に先触れも無く、主が留守だと言うのに執事に乱暴を働いた上、令嬢一人の部屋に押し入りナイフを振り回した。これが恥でないならなんだというのだ」
フィリップ殿下を見下ろしての王太子殿下の説明は、静かな分恐ろしさが増している様に感じます。
フィリップ殿下の行いは暴挙としか言い様がありません。
実際には私はケネスやおお父様達に守られていて、かすり傷一つ負ってはいませんが普通であれば病気で臥せっていた令嬢の私室に、許可なく男性が侵入し使用人すら近付けなかった等を周囲に知られるだけで、その令嬢の人生は終わったも同然なのです。
「恥ではありません。母上がこの女を罰せよと私に許可、いいえそうするべきだと」
「母上の指示だと」
「母上は愛する私の屈辱を我が事の様に悲しむあまり床に臥せっておられるというのに、可愛い私のために宮から出られる様に手配し、ナイフを用意して下さったのです。この女を裁くために」
堂々と言い放つフィリップ殿下は、自分の行いを恥とは露程も思わぬどころか、それが正しいと信じていたのです。
首を落とすのが許しなら、侘びなければ何をするとおつもりなのでしょう。
「ケネス」
「フローリアは少し離れていろ」
フィリップ殿下が逃れようとしても、ケネスの拘束は少しも緩みません。
それどころか、殿下の頬が床に擦り付けられそうな程容赦無しに体重を掛けている様に見えます。
日頃剣の稽古すら逃げ出しているという噂があるフィリップ殿下と、騎士になるため日々鍛えているケネスとでは元々の体の作りも違いますが、これでは流石に不敬が過ぎると言われないでしょうか。
「ケネス、そんなに力を込めたら骨が折れてしまうかもしれないわ」
フィリップ殿下が怪我をしても心は痛みませんが、ケネスか罪に問われたら困ります。
こんな人でも王子なのですから。
「フローリア嬢は優しいね、か弱き女性にナイフを向ける様な馬鹿は骨の二、三本折ってもいいんだよ。私が許す。おい、拘束しろ」
「はっ!」
笑いを含んだ口調で部屋の中に入ってきたのは、王太子殿下と配下の方々です。
王太子殿下の命令に従いフィリップ殿下を拘束すると、そのまま体をうつ伏せに床に転がして部屋を出ていきました。
「全く、謹慎の意味も理解できない馬鹿だとは知らなかったよ」
「あ、兄上何故こんな場所にっ。なぜ私を拘束するのですかっ!離してくださいっ。私が何をしたというのですか」
両腕を後ろ手に縛られ、足首もきつく縛られた状態でフィリップ殿下はそれでも抵抗しています。
僅かに顔を持ち上げながら叫ぶ姿は、哀れとしか言い様がありません。
「出先で侯爵と会って食事に誘われたのだが、まさかお前が騒ぎを起こしているとはね。こんなものが弟だなんて、情けない話だね。陛下も聞いたら失望しお嘆きになるだろう」
わざとらしいとしか言い様の無い、大きな大きな溜め息をついて、あろうことか王太子殿下はフィリップ殿下の腹部を蹴りました。
「なっ! 兄上、こんなこと母上が許さないっ! すべて報告しますからっ」
「報告? 出来るものならすればいい」
「ひっ!」
王太子殿下は陛下以上に温厚な方だと思っていました。
いつも穏やかに微笑んでいらっしゃる王太子殿下とは思えない行いに驚いた私は、側に来てくれたケネスの腕に思わず縋ってしまいました。
「お前と母上がしてきたことは王家の恥だ」
「私の何が恥だと。悪いのはフローリアだ」
「元婚約者の家に先触れも無く、主が留守だと言うのに執事に乱暴を働いた上、令嬢一人の部屋に押し入りナイフを振り回した。これが恥でないならなんだというのだ」
フィリップ殿下を見下ろしての王太子殿下の説明は、静かな分恐ろしさが増している様に感じます。
フィリップ殿下の行いは暴挙としか言い様がありません。
実際には私はケネスやおお父様達に守られていて、かすり傷一つ負ってはいませんが普通であれば病気で臥せっていた令嬢の私室に、許可なく男性が侵入し使用人すら近付けなかった等を周囲に知られるだけで、その令嬢の人生は終わったも同然なのです。
「恥ではありません。母上がこの女を罰せよと私に許可、いいえそうするべきだと」
「母上の指示だと」
「母上は愛する私の屈辱を我が事の様に悲しむあまり床に臥せっておられるというのに、可愛い私のために宮から出られる様に手配し、ナイフを用意して下さったのです。この女を裁くために」
堂々と言い放つフィリップ殿下は、自分の行いを恥とは露程も思わぬどころか、それが正しいと信じていたのです。
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