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劣等感まみれの王子は
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「体調不良? そんな理由で私を出迎えないなどありえないだろうっ!」
鏡の間に通したフィリップ殿下と王妃様の侍医の声を、部屋の調度品に隠して設置してある音を離れた場所に届ける魔道具で聞いているとフィリップ殿下の婚約者だった頃を思い出してしまいます。
あの頃は、こういうフィリップ殿下の理不尽な怒りに謝り続けるのが常でした。
フィリップ殿下はとても短期で、気に入らないことがあるとすぐに大声を出します。
通常貴族の子息子女は日常生活で大声を上げる機会もなければ、大声を聞く機会もありません。
例外を言えば騎士科の方々が剣術などの授業で大声を上げる程度でしょうか。
貴族令嬢であればほぼ日常生活で聞くことの無い、大きな声、しかも怒鳴り声を私は日常として聞いていました。
フィリップ殿下はとても短期で、劣等感の塊の様な人でした。
努力が大嫌いなくせに人よりも劣る自分も大嫌いで、人より出来ないことを認められず常に誰かが秀でている事を妬んでいました。
「私は王子だぞ。王子が訪ねてきて出迎えが使用人だけなど許せないだろう」
「大変申し訳ございません。お嬢様は体調を崩し臥せっております。旦那様達はお嬢様の体調が良くなる様神殿にお祈りに向かわれております」
可哀そうですが、執事がフィリップ殿下の応対をしています。
一応フィリップ殿下の好みの紅茶とお菓子を用意させていますが、そんなことには気が付いてもいない様です。
「フローリアが体調不良なのは、私への敬う心が足りぬせいだ。あれがもっと努力をしていれば私は他の女へ心を動かすこともなかったのだ。フローリアの怠慢だな」
何かを咀嚼する音が聞こえてきます。
フィリップ殿下の好みのお菓子は、バターを大量に使ったクッキーとカスタードクリームをたっぷり使いその上に季節の果物を乗せたパイです。咀嚼する音が聞こえてきますからクッキーを召し上がっているのかもしれません。
「侯爵がもっとまともな躾をしていたら、フローリアが婚約破棄の辱めを受けずにすんだのだ。あれがどうしようもないから私はその罰として婚約破棄を行ったのだ」
平気で事実を捻じ曲げ王妃様の侍医か応対している執事に私の事を話しています
執事は私が生まれる前から侯爵家に仕えてくれていて、幼い私を実の孫の様に大切にしてくれた人です。
フィリップ殿下が何を言っても耐える様に言ってはいますが、この暴言を執事は耐えてくれるでしょうか。
「当家のお嬢様は素晴らしい方でございます。当家の誇りそのものです。お嬢様の美しい金の髪は数代前に王家の方が婿入りされた証にございます。それも私にとっての誇りにございます」
ああ、耐えてくれませんでした。
「お嬢様は辛抱強くて勤勉で努力家で、使用人にも優しい素晴らしい方です。私は侯爵家にもお嬢様にもお仕えで出来ることを幸せだと考えています」
「……つまらない考え方だな」
フィリップ殿下が苛々としているのが、声だけでも分かります。
それに対して王妃様の侍医は一言もしゃべらずに座ったままです。
「ユウナ、フィリップ殿下が部屋を出たらイオン様を助けてあげて」
フィリップ殿下が部屋を出たらイオン様が王妃様の侍医に解呪の魔道具を付けたのち、イオン様が解呪の魔法を使うことになっています。
そうして王妃様の侍医を解呪し、罪の告白をしてもらおうという計画です。
「ですが」
「大丈夫よ。私には魔道具があるし、お父様もケネスも私を見守っていてくれるのだから」
正直なところを言えば殿下と相対するのは恐怖ですが、それでもフィリップ殿下を迎えるのは私でなければならないと、私は思っているのです。
フィリップ殿下の罪を暴くのは私です。
私が彼を裁くのです。
鏡の間に通したフィリップ殿下と王妃様の侍医の声を、部屋の調度品に隠して設置してある音を離れた場所に届ける魔道具で聞いているとフィリップ殿下の婚約者だった頃を思い出してしまいます。
あの頃は、こういうフィリップ殿下の理不尽な怒りに謝り続けるのが常でした。
フィリップ殿下はとても短期で、気に入らないことがあるとすぐに大声を出します。
通常貴族の子息子女は日常生活で大声を上げる機会もなければ、大声を聞く機会もありません。
例外を言えば騎士科の方々が剣術などの授業で大声を上げる程度でしょうか。
貴族令嬢であればほぼ日常生活で聞くことの無い、大きな声、しかも怒鳴り声を私は日常として聞いていました。
フィリップ殿下はとても短期で、劣等感の塊の様な人でした。
努力が大嫌いなくせに人よりも劣る自分も大嫌いで、人より出来ないことを認められず常に誰かが秀でている事を妬んでいました。
「私は王子だぞ。王子が訪ねてきて出迎えが使用人だけなど許せないだろう」
「大変申し訳ございません。お嬢様は体調を崩し臥せっております。旦那様達はお嬢様の体調が良くなる様神殿にお祈りに向かわれております」
可哀そうですが、執事がフィリップ殿下の応対をしています。
一応フィリップ殿下の好みの紅茶とお菓子を用意させていますが、そんなことには気が付いてもいない様です。
「フローリアが体調不良なのは、私への敬う心が足りぬせいだ。あれがもっと努力をしていれば私は他の女へ心を動かすこともなかったのだ。フローリアの怠慢だな」
何かを咀嚼する音が聞こえてきます。
フィリップ殿下の好みのお菓子は、バターを大量に使ったクッキーとカスタードクリームをたっぷり使いその上に季節の果物を乗せたパイです。咀嚼する音が聞こえてきますからクッキーを召し上がっているのかもしれません。
「侯爵がもっとまともな躾をしていたら、フローリアが婚約破棄の辱めを受けずにすんだのだ。あれがどうしようもないから私はその罰として婚約破棄を行ったのだ」
平気で事実を捻じ曲げ王妃様の侍医か応対している執事に私の事を話しています
執事は私が生まれる前から侯爵家に仕えてくれていて、幼い私を実の孫の様に大切にしてくれた人です。
フィリップ殿下が何を言っても耐える様に言ってはいますが、この暴言を執事は耐えてくれるでしょうか。
「当家のお嬢様は素晴らしい方でございます。当家の誇りそのものです。お嬢様の美しい金の髪は数代前に王家の方が婿入りされた証にございます。それも私にとっての誇りにございます」
ああ、耐えてくれませんでした。
「お嬢様は辛抱強くて勤勉で努力家で、使用人にも優しい素晴らしい方です。私は侯爵家にもお嬢様にもお仕えで出来ることを幸せだと考えています」
「……つまらない考え方だな」
フィリップ殿下が苛々としているのが、声だけでも分かります。
それに対して王妃様の侍医は一言もしゃべらずに座ったままです。
「ユウナ、フィリップ殿下が部屋を出たらイオン様を助けてあげて」
フィリップ殿下が部屋を出たらイオン様が王妃様の侍医に解呪の魔道具を付けたのち、イオン様が解呪の魔法を使うことになっています。
そうして王妃様の侍医を解呪し、罪の告白をしてもらおうという計画です。
「ですが」
「大丈夫よ。私には魔道具があるし、お父様もケネスも私を見守っていてくれるのだから」
正直なところを言えば殿下と相対するのは恐怖ですが、それでもフィリップ殿下を迎えるのは私でなければならないと、私は思っているのです。
フィリップ殿下の罪を暴くのは私です。
私が彼を裁くのです。
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