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過去への懺悔
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「侍医の嘘の証明が出来なかったのですね」
「出来ませんでした。ご存じかどうかわかりませんが、王家の皆様は朝侍医に体調を見てもらいます。王太后様の宮に滞在中の王妃様も毎朝侍医の診断を受けていました。それで懐妊されていないと診断されていたのですから、私のフィリップ殿下への鑑定が誤っているのだと、不幸にも光魔法を持たずに生まれただけとされてしまいました」
傍系でも血が近ければほぼ確実に受け継いでいる光魔法を、直系の中でも一番陛下に近い血筋にあたるというのにフィリップ殿下に光魔法が受け継がれていないなどありえないというのに、それでも侍医の診断を理由にフィリップ殿下の父親は陛下だと断定されてしまったのでしょう。
「それは侍医への信頼というよりも、陛下の王妃様への愛故にですね」
「そうだと思います。例え私の鑑定が陛下を父親だとしても、侍医の診断が同じようにしていても陛下が王妃様の不貞を疑っていてそうしたいとお考えであれば、本当に陛下が父親だったとしてもフィリップ殿下の父親は、別の誰かになっていたでしょう」
「つまり、最終的には陛下が王妃様を信じたから。そういう事でしょうか」
だとすれば、魔道具で王妃様の不貞を立証しても、侍医が当時嘘をついていたと判明しても、陛下が違うと言えばそうなってしまうでしょうか。
それでは王妃様は今と変わらず、王妃様が望む未来しかこの国には存在しないことになってしまいます。
「王妃様の侍医は当時も今も同じ人なんだろうか」
「ケネス、何が言いたいの」
「フローリアのお兄さんの件、王妃様の妊娠時期の件それは同じ侍医だったんじゃないのか」
「お嬢様のお兄様の件とは、どういうことですか」
ケネスが言いたいことは理解しました。
お兄様の命を縮めたとされる、王妃様から送られてきた医師が王妃様の侍医だったとしたら、その人は王妃様の言いなりに動く配下だということです。
「不確かな話です。私の婚約に関係する話ですから。私がそれを話してしまうとイオン様に迷惑が掛かるやもしれません」
話していいのかどうか、すぐに決断できませんでした。
王妃様がフィリップ殿下の為に、我が侯爵家の人間を手に掛けた可能性があるなど迂闊に広めていい話ではありません。
「フィリップ殿下の血統の件で、私は王家に睨まれています。直接沙汰を受けたわけではありませんが、事実上王家追放を甘んじて受けているから私の命がある。それだけです。今更何を怖がることがありましょう」
「そうですか。これは不確かな話です。事実を繋げた結果そうだと思っているだけだとそう理解した上で聞いてくださいますか」
「はい」
私はおばあ様から聞いたお兄様が亡くなった経緯を話しました。
お兄様が亡くなった経緯と、私がフィリップ殿下の顔合わせが決まった経緯。話を進めていくとイオン様は獣の様な低い唸り声を上げ頭を掻きむしったのです。
「私が、私がもう少し耐えれば、耐えさえすればっ」
「イオン様? 落ち着いてください」
「申し訳ありません。私があの時、自分の命を惜しまずにフィリップ殿下が陛下のお子でないと言い続けていれば、保身を考えずそうしていれば、フローリア様のお兄様を死なせずにすんだというのに」
イオン様は突然立ち上がると床に蹲り、額を床に付け謝罪し始めてしまいました。
「申し訳ございません。私は神に仕える身だというのに、己の命を惜しむあまりその結果罪のない幼子の命を縮めてしまったのです。私の罪です。申し訳ございません」
何度も額を床にこすりつけながら、イオン様は謝罪し続けそうして泣き始めてしまったのです。
「出来ませんでした。ご存じかどうかわかりませんが、王家の皆様は朝侍医に体調を見てもらいます。王太后様の宮に滞在中の王妃様も毎朝侍医の診断を受けていました。それで懐妊されていないと診断されていたのですから、私のフィリップ殿下への鑑定が誤っているのだと、不幸にも光魔法を持たずに生まれただけとされてしまいました」
傍系でも血が近ければほぼ確実に受け継いでいる光魔法を、直系の中でも一番陛下に近い血筋にあたるというのにフィリップ殿下に光魔法が受け継がれていないなどありえないというのに、それでも侍医の診断を理由にフィリップ殿下の父親は陛下だと断定されてしまったのでしょう。
「それは侍医への信頼というよりも、陛下の王妃様への愛故にですね」
「そうだと思います。例え私の鑑定が陛下を父親だとしても、侍医の診断が同じようにしていても陛下が王妃様の不貞を疑っていてそうしたいとお考えであれば、本当に陛下が父親だったとしてもフィリップ殿下の父親は、別の誰かになっていたでしょう」
「つまり、最終的には陛下が王妃様を信じたから。そういう事でしょうか」
だとすれば、魔道具で王妃様の不貞を立証しても、侍医が当時嘘をついていたと判明しても、陛下が違うと言えばそうなってしまうでしょうか。
それでは王妃様は今と変わらず、王妃様が望む未来しかこの国には存在しないことになってしまいます。
「王妃様の侍医は当時も今も同じ人なんだろうか」
「ケネス、何が言いたいの」
「フローリアのお兄さんの件、王妃様の妊娠時期の件それは同じ侍医だったんじゃないのか」
「お嬢様のお兄様の件とは、どういうことですか」
ケネスが言いたいことは理解しました。
お兄様の命を縮めたとされる、王妃様から送られてきた医師が王妃様の侍医だったとしたら、その人は王妃様の言いなりに動く配下だということです。
「不確かな話です。私の婚約に関係する話ですから。私がそれを話してしまうとイオン様に迷惑が掛かるやもしれません」
話していいのかどうか、すぐに決断できませんでした。
王妃様がフィリップ殿下の為に、我が侯爵家の人間を手に掛けた可能性があるなど迂闊に広めていい話ではありません。
「フィリップ殿下の血統の件で、私は王家に睨まれています。直接沙汰を受けたわけではありませんが、事実上王家追放を甘んじて受けているから私の命がある。それだけです。今更何を怖がることがありましょう」
「そうですか。これは不確かな話です。事実を繋げた結果そうだと思っているだけだとそう理解した上で聞いてくださいますか」
「はい」
私はおばあ様から聞いたお兄様が亡くなった経緯を話しました。
お兄様が亡くなった経緯と、私がフィリップ殿下の顔合わせが決まった経緯。話を進めていくとイオン様は獣の様な低い唸り声を上げ頭を掻きむしったのです。
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「申し訳ございません。私は神に仕える身だというのに、己の命を惜しむあまりその結果罪のない幼子の命を縮めてしまったのです。私の罪です。申し訳ございません」
何度も額を床にこすりつけながら、イオン様は謝罪し続けそうして泣き始めてしまったのです。
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