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都落ちした大神官
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「まあ、そんなことが出来るの?」
ユウナがおばあ様に大神官様へお会いしたい旨を伝えに行くと、おばあ様が慌てて部屋にやって来ました。
私がなぜ急に大神官様に会いたいなど言い出したのか、ユウナの説明だけでは正しく理解出来ていないおばあ様に、私の考えを話すと呆れた顔でため息をつかれてしまいましたが、私の考えは変でしょうか?
「すぐに神殿に使いを出します。王都と違ってこの地にある神殿の大神官様は気さくな方なのですぐに会って下さるでしょう」
「それは助かります」
「でも、本当に可能なのかしら。まさか王妃様を条件に他人が神聖契約を使えるか等聞くつもりではないのでしょう?」
「ええ。違います。私が婚約破棄をした話がすでにこの地の神殿に伝わっているか分りませんが、大神官様の反応を見て知らない様なら殿下の婚約者として、誰かにそういう事をされる可能性はあるのかと話しをしようと思っています」
私が神聖契約をしていることは、私の指の証を見れば大神官様ならすぐに察するでしょう。
神聖契約をして疑問に思い、不安になったのだと言えば教えてくれるかもしれません。
「そう。大神官様はあまり王家を良く思っていないのよ。だから婚約破棄を知らないのなら教えた方が親切に教えてくれるかもしれないわ」
「そうなのですか?」
神殿と王家の確執といえば、権力争いと言う意味ではあるのかもしれませんがそういう話しでしょうか。
「元は王都の神殿にいらした方なのだけれど、王妃様の不興を買ってしまってね。ここに流されてしまったの」
「王妃様にそんな権限があるのですか?」
おばあ様の説明に驚いて問うと、王妃様の不興を買った大神官様は命の危険が出て王都から自ら去ったのだそうです。
「どうしてそんなに詳しくご存知なのですか?」
「大神官様が遠縁なのもあって、身を寄せたいと相談を受けたのよ。領地にあった神殿は大神官様が元々いらっしゃらなくて、何か大きな儀式の時は王都の神殿に大神官様の派遣を依頼していたの。だから私が後見人になるのを条件に神殿に迎え入れてくれるよう頼んだのよ」
「そうでしたか」
王都にいられなくなる程の不興を買う等、大神官様は何をしたのでしょうか。
「フィリップ殿下の魔力の系統が陛下と異なると判定したのが大神官様だったの。魔力の系統は神官の鑑定で詳しく分るそうなの。生まれた殿下の血筋に疑いを持たれた王太后様が王妃様に内密に魔力系統の鑑定を神殿に依頼して、彼が鑑定したのだけれど。陛下の魔力とも王子殿下、王女殿下、王太后様の誰とも一致しなかったそうなの」
「そうですか」
それは父親が違うのですから相違していて当然です。
「ご兄弟とも異なる魔力というのは、王太子殿下や他の皆様は王妃様の魔力を受け継いでいないと言うことでしょうか?」
「そうではなくてね。魔力の系統というのは両親から受け継ぐものだから、割合は違っていても少しは入っているものらしいの。だからフィリップ殿下の両親が陛下と王妃様であるなら、ほんの少しでも陛下の魔力の系統が混じっていないのはおかしい話なのよ」
「そういうものなのですね。知りませんでした」
「私も彼に話を聞いていなければ知り得ない話よ。神官としては常識なのかもしれないけれど。普通に暮らしていて知り得る知識ではありませんからね」
「そうですか。でも困りました」
大神官様の鑑定結果を当時陛下は信じなかったと言うことでしょうか。
そうすると親子鑑定の魔道具で確認しても信じて頂けないかもしれません。
「どうしたの」
「領地の魔道具師が、親子鑑定が出来る魔道具を開発していたのを思い出してフィリップ殿下にそれを使って頂く事が出来ればと考えていたのですが。大神官様の鑑定結果を陛下は無視されたということですよね」
魔力の系統は使える魔法の系統で大雑把に確認することが出来ます。
どんな魔法を使えるかは一般的な鑑定魔法で確認出来、これは王宮に勤める医師の殆どが使える魔法で、王族は生まれた時に必ずこの鑑定を受けるのです。
フィリップ殿下は、この鑑定で魔力の系統が違うと言われているのだと思っていました。
まさか、大神官様に魔力系統の鑑定を受けていたとは思わなかったのです。
「侍医の鑑定魔法での判断だと考えていたので、きちんと判定されれば陛下も信じて下さるかと考えていたのですが」
水の魔法だけを使う両親からは、基本的には水の魔法を使える子供が生まれると言われています。
侍医が使う鑑定魔法は本人が持っている基礎能力を確認できますが、それの元がこの考え方で鑑定で使える魔法をを確認し魔力系統が何になるかを判断するのです。
王家の場合は光魔法が使え、これが神の血を引いていると言われる理由でもあるのですが、王族の血を受け継いでいれば得意不得意はあれど光魔法は使える筈なのです。
だいぶ王家の血が薄まっている私ですら、不得意ではあるものの光魔法を使う事が出来ます。
ですが、フィリップ殿下はこれが使えないのです。
「親子鑑定の魔道具は魔力と血液の型で判断する様なのですが。例え結果が陛下のお子ではないと出ても信じて下さらない可能性が強いですね」
どうしたらいいのだろうと、始める前からため息が出てしまいました。
ユウナがおばあ様に大神官様へお会いしたい旨を伝えに行くと、おばあ様が慌てて部屋にやって来ました。
私がなぜ急に大神官様に会いたいなど言い出したのか、ユウナの説明だけでは正しく理解出来ていないおばあ様に、私の考えを話すと呆れた顔でため息をつかれてしまいましたが、私の考えは変でしょうか?
「すぐに神殿に使いを出します。王都と違ってこの地にある神殿の大神官様は気さくな方なのですぐに会って下さるでしょう」
「それは助かります」
「でも、本当に可能なのかしら。まさか王妃様を条件に他人が神聖契約を使えるか等聞くつもりではないのでしょう?」
「ええ。違います。私が婚約破棄をした話がすでにこの地の神殿に伝わっているか分りませんが、大神官様の反応を見て知らない様なら殿下の婚約者として、誰かにそういう事をされる可能性はあるのかと話しをしようと思っています」
私が神聖契約をしていることは、私の指の証を見れば大神官様ならすぐに察するでしょう。
神聖契約をして疑問に思い、不安になったのだと言えば教えてくれるかもしれません。
「そう。大神官様はあまり王家を良く思っていないのよ。だから婚約破棄を知らないのなら教えた方が親切に教えてくれるかもしれないわ」
「そうなのですか?」
神殿と王家の確執といえば、権力争いと言う意味ではあるのかもしれませんがそういう話しでしょうか。
「元は王都の神殿にいらした方なのだけれど、王妃様の不興を買ってしまってね。ここに流されてしまったの」
「王妃様にそんな権限があるのですか?」
おばあ様の説明に驚いて問うと、王妃様の不興を買った大神官様は命の危険が出て王都から自ら去ったのだそうです。
「どうしてそんなに詳しくご存知なのですか?」
「大神官様が遠縁なのもあって、身を寄せたいと相談を受けたのよ。領地にあった神殿は大神官様が元々いらっしゃらなくて、何か大きな儀式の時は王都の神殿に大神官様の派遣を依頼していたの。だから私が後見人になるのを条件に神殿に迎え入れてくれるよう頼んだのよ」
「そうでしたか」
王都にいられなくなる程の不興を買う等、大神官様は何をしたのでしょうか。
「フィリップ殿下の魔力の系統が陛下と異なると判定したのが大神官様だったの。魔力の系統は神官の鑑定で詳しく分るそうなの。生まれた殿下の血筋に疑いを持たれた王太后様が王妃様に内密に魔力系統の鑑定を神殿に依頼して、彼が鑑定したのだけれど。陛下の魔力とも王子殿下、王女殿下、王太后様の誰とも一致しなかったそうなの」
「そうですか」
それは父親が違うのですから相違していて当然です。
「ご兄弟とも異なる魔力というのは、王太子殿下や他の皆様は王妃様の魔力を受け継いでいないと言うことでしょうか?」
「そうではなくてね。魔力の系統というのは両親から受け継ぐものだから、割合は違っていても少しは入っているものらしいの。だからフィリップ殿下の両親が陛下と王妃様であるなら、ほんの少しでも陛下の魔力の系統が混じっていないのはおかしい話なのよ」
「そういうものなのですね。知りませんでした」
「私も彼に話を聞いていなければ知り得ない話よ。神官としては常識なのかもしれないけれど。普通に暮らしていて知り得る知識ではありませんからね」
「そうですか。でも困りました」
大神官様の鑑定結果を当時陛下は信じなかったと言うことでしょうか。
そうすると親子鑑定の魔道具で確認しても信じて頂けないかもしれません。
「どうしたの」
「領地の魔道具師が、親子鑑定が出来る魔道具を開発していたのを思い出してフィリップ殿下にそれを使って頂く事が出来ればと考えていたのですが。大神官様の鑑定結果を陛下は無視されたということですよね」
魔力の系統は使える魔法の系統で大雑把に確認することが出来ます。
どんな魔法を使えるかは一般的な鑑定魔法で確認出来、これは王宮に勤める医師の殆どが使える魔法で、王族は生まれた時に必ずこの鑑定を受けるのです。
フィリップ殿下は、この鑑定で魔力の系統が違うと言われているのだと思っていました。
まさか、大神官様に魔力系統の鑑定を受けていたとは思わなかったのです。
「侍医の鑑定魔法での判断だと考えていたので、きちんと判定されれば陛下も信じて下さるかと考えていたのですが」
水の魔法だけを使う両親からは、基本的には水の魔法を使える子供が生まれると言われています。
侍医が使う鑑定魔法は本人が持っている基礎能力を確認できますが、それの元がこの考え方で鑑定で使える魔法をを確認し魔力系統が何になるかを判断するのです。
王家の場合は光魔法が使え、これが神の血を引いていると言われる理由でもあるのですが、王族の血を受け継いでいれば得意不得意はあれど光魔法は使える筈なのです。
だいぶ王家の血が薄まっている私ですら、不得意ではあるものの光魔法を使う事が出来ます。
ですが、フィリップ殿下はこれが使えないのです。
「親子鑑定の魔道具は魔力と血液の型で判断する様なのですが。例え結果が陛下のお子ではないと出ても信じて下さらない可能性が強いですね」
どうしたらいいのだろうと、始める前からため息が出てしまいました。
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