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窮鼠猫を噛む
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「私が出来る事ってなにかしら」
「そうだな。さっきの話以外で王妃様が何か周囲に隠している事を知らないか」
ケネスに言われて考えます。
王妃様と王妃様の義兄様の事以外に私が知っていること。
「お父様には昔お話したことがあるのだけれど」
「なんだ」
「王妃様は心を操作する魔法が使えるのではないかと、そう感じた時があるの」
「心を操作する? 従魔法の契約とか指令みたいなものか」
「あれは人が魔物に行なうものでしょう? そういうものとは違うのよ。どちらかといえば、好意を持たせるとかそういうなんと言えばいいのかしら」
お父様にお話したのは随分前だから覚えていらっしゃるかどうかも分らないけれど、何度か感じた事がある。
「私がお父様から魔道具を頂いたのは婚約してから二年くらい経ってからだったと思うの」
「いつも装備している魔道具か。解毒、解呪、物理攻撃防御だったな」
「そうよ。自分の魔力を利用してこの魔道具に付けられた魔石に魔力を溜めておくの。そうすることで魔道具をいつでも発動できるのよ」
領地では魔道具の研究が盛んですが、その中でも護衛の為の魔道具の研究は私が婚約した頃から特に力を入れ始め、婚約して二年が過ぎた頃には腕輪型の魔道具が完成したそうです。
元々解毒、解呪、物理攻撃防御は別々の魔道具がありましたが、優秀な魔道具師と魔法を付与する付与師が領地に住み始めた事もあり、三つの効果をまとめて一つの魔道具として完成させる事が出来たそうです。
「この魔道具には解呪、呪いや精神的魔法を防御する働きもあるの、それで気がついたのよ」
この魔道具は、魔石に付与された魔法が発動すると装着している本人にだけそれを感じる仕掛けが付けられています。
解毒出来ても本人が無自覚では、延々毒を受け続ける可能性もありますし、そうなると魔法発動の為の魔力の元は本人なのですから最終的には魔力枯渇により毒を受ける場合も出てきてしまいます。
それでは魔道具の意味がありません。
魔道具の魔法が発動したら、本人がいち早くそれに気がつき対処する。
そうすることで身を守れるのです。
「王宮で度々魔道具が発動したの。それが王妃様が私に触れた時なの」
「毒ではない?」
「分らないわ。でも王妃様は同じ様にフィリップ殿下にも触れていたから、王妃様の手に毒がついていたということは無いと思うの」
王妃様の話し方は、子供相手だったからなのか独特で手を握り眼を見つめて話すのです。
『あなたはフィリップを常に敬わなければいけないわ』
『フィリップは特別な子なの、あなたにも分るでしょう』
『フローリアはフィリップの為に存在しているのよ』
『フローリア、あなたは美しくも可愛くもないけれど、フィリップの引き立て役として目立たず存在するには十分ね』
『フィリップの言う事は絶対よ。絶対に従うのよ』
王妃様がそう言う度に、私の魔道具が発動するので私は動揺を王妃様に気付かれない様に必死に頷き「はい、王妃さま」と言葉を繰り返すしか出来ませんでした。
お父様から魔道具が発動したら、そうする様に言われていたからです。
「お父様から、魔道具が発動したら誰と何をしていた時に発動して、どう感じたかを覚えておくように言われていたの。それを相手に気がつかれてはいけないとも言われていたわ」
同じ様にフィリップ殿下にも王妃様は似たような事を言い含めていました。
『あなたは特別なの、私の特別、唯一大切な子供なのよ』
『あなたの望みは何でも許されるのよ』
『お母様の言う事を聞いていればいいのよ。そうすればあなたは幸せになれるの』
『可愛いフィリップ。この世で一番可愛い子。あなたは何も判断しなくていいのよ。すべてお母様が考えるから』
目の前で行なわれる何かの儀式の様な王妃様の一方的な語り、その度に何故か私の魔道具が反応するのが恐ろしくて私は二人の側から自分の気配を消すことだけを考えていたのです。
「お父様やお母様がいる時には、同じ様に王妃様がしていても魔道具は発動しないの。私と王妃様だけ、もしくはフィリップ殿下を含めた三人だけ。王妃様付きの侍女やメイドは居ても居なくても同じだったのよ」
それを初めてお父様にお話為たとき、これは誰にも話してはいけないと約束させられたのです。
そして、王妃様とお会いする時は絶対に魔道具を離してはいけないとも、約束したのです。
「毒ではないんだな」
「違うと思うわ」
「洗脳? そんな魔法があるのか?」
「分らないけれど、でも何かを魔道具が防いでいたのは確かよ」
「おじさんはそれが何だか分かっていたんだな」
「ええ、多分。でもだいぶ昔の話しだから」
念の為、もう一度お父様にこの件を手紙でお知らせしよう。
そう考えたのです。
「そうだな。さっきの話以外で王妃様が何か周囲に隠している事を知らないか」
ケネスに言われて考えます。
王妃様と王妃様の義兄様の事以外に私が知っていること。
「お父様には昔お話したことがあるのだけれど」
「なんだ」
「王妃様は心を操作する魔法が使えるのではないかと、そう感じた時があるの」
「心を操作する? 従魔法の契約とか指令みたいなものか」
「あれは人が魔物に行なうものでしょう? そういうものとは違うのよ。どちらかといえば、好意を持たせるとかそういうなんと言えばいいのかしら」
お父様にお話したのは随分前だから覚えていらっしゃるかどうかも分らないけれど、何度か感じた事がある。
「私がお父様から魔道具を頂いたのは婚約してから二年くらい経ってからだったと思うの」
「いつも装備している魔道具か。解毒、解呪、物理攻撃防御だったな」
「そうよ。自分の魔力を利用してこの魔道具に付けられた魔石に魔力を溜めておくの。そうすることで魔道具をいつでも発動できるのよ」
領地では魔道具の研究が盛んですが、その中でも護衛の為の魔道具の研究は私が婚約した頃から特に力を入れ始め、婚約して二年が過ぎた頃には腕輪型の魔道具が完成したそうです。
元々解毒、解呪、物理攻撃防御は別々の魔道具がありましたが、優秀な魔道具師と魔法を付与する付与師が領地に住み始めた事もあり、三つの効果をまとめて一つの魔道具として完成させる事が出来たそうです。
「この魔道具には解呪、呪いや精神的魔法を防御する働きもあるの、それで気がついたのよ」
この魔道具は、魔石に付与された魔法が発動すると装着している本人にだけそれを感じる仕掛けが付けられています。
解毒出来ても本人が無自覚では、延々毒を受け続ける可能性もありますし、そうなると魔法発動の為の魔力の元は本人なのですから最終的には魔力枯渇により毒を受ける場合も出てきてしまいます。
それでは魔道具の意味がありません。
魔道具の魔法が発動したら、本人がいち早くそれに気がつき対処する。
そうすることで身を守れるのです。
「王宮で度々魔道具が発動したの。それが王妃様が私に触れた時なの」
「毒ではない?」
「分らないわ。でも王妃様は同じ様にフィリップ殿下にも触れていたから、王妃様の手に毒がついていたということは無いと思うの」
王妃様の話し方は、子供相手だったからなのか独特で手を握り眼を見つめて話すのです。
『あなたはフィリップを常に敬わなければいけないわ』
『フィリップは特別な子なの、あなたにも分るでしょう』
『フローリアはフィリップの為に存在しているのよ』
『フローリア、あなたは美しくも可愛くもないけれど、フィリップの引き立て役として目立たず存在するには十分ね』
『フィリップの言う事は絶対よ。絶対に従うのよ』
王妃様がそう言う度に、私の魔道具が発動するので私は動揺を王妃様に気付かれない様に必死に頷き「はい、王妃さま」と言葉を繰り返すしか出来ませんでした。
お父様から魔道具が発動したら、そうする様に言われていたからです。
「お父様から、魔道具が発動したら誰と何をしていた時に発動して、どう感じたかを覚えておくように言われていたの。それを相手に気がつかれてはいけないとも言われていたわ」
同じ様にフィリップ殿下にも王妃様は似たような事を言い含めていました。
『あなたは特別なの、私の特別、唯一大切な子供なのよ』
『あなたの望みは何でも許されるのよ』
『お母様の言う事を聞いていればいいのよ。そうすればあなたは幸せになれるの』
『可愛いフィリップ。この世で一番可愛い子。あなたは何も判断しなくていいのよ。すべてお母様が考えるから』
目の前で行なわれる何かの儀式の様な王妃様の一方的な語り、その度に何故か私の魔道具が反応するのが恐ろしくて私は二人の側から自分の気配を消すことだけを考えていたのです。
「お父様やお母様がいる時には、同じ様に王妃様がしていても魔道具は発動しないの。私と王妃様だけ、もしくはフィリップ殿下を含めた三人だけ。王妃様付きの侍女やメイドは居ても居なくても同じだったのよ」
それを初めてお父様にお話為たとき、これは誰にも話してはいけないと約束させられたのです。
そして、王妃様とお会いする時は絶対に魔道具を離してはいけないとも、約束したのです。
「毒ではないんだな」
「違うと思うわ」
「洗脳? そんな魔法があるのか?」
「分らないけれど、でも何かを魔道具が防いでいたのは確かよ」
「おじさんはそれが何だか分かっていたんだな」
「ええ、多分。でもだいぶ昔の話しだから」
念の為、もう一度お父様にこの件を手紙でお知らせしよう。
そう考えたのです。
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