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誰を贄にすればいい?5(王妃視点)
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「戻ります。アダムほんの少しでも母に情があるのなら、フィリップを救って」
悲しみ嘆くか弱い女を意識して言いながらアダムの様子を窺うけれど、冷ややかな眼は変化がありません。
どこまでも陛下に似ています。私が大嫌いな夫にそっくりです。
夫は、陛下は私を愛しているといい大切にすると言いながら、私の本当の望みも寂しさも理解してはくれませんでした。
あの眼が大嫌いでした。
初めてお茶会で会った時から絶対に好きはなれないと思っていたのに、私は婚約者に選ばれてしまったのです。
あの時の絶望を今でも鮮明に思い出させるこの眼を、もう見ていたくありません。
「……母上は私達にはくれなかった愛情を、望むのはズルイですね」
足早に立ち去る私の背をアダムの声が追いかけてきますが、何を言っているのか聞き取れませんでした。
「フィリップを惑わした女を呼び出しなさい。実家の侍女だと言ってつれてくるのよ。誰にも気がつかれない様に」
「畏まりました」
影の様に私の後ろを歩く侍女の一人に命令すると、すぐに動きました。
「陛下に謁見の許可をお願いしておいで、私がアダムに酷い言葉を言われて傷付いているとね」
「畏まりました」
もう一人の侍女に指示を出し、護衛と共に歩き外へと出ました。
「こんな場所に閉じ込められるなんて」
寂れた牢獄の様な離宮は、外観も庭もほぼ手入れがされていないのでしょう。
ひび割れた外壁に薄汚れた窓、こんな酷い場所に閉じ込められている可愛い息子が不憫でなりません。
「理不尽だわ。こんなの間違っているわ」
陛下はなぜ私に相談も無くフィリップの謹慎を決めたのでしょう。
今まで自分で服を脱ぎ着したことすらないあの子が、メイドの一人すらいない場所にいるなど許せません。
「陛下のところへ行きます」
待っていた馬車に乗り込み王宮へと戻りながら、一人策を練ります。
フィリップに下級貴族の娘など似合う筈がありません。
男爵家の娘等、フィリップの愛人にも出来ないというのに何故あの子はそんな娘に惑わされたのでしょう。
「フローリアが悪いのね。あの気が利かない、フィリップの婚約者になれた幸運を理解していない愚鈍な娘が悪いのよ」
泣いて地面に両手をついて詫びるなら、フィリップの婚約者に戻してあげてもいいけれど。
その為には侯爵から誠意を見せて貰わないといけないでしょうね。
いつもの様に陛下に内密に侯爵の俸禄を譲渡させるだけでは足りないわね、そうね鉱山の権利を私のものにしましょうか。
フィリップへの慰謝料として、陛下にそう命令させましょう。
侯爵領にある鉱山は、金だけでなく宝石も採掘出来るまさに宝の山ですもの。
愚鈍な娘の躾が出来ない侯爵に持たせておくよりも、私の様な高貴なものにするべきでしょう。
「ふふふ。陛下はきっといい考えだと言って下さるわ」
フィリップを誑かせた娘は、侯爵家を脅す道具にしましょう。
放火が良いかしら。
男を誑かすことしか出来ない娘に私の命令を完遂出来るとは思えないけれど、目的は侯爵家への脅しと娘の排除ですから問題はありません。
放火の罪人は処刑と決まっています。
捕まれば私の名前を出すかもしれませんが、誰がそれを信じるでしょう。
侯爵家の屋敷ですぐに捕まり、処刑になるまでいかなくても罪人を王家の人間の妻になど出来ないのですから問題の排除としては十分です。
「フィリップは私が守るわ」
大切な大切なたった一人の息子を、私は絶対に守ると誓ったのです。
悲しみ嘆くか弱い女を意識して言いながらアダムの様子を窺うけれど、冷ややかな眼は変化がありません。
どこまでも陛下に似ています。私が大嫌いな夫にそっくりです。
夫は、陛下は私を愛しているといい大切にすると言いながら、私の本当の望みも寂しさも理解してはくれませんでした。
あの眼が大嫌いでした。
初めてお茶会で会った時から絶対に好きはなれないと思っていたのに、私は婚約者に選ばれてしまったのです。
あの時の絶望を今でも鮮明に思い出させるこの眼を、もう見ていたくありません。
「……母上は私達にはくれなかった愛情を、望むのはズルイですね」
足早に立ち去る私の背をアダムの声が追いかけてきますが、何を言っているのか聞き取れませんでした。
「フィリップを惑わした女を呼び出しなさい。実家の侍女だと言ってつれてくるのよ。誰にも気がつかれない様に」
「畏まりました」
影の様に私の後ろを歩く侍女の一人に命令すると、すぐに動きました。
「陛下に謁見の許可をお願いしておいで、私がアダムに酷い言葉を言われて傷付いているとね」
「畏まりました」
もう一人の侍女に指示を出し、護衛と共に歩き外へと出ました。
「こんな場所に閉じ込められるなんて」
寂れた牢獄の様な離宮は、外観も庭もほぼ手入れがされていないのでしょう。
ひび割れた外壁に薄汚れた窓、こんな酷い場所に閉じ込められている可愛い息子が不憫でなりません。
「理不尽だわ。こんなの間違っているわ」
陛下はなぜ私に相談も無くフィリップの謹慎を決めたのでしょう。
今まで自分で服を脱ぎ着したことすらないあの子が、メイドの一人すらいない場所にいるなど許せません。
「陛下のところへ行きます」
待っていた馬車に乗り込み王宮へと戻りながら、一人策を練ります。
フィリップに下級貴族の娘など似合う筈がありません。
男爵家の娘等、フィリップの愛人にも出来ないというのに何故あの子はそんな娘に惑わされたのでしょう。
「フローリアが悪いのね。あの気が利かない、フィリップの婚約者になれた幸運を理解していない愚鈍な娘が悪いのよ」
泣いて地面に両手をついて詫びるなら、フィリップの婚約者に戻してあげてもいいけれど。
その為には侯爵から誠意を見せて貰わないといけないでしょうね。
いつもの様に陛下に内密に侯爵の俸禄を譲渡させるだけでは足りないわね、そうね鉱山の権利を私のものにしましょうか。
フィリップへの慰謝料として、陛下にそう命令させましょう。
侯爵領にある鉱山は、金だけでなく宝石も採掘出来るまさに宝の山ですもの。
愚鈍な娘の躾が出来ない侯爵に持たせておくよりも、私の様な高貴なものにするべきでしょう。
「ふふふ。陛下はきっといい考えだと言って下さるわ」
フィリップを誑かせた娘は、侯爵家を脅す道具にしましょう。
放火が良いかしら。
男を誑かすことしか出来ない娘に私の命令を完遂出来るとは思えないけれど、目的は侯爵家への脅しと娘の排除ですから問題はありません。
放火の罪人は処刑と決まっています。
捕まれば私の名前を出すかもしれませんが、誰がそれを信じるでしょう。
侯爵家の屋敷ですぐに捕まり、処刑になるまでいかなくても罪人を王家の人間の妻になど出来ないのですから問題の排除としては十分です。
「フィリップは私が守るわ」
大切な大切なたった一人の息子を、私は絶対に守ると誓ったのです。
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