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まさかの護衛に驚きました
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「その顔が見たかったからだよ」
くくっと笑いながらお店までエスコートしてくれる彼に戸惑いながら振り返りユウナを見ても、同じように笑っているので、知らなかったのは私だけだと悟りました。
「腕には自信があるから、安心して旅を楽しんで」
「確かに剣術は得意だと知っていますが学校はどうしたのですか?」
お父様の弟であるブライス伯爵家の三男であるケネスは、私のひとつ上で王都の騎士学校に通っています。
あの学校は出席率が厳しいと聞いていますが、何故護衛の姿でここにいるのでしょう。
「おじさんから頼まれたし、俺も心配だったから」
「お父様から」
お父様がケネスを気に入っているのは知っていますが、だからと言って護衛を頼む理由にはならない気がします。
私を領地まで送り届け、すぐに戻ったとしても半月以上学校を休むことになってしまうのです。
「でも、学校が」
「フローリアが気にすることじゃない。それより大変だったな」
「さっぱりしました」
「本当か?」
私の返事を信用していないのか、ケネスは立ち止まり私の顔を覗き込みました。
「無理は、してないみたいだな」
「無理をする理由がありませんから」
「ならいい」
「良くありません。ケネスが一緒に来てくれたのは嬉しいですが、ここまでにして戻ってください」
学校を休んでまで私に付き合う必要など、ケネスにはないはずです。
年が近いせいもあり子供の頃はよく一緒にあそんでいましたが、学校に通う様になってからはなるべく外では親しくしないようにしていたというのに、どうしてお父様はケネスに話をしてしまったのでしょう。
「おじさんから話を聞いて、俺が着いていくって言い出したんだ。それでおじさんからも頼まれた。これは決定事項だからフローリアの気持ちは関係ないよ」
「でも、私について領地まで行ったら、学校の単位に響きますよ」
「え? あぁ、いいんだそれは問題ないから」
「問題ないって、単位はどうするのですか?卒業できなければ騎士団の試験も」
「そんなのよりフローリアの方が大事だから。それにお前の婚約破棄の理由を聞いて、騎士団に入りたい気持ちもちょっと薄れてるんだ。騎士団は王家を守る為の組織だろ、その中にあいつも含まれてると思うとなぁ」
「そ、そんな不敬な発言、こんな場所で言わないで下さい」
私は慌ててケネスの言葉を遮りました。
周囲にいるのは侯爵家の人間だけですが、少し離れた場所には休憩所を利用している人達がいるのですから、聞かれたら大変です。
「大丈夫、ちゃんと声が周囲に漏れない魔道具持ってるから」
にっこり笑いながら、魔石が付いた腕輪を見せるケネスに呆れながら、彼らしいとつられて笑ってしまいました。
「婚約破棄の理由も知ってるのですね」
「馬鹿な奴だよな。折角フローリアと婚約出来て好意も持たれてたのに、全部自分から手放すなんてさ」
「気軽に手放せる価値しか私には無かったということなのでしょう」
実際には婚約者としての価値も無かったのでしょうけれど、さすがに情けなすぎて言えません。
「そう自分を卑下するな。悪い癖だぞ」
「そうですね。気を付けます」
「そうそう。フローリアは色々頑張りすぎなんだから、たまには休めばいいんだよ。それに言葉も俺には気楽にすればいい。昔みたいにさ」
優しいケネスの言葉に、頑張りすぎなんかじゃないと否定したくなりましたが、それでも、その言葉に甘えてみようかと思い直しました。
フィリップ殿下には「愛想がない」「俺に対する気遣いがない」「気が利かない」と常に否定され続けていました。
婚約していた間、幼い頃は領地にいる時間は自由がありましたが、学校に通い初めてからは気の抜ける時がありませんでした。
会う度に不機嫌な顔で私を否定する殿下に、何をどうしたらいいのか悩み続ける、それが普通だったのです。
「もう子供じゃありませんが、それでもですか?」
「気を抜ける相手にはいいんだよ。俺にとってフローリアはそういう相手だ。堅苦しい話し方ばかりしてたらフローリアだって疲れるだろ。貴族令嬢の見本と言われる程フローリアの立ち居振舞いが立派なのは分かってるから、俺といる時位は手を抜いておけよ」
「……あなたの側にいるのは楽ね」
そういえば、ケネスはこういう優しい人だったと思い出しました。
幼い頃、王都に行く度に殿下に意地の悪い事を言われて落ち込んで領地に帰ってくる私を慰めるのはケネスの役割だったのです。
「……だろ」
「領地に行くまでの間、本当に護衛をお願いしていいの?」
「ああ、ずっと頑張っていたご褒美に、俺が守ってやるよ」
「ありがとう。ね、領地に着いたら一緒に丘に行ってくれる?」
「丘に?」
「ええ、久し振りにあの景色を一緒に見たくなったの。もう私には婚約者がいないのですもの。その位自由にしてもいい筈よね」
落ち込んで領地に戻って来ると、ケネスが丘に連れていってくれました。
丘に登り、眼下に広がる領地を二人で眺めていると王都で辛かった記憶が薄れて元気になれたのです。
「……そうだな、フローリアはもう自由だよ。なんだって出来るんだ」
笑うケネスの顔を見ていたら、領地に戻るのが楽しみになってきました。
くくっと笑いながらお店までエスコートしてくれる彼に戸惑いながら振り返りユウナを見ても、同じように笑っているので、知らなかったのは私だけだと悟りました。
「腕には自信があるから、安心して旅を楽しんで」
「確かに剣術は得意だと知っていますが学校はどうしたのですか?」
お父様の弟であるブライス伯爵家の三男であるケネスは、私のひとつ上で王都の騎士学校に通っています。
あの学校は出席率が厳しいと聞いていますが、何故護衛の姿でここにいるのでしょう。
「おじさんから頼まれたし、俺も心配だったから」
「お父様から」
お父様がケネスを気に入っているのは知っていますが、だからと言って護衛を頼む理由にはならない気がします。
私を領地まで送り届け、すぐに戻ったとしても半月以上学校を休むことになってしまうのです。
「でも、学校が」
「フローリアが気にすることじゃない。それより大変だったな」
「さっぱりしました」
「本当か?」
私の返事を信用していないのか、ケネスは立ち止まり私の顔を覗き込みました。
「無理は、してないみたいだな」
「無理をする理由がありませんから」
「ならいい」
「良くありません。ケネスが一緒に来てくれたのは嬉しいですが、ここまでにして戻ってください」
学校を休んでまで私に付き合う必要など、ケネスにはないはずです。
年が近いせいもあり子供の頃はよく一緒にあそんでいましたが、学校に通う様になってからはなるべく外では親しくしないようにしていたというのに、どうしてお父様はケネスに話をしてしまったのでしょう。
「おじさんから話を聞いて、俺が着いていくって言い出したんだ。それでおじさんからも頼まれた。これは決定事項だからフローリアの気持ちは関係ないよ」
「でも、私について領地まで行ったら、学校の単位に響きますよ」
「え? あぁ、いいんだそれは問題ないから」
「問題ないって、単位はどうするのですか?卒業できなければ騎士団の試験も」
「そんなのよりフローリアの方が大事だから。それにお前の婚約破棄の理由を聞いて、騎士団に入りたい気持ちもちょっと薄れてるんだ。騎士団は王家を守る為の組織だろ、その中にあいつも含まれてると思うとなぁ」
「そ、そんな不敬な発言、こんな場所で言わないで下さい」
私は慌ててケネスの言葉を遮りました。
周囲にいるのは侯爵家の人間だけですが、少し離れた場所には休憩所を利用している人達がいるのですから、聞かれたら大変です。
「大丈夫、ちゃんと声が周囲に漏れない魔道具持ってるから」
にっこり笑いながら、魔石が付いた腕輪を見せるケネスに呆れながら、彼らしいとつられて笑ってしまいました。
「婚約破棄の理由も知ってるのですね」
「馬鹿な奴だよな。折角フローリアと婚約出来て好意も持たれてたのに、全部自分から手放すなんてさ」
「気軽に手放せる価値しか私には無かったということなのでしょう」
実際には婚約者としての価値も無かったのでしょうけれど、さすがに情けなすぎて言えません。
「そう自分を卑下するな。悪い癖だぞ」
「そうですね。気を付けます」
「そうそう。フローリアは色々頑張りすぎなんだから、たまには休めばいいんだよ。それに言葉も俺には気楽にすればいい。昔みたいにさ」
優しいケネスの言葉に、頑張りすぎなんかじゃないと否定したくなりましたが、それでも、その言葉に甘えてみようかと思い直しました。
フィリップ殿下には「愛想がない」「俺に対する気遣いがない」「気が利かない」と常に否定され続けていました。
婚約していた間、幼い頃は領地にいる時間は自由がありましたが、学校に通い初めてからは気の抜ける時がありませんでした。
会う度に不機嫌な顔で私を否定する殿下に、何をどうしたらいいのか悩み続ける、それが普通だったのです。
「もう子供じゃありませんが、それでもですか?」
「気を抜ける相手にはいいんだよ。俺にとってフローリアはそういう相手だ。堅苦しい話し方ばかりしてたらフローリアだって疲れるだろ。貴族令嬢の見本と言われる程フローリアの立ち居振舞いが立派なのは分かってるから、俺といる時位は手を抜いておけよ」
「……あなたの側にいるのは楽ね」
そういえば、ケネスはこういう優しい人だったと思い出しました。
幼い頃、王都に行く度に殿下に意地の悪い事を言われて落ち込んで領地に帰ってくる私を慰めるのはケネスの役割だったのです。
「……だろ」
「領地に行くまでの間、本当に護衛をお願いしていいの?」
「ああ、ずっと頑張っていたご褒美に、俺が守ってやるよ」
「ありがとう。ね、領地に着いたら一緒に丘に行ってくれる?」
「丘に?」
「ええ、久し振りにあの景色を一緒に見たくなったの。もう私には婚約者がいないのですもの。その位自由にしてもいい筈よね」
落ち込んで領地に戻って来ると、ケネスが丘に連れていってくれました。
丘に登り、眼下に広がる領地を二人で眺めていると王都で辛かった記憶が薄れて元気になれたのです。
「……そうだな、フローリアはもう自由だよ。なんだって出来るんだ」
笑うケネスの顔を見ていたら、領地に戻るのが楽しみになってきました。
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