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どうして私も一緒なのでしょう
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「え、私も一緒に王宮に?」
顔合わせが十日後と迫り、慌ただしくカレンの荷造りをメイドに指示していた私はお母様の言葉に驚いて声を上げました。
王都から領地は馬車で七日の距離です。
そう日数が掛からないとはいえ何があるか分からないのが馬車の旅ですから、余裕を見て明日出発する予定になっていました。
ただ私は留守番のつもりでしたから、荷造り等何もしていないのですが。
「カレンがどうしても不安だというのよ。本当は正式に決まってからあなたは連れていくつもりでしたが、妹の結婚の為に付き合って貰えないかしら。勿論予定があるならそちらを優先していいのよ。これはカレンの我が儘ですからね」
お父様もお母様も、私達姉妹の片方だけを贔屓したりはしませんが、今回は特別でしょう。王都に行き顔合わせするのが嫌だと、毎日泣いているカレンの為なのですから、何より優先しなければいけないのは彼女の気持ちです。
「予定はありますが、兄様とのお出掛けなのでお断り出来ます」
カレンの刺繍の練習に連日付き合っていた気晴らしに、ディアス兄様が遠乗りに連れていってくれると誘ってくれたのです。ついでに町から少し離れたところに出る魔物を狩ってこようか位の色気も何もないお誘いです。
お父様の補佐として領地を管理しているディアス兄様は忙しい方なので、一緒のお出掛けは貴重なのですが今回は諦めるしかないでしょう。
「兄様に断りの手紙を書きます」
「あら、それならディアスも一緒に王都に行きましょう。そうすればあなたのエスコートの相手も探さずにすむわ」
良いことを思い付いたという顔は、カレンにそっくりです。いいえ、カレンがお母様に似ているのでしょう。
私はどちらかと言えばお父様似なので、ちょっとだけ羨ましく感じてしまいます。
お母様は妖精姫と言われた美貌の持ち主で、華奢で守ってあげたくなるような外見をしています。
お父様は凛々しいお顔立ちをされていて美形ではありますが、お父様似の私には守ってあげたくなるような儚げな外見はありません。
髪の色もお父様と私は金髪で緑色の瞳、お母様とカレンは角度によっては薄い桃色にも見える様な不思議な色が入った金髪と紫色の瞳でとても美しいのです。
「お仕事はいいのですか?」
「この程度留守にして滞る様なら、そちらの方が問題だわ。急で悪いけれどあなたも荷造りをしていらっしゃい。ディアスには私から伝えておくわ。あと、荷造りの指示はカレンの分は本人にさせます」
「カレンにですかっ?」
「あの子も自分は愚かだから出来ないと甘えていては駄目よ。今までも甘やかしてきたつもりはないけれど、心配であなたは手を貸してしまっていたでしょ?」
「それは、確かにそうですが。なんだか心配で」
カレンが困っているのを見るとつい手を貸してやりたくなるのです。
「今後はそれではいけないわ。第三王子で継承権の順位は低いとはいえ王家の方には違いないのよ。婚約が本当に決まってしまったら、愚かなので出来ませんなど言い分けはできないのよ」
カレンはずっと出るつもりは無かったようですが、実は夜会は今年一年だけ見逃す約束で引きこもりを許されていただけで、お母様は来年からは少しずつカレンを夜会に出席させるつもりだったそうです。
お母様はダンスが出来ないなら出来ないなりの戦略を考えようとしていたようです。
「それはそうですが」
「母国の諺に、魔虎は親を喰って大人になるというものがあるの」
急に話を変えられて首を傾げました。魔虎って、我が家の大広間に飾られているあれでしょうか?
「え、子供が親を食べるのですか?」
そんな恐ろしい。
魔物にはそんな習性があるのでしょうか。
私が眉をひそめていると、お母様はくすくすと笑いだしました。
「本当に食べるわけではないわよ、幼い子より親である大人の方が強いのは当たり前でしょう? その当たり前を覆す程強くなる様に子供を育てるべきという考えなのよ」
そんな諺があることも驚きですが、それを淑女教育に当てはめていいのか悩んでしまうのは私の感覚がおかしいのでしょうか。
顔合わせが十日後と迫り、慌ただしくカレンの荷造りをメイドに指示していた私はお母様の言葉に驚いて声を上げました。
王都から領地は馬車で七日の距離です。
そう日数が掛からないとはいえ何があるか分からないのが馬車の旅ですから、余裕を見て明日出発する予定になっていました。
ただ私は留守番のつもりでしたから、荷造り等何もしていないのですが。
「カレンがどうしても不安だというのよ。本当は正式に決まってからあなたは連れていくつもりでしたが、妹の結婚の為に付き合って貰えないかしら。勿論予定があるならそちらを優先していいのよ。これはカレンの我が儘ですからね」
お父様もお母様も、私達姉妹の片方だけを贔屓したりはしませんが、今回は特別でしょう。王都に行き顔合わせするのが嫌だと、毎日泣いているカレンの為なのですから、何より優先しなければいけないのは彼女の気持ちです。
「予定はありますが、兄様とのお出掛けなのでお断り出来ます」
カレンの刺繍の練習に連日付き合っていた気晴らしに、ディアス兄様が遠乗りに連れていってくれると誘ってくれたのです。ついでに町から少し離れたところに出る魔物を狩ってこようか位の色気も何もないお誘いです。
お父様の補佐として領地を管理しているディアス兄様は忙しい方なので、一緒のお出掛けは貴重なのですが今回は諦めるしかないでしょう。
「兄様に断りの手紙を書きます」
「あら、それならディアスも一緒に王都に行きましょう。そうすればあなたのエスコートの相手も探さずにすむわ」
良いことを思い付いたという顔は、カレンにそっくりです。いいえ、カレンがお母様に似ているのでしょう。
私はどちらかと言えばお父様似なので、ちょっとだけ羨ましく感じてしまいます。
お母様は妖精姫と言われた美貌の持ち主で、華奢で守ってあげたくなるような外見をしています。
お父様は凛々しいお顔立ちをされていて美形ではありますが、お父様似の私には守ってあげたくなるような儚げな外見はありません。
髪の色もお父様と私は金髪で緑色の瞳、お母様とカレンは角度によっては薄い桃色にも見える様な不思議な色が入った金髪と紫色の瞳でとても美しいのです。
「お仕事はいいのですか?」
「この程度留守にして滞る様なら、そちらの方が問題だわ。急で悪いけれどあなたも荷造りをしていらっしゃい。ディアスには私から伝えておくわ。あと、荷造りの指示はカレンの分は本人にさせます」
「カレンにですかっ?」
「あの子も自分は愚かだから出来ないと甘えていては駄目よ。今までも甘やかしてきたつもりはないけれど、心配であなたは手を貸してしまっていたでしょ?」
「それは、確かにそうですが。なんだか心配で」
カレンが困っているのを見るとつい手を貸してやりたくなるのです。
「今後はそれではいけないわ。第三王子で継承権の順位は低いとはいえ王家の方には違いないのよ。婚約が本当に決まってしまったら、愚かなので出来ませんなど言い分けはできないのよ」
カレンはずっと出るつもりは無かったようですが、実は夜会は今年一年だけ見逃す約束で引きこもりを許されていただけで、お母様は来年からは少しずつカレンを夜会に出席させるつもりだったそうです。
お母様はダンスが出来ないなら出来ないなりの戦略を考えようとしていたようです。
「それはそうですが」
「母国の諺に、魔虎は親を喰って大人になるというものがあるの」
急に話を変えられて首を傾げました。魔虎って、我が家の大広間に飾られているあれでしょうか?
「え、子供が親を食べるのですか?」
そんな恐ろしい。
魔物にはそんな習性があるのでしょうか。
私が眉をひそめていると、お母様はくすくすと笑いだしました。
「本当に食べるわけではないわよ、幼い子より親である大人の方が強いのは当たり前でしょう? その当たり前を覆す程強くなる様に子供を育てるべきという考えなのよ」
そんな諺があることも驚きですが、それを淑女教育に当てはめていいのか悩んでしまうのは私の感覚がおかしいのでしょうか。
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