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長く長く続くその先に1(透視点)
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「先輩がいなくても私は一人で生きていけます。むしろいない方が幸せになれます」
由衣が冷たい目で俺を見ながら言うのが信じられなかった。
先輩、先輩と俺を呼ぶ甘い声、優しい目、そんなのが嘘だったと言わんばかりの冷たい声を嘘だと思いたくて、俺は「うわあああぁっ!!」と声をあげたんだ。
「嘘だっ、嘘だ、嘘だ!! 由衣、お前は俺がいないと駄目だろ、俺に好きだと言われたくて必死だった、俺が不味いと言っても飯を作って、酒やツマミ用意してたじゃないか。俺がいつ部屋に行っても嬉しそうにしてたくせに!」
由衣に縋りつきたいのに、狐に抑え込まれて動けない。
それでも俺は必死で大声を上げ、狐から逃れて由衣に触れようと抵抗する。
由衣が俺を拒絶するなんて、信じられない信じたくない。
「俺がカレンと結婚すると言った時、死にそうな顔してたじゃないか。強がるなよ、俺がいないと駄目なんだろ。由衣は俺に愛されたくて仕方なかったんだよな。いつも寂しそうな顔してたじゃないか。俺がいなくても大丈夫なんて無理するなよ、一人でいいなんて言うな。俺が必要だろ、必要だよな!!」
遊びで付き合っていたカレンに子供が出来たと言われて、仕方ないかと結婚を決めた。
それを会社の奴らに報告したのを聞いていた由衣は、面白い位に顔色を変え今にも死にそうに見えたんだ。
その顔が可哀想で、情けなくて、凄く気分が良かった。しっかり自立しているように見えても、由衣は俺がいないと駄目なんだ。
俺が結婚するって知ってショックなんだよな、でも大丈夫だ俺はお前を捨てたりしない。
カレンと結婚しても、由衣とだって上手くやっていくから。そう思ってたのに。
なんで一人で生きていけるなんて言うんだよ!
俺を好きなんだろ! 俺がいないと駄目なんだ、そうだよな!!
「親父もおふくろも俺なんてどうでも良かった。弟だけいればそれで、でもお前らは違う。俺の気を惹きたくて必死だった。機嫌が悪い振りをちょっとでもすればご機嫌取りをしてただろ。カレンとのことが不満なら、美紀たちとの事が不満なら由衣一人だけにしてやってもいい。年寄り臭い飯も我慢してやる。それなら良いんだろ!」
叫ぶ、叫ぶ、叫ぶ!
大声をあげすぎて喉が痛くなるけど、狐に抑えつけられた体が痛むけれど、それでも大声で、俺を捨てるなと縋り続ける。
捨てる? そうだ、由衣は俺を捨てようとしてるんだ。俺は必要ない、もう好きじゃないって!
そんなの、嫌だ、一人になりたくないっ!
「俺を好きだと言えよ。俺だけ大事だって、そう言えよ! 俺を一人にするなっ、俺を捨てるな!!」
叫びながら力の限り狐に抵抗するけれど、体は動かない。
由衣に縋りたいのに、小さな体に触れたいのに指一本も自由にならないんだ。
「……好きだなんて、二度と思いません。先輩は私の信頼を裏切った、先輩みたいな人私の人生に必要ないです」
由衣が俺をいらないと言う。
そんなの信じたくない、これは夢だ。悪い夢だ。
だって由衣がそんなこと俺に言うはずない、こんな虫けらを見るような目で俺を見る筈がない。
「嘘だ、嘘だ、嘘だっ!!」
叫び続けて、喉の奥が切れた気がしたけれど、それでも構わず叫んでも、由衣は嫌そうに眉をしかめるだけで手を差し伸べてはくれない。
その姿に絶望を感じながら尚も叫ぼうとして口を開いた瞬間、「情けない姿は見苦しいだけな。もういいか」と狐が言いながら前足を俺の額に当てると俺の声が消えてしまった。
叫んでるのに、「なんだこれっ! 由衣! なんだよこれ、由衣っ」俺がいくら叫んでも俺の声は聞こえてこない。
どうしたんだ、どうしたらいいんだ。
「もう十分です。言いたい事は言えました。ありがとうございます」
由衣のその声が聞こえた瞬間、俺と由衣の繋がっていたものが全て消えてしまった。
細く細く繋がっていた筈の何かが、プツリと切れて亡くなってしまったんだと分かって、その喪失感に俺は知らない内に涙を零していたんだ。
由衣が冷たい目で俺を見ながら言うのが信じられなかった。
先輩、先輩と俺を呼ぶ甘い声、優しい目、そんなのが嘘だったと言わんばかりの冷たい声を嘘だと思いたくて、俺は「うわあああぁっ!!」と声をあげたんだ。
「嘘だっ、嘘だ、嘘だ!! 由衣、お前は俺がいないと駄目だろ、俺に好きだと言われたくて必死だった、俺が不味いと言っても飯を作って、酒やツマミ用意してたじゃないか。俺がいつ部屋に行っても嬉しそうにしてたくせに!」
由衣に縋りつきたいのに、狐に抑え込まれて動けない。
それでも俺は必死で大声を上げ、狐から逃れて由衣に触れようと抵抗する。
由衣が俺を拒絶するなんて、信じられない信じたくない。
「俺がカレンと結婚すると言った時、死にそうな顔してたじゃないか。強がるなよ、俺がいないと駄目なんだろ。由衣は俺に愛されたくて仕方なかったんだよな。いつも寂しそうな顔してたじゃないか。俺がいなくても大丈夫なんて無理するなよ、一人でいいなんて言うな。俺が必要だろ、必要だよな!!」
遊びで付き合っていたカレンに子供が出来たと言われて、仕方ないかと結婚を決めた。
それを会社の奴らに報告したのを聞いていた由衣は、面白い位に顔色を変え今にも死にそうに見えたんだ。
その顔が可哀想で、情けなくて、凄く気分が良かった。しっかり自立しているように見えても、由衣は俺がいないと駄目なんだ。
俺が結婚するって知ってショックなんだよな、でも大丈夫だ俺はお前を捨てたりしない。
カレンと結婚しても、由衣とだって上手くやっていくから。そう思ってたのに。
なんで一人で生きていけるなんて言うんだよ!
俺を好きなんだろ! 俺がいないと駄目なんだ、そうだよな!!
「親父もおふくろも俺なんてどうでも良かった。弟だけいればそれで、でもお前らは違う。俺の気を惹きたくて必死だった。機嫌が悪い振りをちょっとでもすればご機嫌取りをしてただろ。カレンとのことが不満なら、美紀たちとの事が不満なら由衣一人だけにしてやってもいい。年寄り臭い飯も我慢してやる。それなら良いんだろ!」
叫ぶ、叫ぶ、叫ぶ!
大声をあげすぎて喉が痛くなるけど、狐に抑えつけられた体が痛むけれど、それでも大声で、俺を捨てるなと縋り続ける。
捨てる? そうだ、由衣は俺を捨てようとしてるんだ。俺は必要ない、もう好きじゃないって!
そんなの、嫌だ、一人になりたくないっ!
「俺を好きだと言えよ。俺だけ大事だって、そう言えよ! 俺を一人にするなっ、俺を捨てるな!!」
叫びながら力の限り狐に抵抗するけれど、体は動かない。
由衣に縋りたいのに、小さな体に触れたいのに指一本も自由にならないんだ。
「……好きだなんて、二度と思いません。先輩は私の信頼を裏切った、先輩みたいな人私の人生に必要ないです」
由衣が俺をいらないと言う。
そんなの信じたくない、これは夢だ。悪い夢だ。
だって由衣がそんなこと俺に言うはずない、こんな虫けらを見るような目で俺を見る筈がない。
「嘘だ、嘘だ、嘘だっ!!」
叫び続けて、喉の奥が切れた気がしたけれど、それでも構わず叫んでも、由衣は嫌そうに眉をしかめるだけで手を差し伸べてはくれない。
その姿に絶望を感じながら尚も叫ぼうとして口を開いた瞬間、「情けない姿は見苦しいだけな。もういいか」と狐が言いながら前足を俺の額に当てると俺の声が消えてしまった。
叫んでるのに、「なんだこれっ! 由衣! なんだよこれ、由衣っ」俺がいくら叫んでも俺の声は聞こえてこない。
どうしたんだ、どうしたらいいんだ。
「もう十分です。言いたい事は言えました。ありがとうございます」
由衣のその声が聞こえた瞬間、俺と由衣の繋がっていたものが全て消えてしまった。
細く細く繋がっていた筈の何かが、プツリと切れて亡くなってしまったんだと分かって、その喪失感に俺は知らない内に涙を零していたんだ。
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