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眠ってる可愛い子
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「あれ、眠ってるんですか」
「まあ、狐は夜行性だからねえ」
急いで大量の買い物を済ませた私は買い物した物達を部屋に片付け管理人さんへのお礼の菓子折を持ち管理人室にやって来た。
管理人さんの好みが分らず、でもスーパーで売っている袋菓子は気軽な感じがしすぎるし、お酒も違う気がするしと悩みに悩んで、駅前から家とは反対方向に位置している商店街にある和菓子屋さんに寄ってみた。
じつはここずっと気になってたんだけど、少し敷居が高い気がして入ったことがないお店だった。
この商店街は古くからあるお店が多い様で、八百屋さんとか魚屋さんとかの他お総菜屋さんやおむすびとか巻き寿司等をメインに扱っているお弁当屋さんや、練り物屋さんに焼き鳥屋さん等がある。
お弁当屋さんの巻き寿司は私も良く買っていて、かんぴょう巻きとか焼きたらこのおむすびとかがお気に入りだったりする。
シャッター街なんて言葉がある昨今、大手スーパーにこういう小さな店は消えていく事が多いらしいけれど、この商店街はとっても元気な感じがする。
この商店街の雰囲気が良かったのもこの街のマンションを購入しようと思った理由の一つだったりする。
「お店の人、管理人さんはこれが好きって言ってたけど、確かに美味しそうだったよね」
敷居が高いと感じていた和菓子屋さんは、木造の小さな古いショーケースと店頭に竹製の縁台があるだけのお店で、お店の外観からは頑固な和菓子職人のお祖父さんがいそうなイメージがあった。
沢山買い物した物を載せたママチャリを店の前に停めて恐る恐る中に入ると、ショーケースに並んでいたのはとっても可愛い和菓子達だった。
見た目が華やかな生菓子は、椿の形っぽいのとか菊の花っぽいものとかがあり、干菓子は稲荷神社にあやかってなのか、狐の顔をした物や赤い鳥居をデザインした物なんかがあったし、最中は狐の顔だった。
どれも美味しそうで迷っていたら、店員さんが相談に乗ってくれたのだ。
「管理人さんは甘い物好きそうだと思ってたけれど、紺さんも甘い物好きなのは意外だったなあ」
店員さんは紺さんのことも管理人さんの事も知っていて、二人が好きなお菓子を教えてくれたのは助かった。
こういうのって気持ちではあるけれど、好きじゃないものを渡されたら困るもんね。
管理人さんは胡麻餡の最中と栗羊羹のセット、紺さんはつぶ餡の茶饅頭が好きだと聞いて沢山買ってしまったし自分用にも生菓子を数個買ってしまった。
購入した和菓子を一度お店の奥にある白い狐の像にお供えし、柏手を打っていたのが不思議だったけれど稲荷神社がある街だからなのかなと思うことにした。
「戻ってくるの遅くなっちゃって、ご迷惑お掛けして申し訳ありませんでした。これ、お詫びというかお礼というかなんですが、お茶の時間に召し上がって下さい」
紙袋から菓子折を取り出して、管理人さんに手渡す。
すぴすぴ寝ている十和は可愛いけど、待たせてしまった心苦しさと申し訳なさで管理人さんにも十和にも平身低頭謝りたくなってしまう。
「気を使わせて逆に申し訳ないなあ。あれ、これ狐堂さんかな」
「はい。店員さんが最中と栗羊羹がお好きだと教えて下さったので、是非食べて下さい」
「ああ、だから。有り難く頂きますよ。嬉しいなあ、滅多に食べられないんですよ」
近くにあるお店なんだから、買いにいけばいつでも食べられるんじゃないのかな?
疑問に思いながら、でも喜んでくれたんだから良いかと思い直す。
「折角買って来て貰ったけれど、多分トイレシートは使わないだろうねえ」
「そうですね、でもいいです十和がトイレで困らないならそれが一番ですから」
眠っている十和の額をそっと撫でながらそう言うと、管理人さんはにこにこと頷きながら「何かあったらいつでも頼ってくれていいからね」と言ってくれた。
「じゃあ失礼します」
「お菓子ありがとう。食べるのが楽しみだよ」
にこにこ笑顔の管理人さんに会釈して、十和を抱っこした私は部屋に戻るのだった。
「まあ、狐は夜行性だからねえ」
急いで大量の買い物を済ませた私は買い物した物達を部屋に片付け管理人さんへのお礼の菓子折を持ち管理人室にやって来た。
管理人さんの好みが分らず、でもスーパーで売っている袋菓子は気軽な感じがしすぎるし、お酒も違う気がするしと悩みに悩んで、駅前から家とは反対方向に位置している商店街にある和菓子屋さんに寄ってみた。
じつはここずっと気になってたんだけど、少し敷居が高い気がして入ったことがないお店だった。
この商店街は古くからあるお店が多い様で、八百屋さんとか魚屋さんとかの他お総菜屋さんやおむすびとか巻き寿司等をメインに扱っているお弁当屋さんや、練り物屋さんに焼き鳥屋さん等がある。
お弁当屋さんの巻き寿司は私も良く買っていて、かんぴょう巻きとか焼きたらこのおむすびとかがお気に入りだったりする。
シャッター街なんて言葉がある昨今、大手スーパーにこういう小さな店は消えていく事が多いらしいけれど、この商店街はとっても元気な感じがする。
この商店街の雰囲気が良かったのもこの街のマンションを購入しようと思った理由の一つだったりする。
「お店の人、管理人さんはこれが好きって言ってたけど、確かに美味しそうだったよね」
敷居が高いと感じていた和菓子屋さんは、木造の小さな古いショーケースと店頭に竹製の縁台があるだけのお店で、お店の外観からは頑固な和菓子職人のお祖父さんがいそうなイメージがあった。
沢山買い物した物を載せたママチャリを店の前に停めて恐る恐る中に入ると、ショーケースに並んでいたのはとっても可愛い和菓子達だった。
見た目が華やかな生菓子は、椿の形っぽいのとか菊の花っぽいものとかがあり、干菓子は稲荷神社にあやかってなのか、狐の顔をした物や赤い鳥居をデザインした物なんかがあったし、最中は狐の顔だった。
どれも美味しそうで迷っていたら、店員さんが相談に乗ってくれたのだ。
「管理人さんは甘い物好きそうだと思ってたけれど、紺さんも甘い物好きなのは意外だったなあ」
店員さんは紺さんのことも管理人さんの事も知っていて、二人が好きなお菓子を教えてくれたのは助かった。
こういうのって気持ちではあるけれど、好きじゃないものを渡されたら困るもんね。
管理人さんは胡麻餡の最中と栗羊羹のセット、紺さんはつぶ餡の茶饅頭が好きだと聞いて沢山買ってしまったし自分用にも生菓子を数個買ってしまった。
購入した和菓子を一度お店の奥にある白い狐の像にお供えし、柏手を打っていたのが不思議だったけれど稲荷神社がある街だからなのかなと思うことにした。
「戻ってくるの遅くなっちゃって、ご迷惑お掛けして申し訳ありませんでした。これ、お詫びというかお礼というかなんですが、お茶の時間に召し上がって下さい」
紙袋から菓子折を取り出して、管理人さんに手渡す。
すぴすぴ寝ている十和は可愛いけど、待たせてしまった心苦しさと申し訳なさで管理人さんにも十和にも平身低頭謝りたくなってしまう。
「気を使わせて逆に申し訳ないなあ。あれ、これ狐堂さんかな」
「はい。店員さんが最中と栗羊羹がお好きだと教えて下さったので、是非食べて下さい」
「ああ、だから。有り難く頂きますよ。嬉しいなあ、滅多に食べられないんですよ」
近くにあるお店なんだから、買いにいけばいつでも食べられるんじゃないのかな?
疑問に思いながら、でも喜んでくれたんだから良いかと思い直す。
「折角買って来て貰ったけれど、多分トイレシートは使わないだろうねえ」
「そうですね、でもいいです十和がトイレで困らないならそれが一番ですから」
眠っている十和の額をそっと撫でながらそう言うと、管理人さんはにこにこと頷きながら「何かあったらいつでも頼ってくれていいからね」と言ってくれた。
「じゃあ失礼します」
「お菓子ありがとう。食べるのが楽しみだよ」
にこにこ笑顔の管理人さんに会釈して、十和を抱っこした私は部屋に戻るのだった。
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