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十和を預けてお出かけ

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「はい、これを食べさせてやってください」

 戻ってきた管理人さんの頭は普通し、しっぽみたいなものも無かった。
 やっぱり幻覚だったのかも、酔いが残ってるのかな?
 今まであんなに飲んだことなかったから、知らなかったけど私お酒飲むと幻覚見ちゃうのかしら。

「どうしたのかな、具合悪いのかい」
「あ、いえ。十和のトイレをどうしようかなって考えていたもので」

 管理人さんからレジ袋に入ったタッパーを受け取りながら、慌てて誤魔化した。
 管理人さんの頭に耳みたいなものが見えたので、なんて言えるわけない。

「ああ、トイレ。そうだなぁ、するかどうか分らないがペット用のトイレシートがあればいいんじゃないか? でもすぐに神社に返すなら態々トイレシートを用意するのもなぁ。あとは新聞紙を敷いて代用するか」

 まあ、結構ああいう類いのものは高いから、管理人さんが悩むのも分る。
 でも、私としては昨日お世話になったんだから少し位の散財は問題ない。使わなかった分は十和を返す時に紺さんに渡して使って貰えばいいんだし。

「あ、じゃあ少しだけ十和を預かって貰っていてもいいですか? 私駅前のドラッグストアまで急いで行ってくるので」

 スーパーとかよりドラッグストアの方が揃っているだろうと考えてそう言えば、管理人さんが「預かるのはいいが、態々買いに行かなくても新聞を重ねてもいいんだよ。新聞なら家に沢山あるから分けてあげられるし」と心配してくれた。
 長く会話したことなかったけれど、管理人さんは感じていた印象通りの良い人みたいだ。

「ありがとうございます。大丈夫です。急いで行ってくるので申し訳ありませんが、十和の事よろしくお願いします」
「ああ、じゃあ。急がなくて良いから気をつけて行っておいで」
「はい。折角用意してもらったのに申し訳ありませんが、十和にご飯食べさせて貰ってもいいですか?」
「勿論だ」

 管理人さんに十和と十和のご飯を渡すと、私はぺこりと頭を下げてから自転車置き場へ走った。
 急いでトイレシート買って、ついでに食材とか掃除の道具とかも買ってこよう。
 管理人さんに迷惑掛けたお詫びとお礼も買わなくちゃ。
 自転車に跨がった私は、勢いよくペダルを踏んだ。
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