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幻なのか何なのか
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朝ご飯を食べた後、洗濯をして掃除をしてから眠っている十和を抱っこして外へ出た。
化粧は軽くファンデーションと眉を描いた程度、コートを着込んでお財布と鍵とスマホだけを入れたサコッシュを斜めがけする。
十時近いというのに、十和はぐっすりと眠ったままだった。
動物として抱っこされても起きないというのは大丈夫なのかしら? なんて心配をしたくなるほど、十和はすぴすぴと呑気な寝息をたてて眠っている。
「管理人さんこの時間だと外の掃除中かな。十和見たらびっくりしちゃうかな」
このマンションはペット可だけれど、狐はもしかしたら駄目かもしれない。
飼うわけじゃないし、軽く挨拶だけすればいいかなと考えながら外に出ると管理人さんはマンションの前を掃き掃除していた。
「あれ?」
なんだろう。管理人さんの頭に白い三角が見える?
「おや、おはようございます」
「おはようございます。あ、十和駄目だよっ」
挨拶しながら、焦って十和を掴まえようとしゃがみ込む。
私が出てきた事に気がついた管理人さんがにこやかに挨拶してくれた、その声で起きたのか十和が突然私の腕の中からぴょんと地面に飛び降りたのだ。
「なんだ、十和じゃないか。遊びに来たのか? おいで」
焦る私に気付いていないのか、管理人さんは呑気な声で十和を手招きすると慣れた手つきで十和を抱き上げた。
「え、十和をご存知なんですか」
さっき見えた白い三角は見間違いだったんだろうか。
管理人さんの頭に見えた筈の白い物は今は無い。
いや、帽子も何もかぶってないんだから頭にそんな物ついているわけがないよ。私なに考えてる? まだ酔っているんだろうか。
「知っているよ。稲荷さんのところの十和でしょう」
「そうです。昨日紺さんからお預かりして、これからお返しに伺うところなんです」
私が知らなかっただけで、十和は結構この辺りで有名なのかもしれない。
この辺りの人ならあの神社に行く機会も多いだろうし、神社で飼っている子なら知っててもおかしくないのかな?
優しく十和の頭を撫でている、管理人さんの様子を見ながら考えていると「今の時間だと稲荷さんは誰もいないんじゃないかな」と管理人さんから困った情報を得てしまった。
「そうなんですか? あれ、あの神社昼間は」
「あそこは何かの行事が無い限り昼間は無人だからなあ。紺さんは夜だけしか姿を見せないし」
「そうなんですか。それじゃ十和を今連れて行っちゃマズいですね」
十和は管理人さんに慣れているのか、頭を撫でられて嬉しそうにしている。
紺さんがいる夜に十和を返しに行く方がいいのかな、でも十和に何を食べさせよう。
「頭の良い子だから稲荷さんの参道の前で放せば、勝手に戻っていくと思うけれど心配かな」
「はい。お預かりしてその返し方はちょっと不安です。でも、十和に何を食べさせたらいいのか分らないから、ちょっと困っていて」
茹でたささみは冷蔵庫の中にあるけれど、あれでいいのか正直自信がない。
トイレの心配もあるから、夜まで部屋に居させるなら管理人さんに一旦預かって貰ってペットシーツとか買って来た方がいいかもしれない。
「ああ、十和は外でご飯は食べないだろうなあ。うーん、あ。ちょっと待ってて」
「はい?」
十和を私の腕に戻し、管理人さんは箒を持ったままマンションの中に戻っていく。
「管理人さん? え、あれ? あれれ?」
マンションの中に入っていく管理人さんの頭には、またあの白い三角が見えた。
それどころか、管理人さんのお尻の辺りに白いふさふさしたしっぽの様な物まで見え始めた。
「私、もしかして本気で酔ってる? ねえ、十和も見たよね?」
私飲み過ぎたんだろうか。
幻覚が見えるって、ちょっとマズくない? 焦りながら十和に聞いても十和はきょとんと私を見つめるだけだった。
化粧は軽くファンデーションと眉を描いた程度、コートを着込んでお財布と鍵とスマホだけを入れたサコッシュを斜めがけする。
十時近いというのに、十和はぐっすりと眠ったままだった。
動物として抱っこされても起きないというのは大丈夫なのかしら? なんて心配をしたくなるほど、十和はすぴすぴと呑気な寝息をたてて眠っている。
「管理人さんこの時間だと外の掃除中かな。十和見たらびっくりしちゃうかな」
このマンションはペット可だけれど、狐はもしかしたら駄目かもしれない。
飼うわけじゃないし、軽く挨拶だけすればいいかなと考えながら外に出ると管理人さんはマンションの前を掃き掃除していた。
「あれ?」
なんだろう。管理人さんの頭に白い三角が見える?
「おや、おはようございます」
「おはようございます。あ、十和駄目だよっ」
挨拶しながら、焦って十和を掴まえようとしゃがみ込む。
私が出てきた事に気がついた管理人さんがにこやかに挨拶してくれた、その声で起きたのか十和が突然私の腕の中からぴょんと地面に飛び降りたのだ。
「なんだ、十和じゃないか。遊びに来たのか? おいで」
焦る私に気付いていないのか、管理人さんは呑気な声で十和を手招きすると慣れた手つきで十和を抱き上げた。
「え、十和をご存知なんですか」
さっき見えた白い三角は見間違いだったんだろうか。
管理人さんの頭に見えた筈の白い物は今は無い。
いや、帽子も何もかぶってないんだから頭にそんな物ついているわけがないよ。私なに考えてる? まだ酔っているんだろうか。
「知っているよ。稲荷さんのところの十和でしょう」
「そうです。昨日紺さんからお預かりして、これからお返しに伺うところなんです」
私が知らなかっただけで、十和は結構この辺りで有名なのかもしれない。
この辺りの人ならあの神社に行く機会も多いだろうし、神社で飼っている子なら知っててもおかしくないのかな?
優しく十和の頭を撫でている、管理人さんの様子を見ながら考えていると「今の時間だと稲荷さんは誰もいないんじゃないかな」と管理人さんから困った情報を得てしまった。
「そうなんですか? あれ、あの神社昼間は」
「あそこは何かの行事が無い限り昼間は無人だからなあ。紺さんは夜だけしか姿を見せないし」
「そうなんですか。それじゃ十和を今連れて行っちゃマズいですね」
十和は管理人さんに慣れているのか、頭を撫でられて嬉しそうにしている。
紺さんがいる夜に十和を返しに行く方がいいのかな、でも十和に何を食べさせよう。
「頭の良い子だから稲荷さんの参道の前で放せば、勝手に戻っていくと思うけれど心配かな」
「はい。お預かりしてその返し方はちょっと不安です。でも、十和に何を食べさせたらいいのか分らないから、ちょっと困っていて」
茹でたささみは冷蔵庫の中にあるけれど、あれでいいのか正直自信がない。
トイレの心配もあるから、夜まで部屋に居させるなら管理人さんに一旦預かって貰ってペットシーツとか買って来た方がいいかもしれない。
「ああ、十和は外でご飯は食べないだろうなあ。うーん、あ。ちょっと待ってて」
「はい?」
十和を私の腕に戻し、管理人さんは箒を持ったままマンションの中に戻っていく。
「管理人さん? え、あれ? あれれ?」
マンションの中に入っていく管理人さんの頭には、またあの白い三角が見えた。
それどころか、管理人さんのお尻の辺りに白いふさふさしたしっぽの様な物まで見え始めた。
「私、もしかして本気で酔ってる? ねえ、十和も見たよね?」
私飲み過ぎたんだろうか。
幻覚が見えるって、ちょっとマズくない? 焦りながら十和に聞いても十和はきょとんと私を見つめるだけだった。
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