おきつねさんとちょっと晩酌

木嶋うめ香

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部屋に戻って、お泊り準備

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「はあ」

 散々な夜だった。
 半分は自分のせいだけど、でもさぁあれはないよね。
 あまりに酷くて落ち込んでいた気持ちも、ちょっと泣いたら吹っ切れた。
 ある意味ありがとうございます……だ。

「十和、寒かったでしょ。すぐに暖房つけるね」

 ドアを開き部屋の中へ入ってパンプスを脱ぐ前に、十和を床へと下す。
 パンプスを脱ぐとつま先がジンジンしてる。
 やっぱり、ヒールの高い靴やめようかな。
 定番は七センチ、でも少し減らして五センチとか。

「この靴とか買ったの夏だし、結構履いたし。ボーナス出たんだもん、明日掃除して日曜日に買いに行っちゃおうかな」

 部屋も掃除したい。
 色々捨てて拭き掃除。もう十二月だし、早めの大掃除だ。
 
「十和、喉渇いたりしてない? 大丈夫?」

 狭い廊下を進み、リビングとして使っているスペースのエアコンを点けてから、寝室のエアコンも点けておく。
 一日留守にしていた部屋の中は寒々しい。
 エアコンが動くモーターの音を聞きながら、コートを脱いで確認するけどお尻のあたりも裾も全然汚れていない。
 コートの色はベージュ。襟と袖にはフェイクファーがついた上品なデザインで、コートのベルトは閉めずに後ろでリボン結びにして着るのが私の定番だ。
 リボン結びの理由は、可愛いからではなく面倒だから。
 コートって、私だけなのかな。結構ベルトの扱いが面倒だと思う。
 ボタン全部閉めたらベルトしないとおかしいし、開けておいた時に両脇でプラプラさせっておくと、トイレの時になんか変なところに付きそうでなんとなく嫌だ。
 そんなわけで、すっごく寒い時以外はベルトはリボン結びしてコートのボタンは開けておくのが定番スタイルだったりする。

「これなら、クリーニング出さなくても大丈夫かな。会社用はこれともう一着しかないからなあ。お休み用のダッフルコートは、私があれ着ると中学生になっちゃうから会社には着ていけないし。あーあ、童顔ってヤダ」

 低身長で童顔。
 そんなのが許されるのは、アニメの世界だけだ。
 現実は色々面倒なのだ、本当嫌になるくらいに。

「お水、お水。お水のお皿」

 食器をしまっている棚を探し、小さなからでも水が飲みやすそうなお皿を探す。
 食器の数はあまりない。
 深めのお皿は三つしかなかったけれど、その中でも一枚結構お気に入りのクマのキャラクターのお皿に水を汲み、プラスチックトレイの上に乗せてからリビングの床に置いた。

「十和。お水だよ。飲む?」

 お水のお皿の前に十和を抱いてつれていくけれど、十和はきょとんとお皿を見つめたまま動かない。
 喉渇いていないのかな?
 夜中だし、お腹はすいてないよね? そのあたり紺さんにちゃんと聞いてくれば良かった。

「十和、お水。自由に飲んでいいからね。あ」

 おしっことかどうしよう。
 困った、どうしよう。

「十和、トイレ大丈夫?」

 十和に聞いてみるけれど、きょとんと私の顔を見上げたままだ。
 これは通じていないんだろうな。

「とりあえず、タオル用意しておこうかな」

 古いバスタオルを三枚に、ごみ袋を一枚。
 タオルを全部三つ折りにして、広げたごみ袋の上に三枚を交互に重ねて広げる。

「十和、おしっこしたくなったらここね。遠慮しなくていいから」

 バスタオルを指さしながら言っても、十和はきょとんとしたままだ。
 言ったことが全く通じていない様子に、早々に諦めた。
狐の子のトイレトレーニングの仕方なんてわからないし、部屋のどこかでしても拭けばいいや程度の気持ちでいいか。
 ちょっと位部屋が汚れても、さっき助けてくれた恩に比べたらどうってことないわ。
 使ってなかった籐の平たい籠にひざ掛けと大判のストールを入れて、十和の寝床を作ってベッドの隣り置く。

「これが十和のベッドだよ」

 指さすと十和はさっそくその中に入って、ふんふんと匂いを嗅いでいる。
 合格かな? よし、ひざ掛けとストールの間に包まって落ちつたみたい。

「よし、お風呂入れてこよう」

 十和のお泊り準備を終えたので、次は私の寝る準備。
 酔いはまだ残ってるけれど、寒い道を歩いてきたらか体が冷えてる。
 お風呂入れて温まろう。

「十和はちょっとここにいてね」

 丸まったままの十和を置いて、私はバスルームに向かうのだった。
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