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誤魔化しは通じない
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「話を聞いていた方は、面白いと思ったのだからフィーアさんの誤魔化しが通じなかったのね」
なんだか頭が痛くなりながら尋ねると、ビビアナは眉間に小さな皺を作りながら頷きました。
私だけならともかく、ビビアナとあまり親しいわけではないマルセルもいる席でそんな表情をするのはとても珍しいです。彼女はいつもなら高位の貴族令嬢らしく嫌悪感等を表に出さないのですから、つまりそれだけフィーアさんの行いを不快に思っているということなのでしょう。
「通じるわけないわ。彼女相手の方へ媚びている様な声でお願いしていたらしいのよ。それが断られた途端それが無くなったそうだもの。その途端喫茶室の雰囲気が一変したそうよ」
喫茶室の空気が一変というのは、勿論悪い方にでしょう。
喫茶室内に居た誰もがフィーアさん達の話に聞き耳を立てていて、私達と同じ意味に取り、フィーアさんの誤魔化しが通じなかったということなのでしょう。
それって、つまり、フィーアさんの恥をその場に居た方々が知っているということです。
「マルセル、こんな情けない思いをしたのは私初めてよ」
兄の婚約者の醜聞に、私は恥ずかしさで体が熱くなってきてしまいました。
フィーアさんは、もう少し頭の良い人だと思っていました。
噂がすぐに広まりそうな場所で、なんていうことをしてくれたのでしょう。彼女は兄のことを心の底からどうでもいいと考えているのだろうと、あまり頭が良く無い私でも分かります。
「相手の名前は分かりますか」
「ええ勿論。有名な方ですからね」
「有名?」
「副会長だそうよ」
副会長と聞いて、今度は体の熱が一気に冷めて行きました。
「それ、生徒会の?」
恐る恐る私はビビアナに確認しました。答えが分かっていても聞かずにはいられません。私の聞き違いだと思いたくなっても仕方がないでしょう。
だって、生徒会副会長ワアド・エクトラーダ侯爵子息の婚約者はこの国の王妃様の姪、シャノン・キャサーウッド
公爵令嬢なのです。王子殿下、王女殿下は私達の年齢よりも少し上の方ばかりで、学校に公爵位の家の女性も彼女しかいないのです。
つまりフィーアさんは女生徒の最上位にいる方を婚約者に持つ方に、そういう意味で擦り寄ったということなのですから。
「アニカ、それ以外の誰がいるというの。でもあなたの気持ちも分かるわ。私だって話を聞いた時は気を失いそうになったもの」
「ねえ、それいつの話なの。私達が入学する前?」
「いいえ、つい最近らしいわ」
私もマルセルも呑気にし過ぎていたのでしょうか。つい最近とはいえそんな話を知らずにいたなんて。
「謝罪、謝罪に行かないと」
すでに食欲は失せて、眩暈までしてきた気がします。
キャサーウッド公爵家にも当然この話は届いているでしょう。あの家の不興を買ってしまったらマルセルの家にも迷惑が掛かってしまいます。
「アニカ落ち着いて、私達が謝罪に行くのはおかしい。父上達に頼まなければ」
「そ、そうね。ああ、ビビアナありがとう。こんな重要な話を知らずにいたら私の家もマルセルの家も、大変なことになっていたわ」
「そうよね。今私の知り合いに噂がどの程度広がっているのか確認をしてもらっているの。明日にはアニカにお知らせ出来ると思うわ」
ビビアナはなんて優しいのでしょう、私の為にそこまでしてくれているなんて。
「ビビアナありがとう」
「あなたは私の大切なお友達だもの。当然よ、知り合いはそういうことが得意なの。安心して任せて頂戴な」
頼もしいビビアナの言葉に、私は感動して涙が出そうになったのです。
なんだか頭が痛くなりながら尋ねると、ビビアナは眉間に小さな皺を作りながら頷きました。
私だけならともかく、ビビアナとあまり親しいわけではないマルセルもいる席でそんな表情をするのはとても珍しいです。彼女はいつもなら高位の貴族令嬢らしく嫌悪感等を表に出さないのですから、つまりそれだけフィーアさんの行いを不快に思っているということなのでしょう。
「通じるわけないわ。彼女相手の方へ媚びている様な声でお願いしていたらしいのよ。それが断られた途端それが無くなったそうだもの。その途端喫茶室の雰囲気が一変したそうよ」
喫茶室の空気が一変というのは、勿論悪い方にでしょう。
喫茶室内に居た誰もがフィーアさん達の話に聞き耳を立てていて、私達と同じ意味に取り、フィーアさんの誤魔化しが通じなかったということなのでしょう。
それって、つまり、フィーアさんの恥をその場に居た方々が知っているということです。
「マルセル、こんな情けない思いをしたのは私初めてよ」
兄の婚約者の醜聞に、私は恥ずかしさで体が熱くなってきてしまいました。
フィーアさんは、もう少し頭の良い人だと思っていました。
噂がすぐに広まりそうな場所で、なんていうことをしてくれたのでしょう。彼女は兄のことを心の底からどうでもいいと考えているのだろうと、あまり頭が良く無い私でも分かります。
「相手の名前は分かりますか」
「ええ勿論。有名な方ですからね」
「有名?」
「副会長だそうよ」
副会長と聞いて、今度は体の熱が一気に冷めて行きました。
「それ、生徒会の?」
恐る恐る私はビビアナに確認しました。答えが分かっていても聞かずにはいられません。私の聞き違いだと思いたくなっても仕方がないでしょう。
だって、生徒会副会長ワアド・エクトラーダ侯爵子息の婚約者はこの国の王妃様の姪、シャノン・キャサーウッド
公爵令嬢なのです。王子殿下、王女殿下は私達の年齢よりも少し上の方ばかりで、学校に公爵位の家の女性も彼女しかいないのです。
つまりフィーアさんは女生徒の最上位にいる方を婚約者に持つ方に、そういう意味で擦り寄ったということなのですから。
「アニカ、それ以外の誰がいるというの。でもあなたの気持ちも分かるわ。私だって話を聞いた時は気を失いそうになったもの」
「ねえ、それいつの話なの。私達が入学する前?」
「いいえ、つい最近らしいわ」
私もマルセルも呑気にし過ぎていたのでしょうか。つい最近とはいえそんな話を知らずにいたなんて。
「謝罪、謝罪に行かないと」
すでに食欲は失せて、眩暈までしてきた気がします。
キャサーウッド公爵家にも当然この話は届いているでしょう。あの家の不興を買ってしまったらマルセルの家にも迷惑が掛かってしまいます。
「アニカ落ち着いて、私達が謝罪に行くのはおかしい。父上達に頼まなければ」
「そ、そうね。ああ、ビビアナありがとう。こんな重要な話を知らずにいたら私の家もマルセルの家も、大変なことになっていたわ」
「そうよね。今私の知り合いに噂がどの程度広がっているのか確認をしてもらっているの。明日にはアニカにお知らせ出来ると思うわ」
ビビアナはなんて優しいのでしょう、私の為にそこまでしてくれているなんて。
「ビビアナありがとう」
「あなたは私の大切なお友達だもの。当然よ、知り合いはそういうことが得意なの。安心して任せて頂戴な」
頼もしいビビアナの言葉に、私は感動して涙が出そうになったのです。
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