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恐ろしい噂を聞いてしまいました2
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「急なお願いなのに時間を作ってくれてありがとう。マルセルは用事があるそうなの、私だけお邪魔するわね」
あの後授業の合間の休憩時間にマルセルの教室を訪ね放課後の件を話すと、マルセルはフィーアさんの事で調べたい事があるから夜に私の家を訪ねてくれることになりました。
マルセルに迷惑を掛けてしまい申し訳無い気持ちと、一緒に帰ることが出来ない寂しさがありますがしかたありません。というよりも、私がマルセルに家の事で迷惑を掛けているのですから、我儘を言える立場ではありません。
迷惑をかけたお詫びにマルセルを今日の夕食に招待しましたが、この程度本当はお詫びになんてなりません。
昼休みの件でもやもやし、授業を受けながらビビアナにどういう風に話をしようか考えていたお陰で、午後の授業は上の空でしたが、得意な科目なので後日頑張ろうと思います。
「久しぶりにアニカと二人でお話出来るのは嬉しいわ。さあ、行きましょう」
「今日はクランク様いらっしゃらないのね」
にこやかに私に返事をするビビアナと連れ立って教室の外に出ようとしたら、またあの男爵令嬢にからまれました。殆ど話をしたことが無い方だったというのに、いつの間にか毎日絡まれる様になっているのは困りものです。
「とうとう婚約者に見捨てられたのね」
無作法者にちらりと視線を向けた後、ビビアナが無視して歩みを進めるので私も一緒に無視して歩き出しました。
「ちょ、なんで無視するのよっ! ドライスさん失礼ではなくてっ!」
失礼なのはどちらだろうと思いながら、にこやかに振り返ると「付き合ってあげる必要ないわ」というビビアナの呟きが隣から聞こえました。
「私に向けて話していたのね。気が付かずにごめんなさいね」
最近しつこく絡んでくる彼女はベデネ男爵家の次女ですが、私は名前を呼んだりはしません。
会話中格下相手の家名を呼ぶ、名前を呼ぶというのはそれなりの仲でなければしないのです。
それがこの国の貴族女性のしきたりです。
他国の様に爵位が下の人間から上位貴族に声を掛けてはいけない等の決まりはありませんが、家名すら呼んで貰えないというのは親しく付き合うつもりが無いと相手に言っているのと同じなのです。
「婚約者に見捨てられたなんて、あなた以外に誰がいるのよ」
「だって、私と婚約者の仲はこの上なく良好ですもの。私のことだなんて思わないわ」
ねえ、とビビアナに顔を向けると、彼女はにっこりと頷いてくれました。
「でも今日は迎えに来ていないじゃない」
「今日はビビアナと用事があるからよ。マルセルとは夕食を一緒にする約束をしているけれど、それの何が気になるのかしら?」
人差し指を頬に当てわざと小首を大袈裟に傾げながら聞けば、不愉快そうに歪んだ顔で「そんな余裕も今日までよ。自分で欲しがり女狐を近付けたお馬鹿さん。ふんっ!」と言い捨てて去っていきました。
「あれ、何かしら?」
わけが分からずビビアナに話を向けると、困った様な顔でビビアナは私の腕を取りました。
「アニカにはもう少し証拠を集めてから話すつもりだったのだけれど、馬車の中で話すわ。驚かないで聞いてね」
「え、ええ」
証拠を集めてというなら、わざわざビビアナは私の為に何かをしてくれていたのでしょう。
それが何なのか聞くのが怖いですがベデネ男爵令嬢の捨て台詞に関係するものなのは、確かな様です。
あの後授業の合間の休憩時間にマルセルの教室を訪ね放課後の件を話すと、マルセルはフィーアさんの事で調べたい事があるから夜に私の家を訪ねてくれることになりました。
マルセルに迷惑を掛けてしまい申し訳無い気持ちと、一緒に帰ることが出来ない寂しさがありますがしかたありません。というよりも、私がマルセルに家の事で迷惑を掛けているのですから、我儘を言える立場ではありません。
迷惑をかけたお詫びにマルセルを今日の夕食に招待しましたが、この程度本当はお詫びになんてなりません。
昼休みの件でもやもやし、授業を受けながらビビアナにどういう風に話をしようか考えていたお陰で、午後の授業は上の空でしたが、得意な科目なので後日頑張ろうと思います。
「久しぶりにアニカと二人でお話出来るのは嬉しいわ。さあ、行きましょう」
「今日はクランク様いらっしゃらないのね」
にこやかに私に返事をするビビアナと連れ立って教室の外に出ようとしたら、またあの男爵令嬢にからまれました。殆ど話をしたことが無い方だったというのに、いつの間にか毎日絡まれる様になっているのは困りものです。
「とうとう婚約者に見捨てられたのね」
無作法者にちらりと視線を向けた後、ビビアナが無視して歩みを進めるので私も一緒に無視して歩き出しました。
「ちょ、なんで無視するのよっ! ドライスさん失礼ではなくてっ!」
失礼なのはどちらだろうと思いながら、にこやかに振り返ると「付き合ってあげる必要ないわ」というビビアナの呟きが隣から聞こえました。
「私に向けて話していたのね。気が付かずにごめんなさいね」
最近しつこく絡んでくる彼女はベデネ男爵家の次女ですが、私は名前を呼んだりはしません。
会話中格下相手の家名を呼ぶ、名前を呼ぶというのはそれなりの仲でなければしないのです。
それがこの国の貴族女性のしきたりです。
他国の様に爵位が下の人間から上位貴族に声を掛けてはいけない等の決まりはありませんが、家名すら呼んで貰えないというのは親しく付き合うつもりが無いと相手に言っているのと同じなのです。
「婚約者に見捨てられたなんて、あなた以外に誰がいるのよ」
「だって、私と婚約者の仲はこの上なく良好ですもの。私のことだなんて思わないわ」
ねえ、とビビアナに顔を向けると、彼女はにっこりと頷いてくれました。
「でも今日は迎えに来ていないじゃない」
「今日はビビアナと用事があるからよ。マルセルとは夕食を一緒にする約束をしているけれど、それの何が気になるのかしら?」
人差し指を頬に当てわざと小首を大袈裟に傾げながら聞けば、不愉快そうに歪んだ顔で「そんな余裕も今日までよ。自分で欲しがり女狐を近付けたお馬鹿さん。ふんっ!」と言い捨てて去っていきました。
「あれ、何かしら?」
わけが分からずビビアナに話を向けると、困った様な顔でビビアナは私の腕を取りました。
「アニカにはもう少し証拠を集めてから話すつもりだったのだけれど、馬車の中で話すわ。驚かないで聞いてね」
「え、ええ」
証拠を集めてというなら、わざわざビビアナは私の為に何かをしてくれていたのでしょう。
それが何なのか聞くのが怖いですがベデネ男爵令嬢の捨て台詞に関係するものなのは、確かな様です。
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