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マルセルとのお茶会

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「マルセルが今日来てくれたお陰よ。ありがとう」
「僕が役に立ったかどうか自信がないけれど」

 お兄様の酷すぎる行いに二人で呆れながらも助言して、もうこれは素直に謝るしかないと決めたのは英断だったのか否か分かりませんが、疲れすぎてしまった私達はお兄様にフィーアさんに謝罪の手紙を送る様指示しました。

 今お兄様は一人自室でフィーアさんに向けて手紙を書いています。
 内容は率直に、私とマルセルの二人を見ていて自分がいかに酷い婚約者だったか自覚したという、情けない内容です。
 本当は私に言われたからですが、そう書かずに、私が入学して半年が経ちその間マルセルが王都の屋敷に出入りする機会が増えて気が付いた。そういう話にする様に言いました。
 
 今まで酷い婚約者だったのは、もう覆せない事実です。
 でもそれを自分から自覚し、改善したい。
 フィーアさんにも不満があるなら言って欲しい。
 フィーアさんを好きだから、結婚してフィーアさんを幸せにしたいし、二人で幸せになりたいから悪いところを直したいのだと、そう素直に言葉にすることで少しでもフィーアンさんの心に歩み寄りたい作戦です。

「お兄様は私の言葉なんて本気にしないもの。私が感情的になってしまうのが悪いのだけれど、お兄様は私はからかって遊べる玩具だと思っているところがあるのよ。幼い子供ではないのに」

 少し不機嫌になりながらそう言うと、マルセルは納得したのか笑みを浮かべながら紅茶を口にしました。
 
「お兄さんがアニカを可愛がっているのは間違いないんだし、そんな風に言わないであげて」
「でも、お兄様酷すぎます。あれではフィーアさんに愛想を尽かされても仕方ないかと」

 マルセルはマメ過ぎる程にマメな婚約者だと、理想的な婚約者の見本みたいな人なのだと今更ながらに私は自覚しました。
 愛想笑いに見えるのが悲しいとか、どこか壁があるように感じるとか、そんなの私の子供っぽい感情と不満でしかなかったのだと理解したのです。
 マルセルと上手くやっていけないかもしれない等という不安は、フィーアさんに比べたら贅沢の一言でしかなかったと思います。
 マルセルは私の気持ちに沿ってくれていますし、言葉にも態度にも表してくれているのです。
 これ以上何かを望むのは贅沢です。

「フィーアさんとは親しくお話したことがないのだけれど、お兄さんをどう思っているのかな」
「そうですね。嫌いではないとは思います。妹の欲目の様な気もしますが。婚約破棄が出来ないからと諦めているわけではないと」
「それを妹の欲目と思うのはどうなのかな」
「ですが、兄相手ですから」

 フィーアさんが過去、私に対する兄の態度に驚いていたのは事実です。
 当時お母様と二人で慰めたのは、辛い記憶です。

「私のお友達内での判断になりますが、男性の兄弟しかいない家の子はとても箱入りで繊細に育つか、男勝りに育つかのほぼ二択かと思うのです。それでフィーアさんは前者かと」
「ああ、そういう感じなのか。それではお兄さん相手は難しいね」

 苦笑いするマルセルの後ろで、メイドたちが同じ表情をするのを見て私はため息とともに紅茶を飲みこんだのでした。
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