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甘い展開にはなりません
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「分かった、分かったよ。俺が褒められる婚約者じゃないのは理解したさ。だけどさあ、これからどうやったらいいんだよ」
どうしてお兄様はこんなに口が悪いのでしょうか。
学校を卒業してから友人関係が変わったとも聞いていませんが、学生時代もこんなに口が悪かったのでしょうか。
「お兄様、フィーアさんの前でもそんな話し方をされているのですか?」
「何か問題があんのか?」
何か問題がと首を傾げるお兄様に、私はため息しか出ません。
何かと私をからかうお兄様が苦手で、私はなるべくお兄様と二人きりにならない様に屋敷の中で過ごしていました。
私には乱暴な言い方をするお兄様も、お父様達と一緒ならここまで酷くはありません。
お兄様は学校に通うため今までずっと王都の屋敷で暮らしていて、長期の休暇以外は領地に戻ってきませんでした。
逆に私は今年学校に入るまではずっと領地に暮らしていて、王都に来る時はお母様が一緒でしたからこういうお兄様の姿を知らなかったのです。
「問題がないと思うお兄様がどうかしている様に思います」
この姿をお父様達はご存じなのでしょうか。
執事が記録していた贈り物の内容はお父様もお母様もご存じの筈ですが、さすがにこれがすべてだとは思っていなかったのではないかと思います。
これがすべてだと知っていて放置している両親ではないと、思いたいです。
「何が悪いんだ?」
本気で分からない様子のお兄様に呆れた私は、マルセルの方に視線を向けましたが彼も困っている様に見えました。
性格が悪いと思いますが、困っているマルセルを見て私と同じ感覚なのだと安心してしまいました。
「お兄様が問題だと感じていないところが問題だと、私は思います。マルセルはどう?」
「そうだね。僕はフィーア嬢のご家族とは親しいわけでは無いから、男爵としかお会いしたことがないけれど。あの方はとても穏やかだし丁寧な話し方をされる人だった様に思うよ。あの男爵に育てられたのだから、フィーア嬢は乱暴な話し方には慣れていないのではないかな」
「そうよね。私もそう思うわ」
フィーアさんのご家族は皆さん穏やかで、口調も丁寧です。
家族と他人への対応の差はあるかもしれませんが、お兄様の様に乱暴な口調で婚約者とは過ごさないでしょうことは想像が出来ます。
フィーアさんのお兄様方は彼女をとても大事にしていますし、きっと同じように自分の婚約者にも接しているだろうからです。
「お義兄さんは、フィーアさんのお兄さん達とは交流がありますか」
「ん? いいや。おやじはフィーアの両親と付き合いがあるが、俺は個人的には付き合いがないな」
お兄様の話を聞いて、ぐらりと視界が揺れました。
本当にお兄様はフィーアさんと結婚する気があるのでしょうか。
フィーアさんの事も心配ですが、お兄様が領主になった時フィーアさんのご実家である男爵家と上手くお付き合いが出来るのか不安になってきました。
領地近くの貴族との結婚は、お互いの領地で何かあった時に助け合うという意味もあるというのに何故お兄様は将来を考えていないかの様な行動ばかりしているのでしょうか。
「フィーアさんのお兄様達は全員領地にいらっしゃるのかしら」
「一番上はおやじさんに領地経営の指導を受けているからそうだろうが、後は知らないな」
ぐらぐらと、お兄様の返事を聞くたびに視界が揺れている気がします。
お兄様は本当にフィーアさんが好きなのでしょうか。
「お義兄さん、失礼を承知で伺いますが本当に婚約者のフィーア嬢の事はお好きなのですよね」
マルセルが勇気ある質問をお兄様に投げかけました。
私は思わずマルセルの手を握り、じいいっとお兄様のお顔を凝視しました。
「そんなの当たり前だろ。だからお前たちに相談してるんだよ」
自信を持って答えるお兄様は、全く格好よくありませんでした。
どうしてお兄様はこんなに口が悪いのでしょうか。
学校を卒業してから友人関係が変わったとも聞いていませんが、学生時代もこんなに口が悪かったのでしょうか。
「お兄様、フィーアさんの前でもそんな話し方をされているのですか?」
「何か問題があんのか?」
何か問題がと首を傾げるお兄様に、私はため息しか出ません。
何かと私をからかうお兄様が苦手で、私はなるべくお兄様と二人きりにならない様に屋敷の中で過ごしていました。
私には乱暴な言い方をするお兄様も、お父様達と一緒ならここまで酷くはありません。
お兄様は学校に通うため今までずっと王都の屋敷で暮らしていて、長期の休暇以外は領地に戻ってきませんでした。
逆に私は今年学校に入るまではずっと領地に暮らしていて、王都に来る時はお母様が一緒でしたからこういうお兄様の姿を知らなかったのです。
「問題がないと思うお兄様がどうかしている様に思います」
この姿をお父様達はご存じなのでしょうか。
執事が記録していた贈り物の内容はお父様もお母様もご存じの筈ですが、さすがにこれがすべてだとは思っていなかったのではないかと思います。
これがすべてだと知っていて放置している両親ではないと、思いたいです。
「何が悪いんだ?」
本気で分からない様子のお兄様に呆れた私は、マルセルの方に視線を向けましたが彼も困っている様に見えました。
性格が悪いと思いますが、困っているマルセルを見て私と同じ感覚なのだと安心してしまいました。
「お兄様が問題だと感じていないところが問題だと、私は思います。マルセルはどう?」
「そうだね。僕はフィーア嬢のご家族とは親しいわけでは無いから、男爵としかお会いしたことがないけれど。あの方はとても穏やかだし丁寧な話し方をされる人だった様に思うよ。あの男爵に育てられたのだから、フィーア嬢は乱暴な話し方には慣れていないのではないかな」
「そうよね。私もそう思うわ」
フィーアさんのご家族は皆さん穏やかで、口調も丁寧です。
家族と他人への対応の差はあるかもしれませんが、お兄様の様に乱暴な口調で婚約者とは過ごさないでしょうことは想像が出来ます。
フィーアさんのお兄様方は彼女をとても大事にしていますし、きっと同じように自分の婚約者にも接しているだろうからです。
「お義兄さんは、フィーアさんのお兄さん達とは交流がありますか」
「ん? いいや。おやじはフィーアの両親と付き合いがあるが、俺は個人的には付き合いがないな」
お兄様の話を聞いて、ぐらりと視界が揺れました。
本当にお兄様はフィーアさんと結婚する気があるのでしょうか。
フィーアさんの事も心配ですが、お兄様が領主になった時フィーアさんのご実家である男爵家と上手くお付き合いが出来るのか不安になってきました。
領地近くの貴族との結婚は、お互いの領地で何かあった時に助け合うという意味もあるというのに何故お兄様は将来を考えていないかの様な行動ばかりしているのでしょうか。
「フィーアさんのお兄様達は全員領地にいらっしゃるのかしら」
「一番上はおやじさんに領地経営の指導を受けているからそうだろうが、後は知らないな」
ぐらぐらと、お兄様の返事を聞くたびに視界が揺れている気がします。
お兄様は本当にフィーアさんが好きなのでしょうか。
「お義兄さん、失礼を承知で伺いますが本当に婚約者のフィーア嬢の事はお好きなのですよね」
マルセルが勇気ある質問をお兄様に投げかけました。
私は思わずマルセルの手を握り、じいいっとお兄様のお顔を凝視しました。
「そんなの当たり前だろ。だからお前たちに相談してるんだよ」
自信を持って答えるお兄様は、全く格好よくありませんでした。
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