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放課後の教室で

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「アニカ、かなり待たせてしまってごめん」
「そんなに待っていないわ。大丈夫よ」

 放課後、ビビアナと勉強をしながらマルセルを教室で待っていました。
 私が帰らずにビビアナと一緒に教室に残っていたせいか、さっき私に色々言ってきた男爵家の令嬢も彼女の友人達と一緒に残っていました。

「クランク様こんにちは」
「こんにちは、アニカの為に残ってくれていたのかな。ありがとう」
「いいえ、とんでもないことでございます。では私は失礼しますね。アニカまた明日」
「ビビアナ、ありがとう。気をつけて帰ってね」

 手を振って教室を出て行くビビアナを見送ると、マルセルはビビアナが座っていた椅子に腰を下ろし机の上に出していた教科書を覗き込みました。

「勉強していたの?」
「ええ。もうすぐ試験があるでしょ」
「ああ、そうか。アニカは苦手な科目があるの?」
「経営学は苦手ね。あと歴史もちょっと」

 領地経営の補佐程度は出来る様に、帳簿付けや領地の経営の為の法律等を学ぶ経営学という科目があります。
 帳簿付け等は良いのですが、法律関係は暗記だけで精一杯です。

「そうか、今はどの辺りを習っているのかな」
「マルセルはこういうの得意よね」
「そりゃ、出来なきゃ将来困るのは自分だからね。必死に覚えたよ」

 当り前だと言わんばかりのマルセルに尊敬しながら、私も頑張ろうと密かに心に誓います。
 将来マルセルが領主になった時、私もお仕事のお手伝いが出来るのが理想です。
 マルセルのご両親はそういう風にされているのですから、同じ様になりたいと思っています。

「私だって頑張って覚えるわ」
「じゃあ、明日から放課後図書館で勉強しようか」
「え、いいの?」
「去年やった内容だし、その程度なら僕だって教えられるよ。あ、ここ違っているね」

 話しをしながらマルセルは、私のノートにサラサラと回答を書いていきます。
 僕だってと言いながら、マルセルの試験成績はいつも上位です。確か前回の試験は五位だったと思います。
 私だって頑張っていますが二十位内に入るのが精一杯です。

「嬉しいけれど、マルセルの勉強時間を奪ってしまうのは申し訳ないわ」
「一緒に僕も勉強するから大丈夫だよ。家にいるとついケーテと遊んでしまうから、図書館の方が集中出来る」
「ケーテちゃん? マルセルが遊んであげるの?」
「そう。最近ブランコがお気に入りでね。日が暮れるまでブランコ遊びに付き合うはめになる」
「ケーテちゃんにずっと付き合ってあげるなんて、マルセル優しいのね」

 やっぱりケーテちゃんのお話をしている時のマルセルの顔は、いつもよりも素に近い気がします。
 こっちの笑顔の方が好きだと思うのですが、普通に私と会話している時はこの笑顔にならないのがなんだか悔しいです。
 私、幼いケーテちゃんに妬いているのかもしれません。
 
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