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私はお姉様にはなれないの1(スィートピー視点)

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 お姉様が倒れた。
 お兄様の胸に倒れ込むようにして、動かなくなった。
 シオン殿下もお兄様も何か言い合っているけれど、何を話してるのか分からない。

 誰が誰の子供?
 お父様?
 分からない。

 お姉様は動かなくて、お兄様はシオン殿下を睨みつけながらお姉様の背中を撫でている。
 優しい手付きに私は胸の奥に何かが渦巻いて気分が悪くなる。

「お前はなんていうことを!」

 突然頬が熱くなって、気がつくと床に倒れていた。
 シオン殿下はお姉様の体に触れようとして、お兄様に阻止されている。
 じゃあ、私は誰に?

「スィートピー、恥知らずな真似をしたな」

 この人は誰。
 私を見つめるこの顔はお父様に見えるけれど全然違う人に思うくらいに恐ろしい顔をしている。
 この人は誰。

「お、お父……様」
「お前みたいな恥知らずな娘を持った覚えはないっ。姉の婚約者に手を出しただけでなく、子まで出来ただとっ。お前の様な愚かな恥知らずなど見たことがない」

 私が悪い?
 お姉様はふざけてるのかまだ動こうとしない。

「お姉様、ふざけないで! そもそもシオン殿下の心を掴めなかったあなたが悪いんでしょ。私が悪いんじゃないわよ」
「スィートピー、お前のせいで命を落とした姉を侮辱するのはよせ、可哀想なスクテラリア。愚かな妹のせいで命を落とすことになるなんて」

 命を落とした?
 ふざてけいるのじゃなく、本当にお姉様は命を落としたの?

「私が悪いんじゃないわよ。騙される方が悪いのよ」
「騙す?」
「子供なんかいないわ、シオン殿下とは確かにそういうことがあったけれど嘘よ。そうすれば私が婚約者になれると思ったから嘘をついたの。シオン殿下もそうしていいって言ってくれたの。私は選ばれたのよ、シオン殿下に」

 私を見ようともせずに取り乱したままのシオン殿下は、何とかしてお姉様に触れようと手を伸ばしている。
 今まで見向きもしなかったくせに、今更何をしているのかしら。
 泣き喚いてみっともない。
 やっぱりこんな奴嫌だわ。
 元々好きじゃなかったけど、やっぱり嫌だわ。
 こんな奴と何度も肌を合わせるなんて出来ないわ。

「嘘だと、スィートピー。お前は嘘で姉を追い詰めて、それで姉の命を奪って平気でいるのか」
「平気じゃないわ。十分驚いているわ。お姉様はそんなこと一言も言わなかったもの。教えられたらお姉様は側妃にして差し上げたのに。痛っ」

 また私の頬が熱くなり、お父様に打たれたのだと今度ははっきりと分かりました。

「何故お姉様ばかり贔屓するのですか、私がシオン殿下の心を射止めたのですからそれで良いではありませんか。お姉様に魅力がないのが悪いんです。私が悪いんじゃありません。悪いのはお姉様よ! いやっ、お父様止めて! 痛いわ、なんで打つの!」
「お前はなんて恥知らずな娘なんだ。あの時お前が不憫だと、子供に罪はないからと引き取ったのが悪かった。お前のような娘に育つと分かっていれば、あの時陛下が言う通りお前を母親と一緒に殺したいものを」

 え、お父様は何を言っているの。

「お父様」
「父などと呼ぶな、穢らわしい」
「いやっ」

 今度は蹴り飛ばされて、私はよろけてソファーに背中をぶつけてしまいました。
 でも助けてくれる人は誰もいません。

「なぜ陛下が? 母親って」

 母親とは誰なんでしょう。
 お母様ではないの? どうして陛下が出てくるの。

「陛下の側妃がお前の母親だ。子が出来ないからと不義で子を作り産んで、愚かにも陛下の子だと」
「え、側妃は若くて私とそう年が違わない」
「お前を産んですぐに陛下から死を賜った。当然だろう不義を働いた上王家の子だと謀ったんだ。陛下はお前も罪は同じとしていたが、生まれたばかりのお前を殺すのは忍びないからお前を家で引き取ったに過ぎない」

 そんな、そんな話。
 私は本当に公爵家の、この家の娘では無かったというのでしょうか。
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