20 / 25
私はお姉様にはなれないの1(スィートピー視点)
しおりを挟む
お姉様が倒れた。
お兄様の胸に倒れ込むようにして、動かなくなった。
シオン殿下もお兄様も何か言い合っているけれど、何を話してるのか分からない。
誰が誰の子供?
お父様?
分からない。
お姉様は動かなくて、お兄様はシオン殿下を睨みつけながらお姉様の背中を撫でている。
優しい手付きに私は胸の奥に何かが渦巻いて気分が悪くなる。
「お前はなんていうことを!」
突然頬が熱くなって、気がつくと床に倒れていた。
シオン殿下はお姉様の体に触れようとして、お兄様に阻止されている。
じゃあ、私は誰に?
「スィートピー、恥知らずな真似をしたな」
この人は誰。
私を見つめるこの顔はお父様に見えるけれど全然違う人に思うくらいに恐ろしい顔をしている。
この人は誰。
「お、お父……様」
「お前みたいな恥知らずな娘を持った覚えはないっ。姉の婚約者に手を出しただけでなく、子まで出来ただとっ。お前の様な愚かな恥知らずなど見たことがない」
私が悪い?
お姉様はふざけてるのかまだ動こうとしない。
「お姉様、ふざけないで! そもそもシオン殿下の心を掴めなかったあなたが悪いんでしょ。私が悪いんじゃないわよ」
「スィートピー、お前のせいで命を落とした姉を侮辱するのはよせ、可哀想なスクテラリア。愚かな妹のせいで命を落とすことになるなんて」
命を落とした?
ふざてけいるのじゃなく、本当にお姉様は命を落としたの?
「私が悪いんじゃないわよ。騙される方が悪いのよ」
「騙す?」
「子供なんかいないわ、シオン殿下とは確かにそういうことがあったけれど嘘よ。そうすれば私が婚約者になれると思ったから嘘をついたの。シオン殿下もそうしていいって言ってくれたの。私は選ばれたのよ、シオン殿下に」
私を見ようともせずに取り乱したままのシオン殿下は、何とかしてお姉様に触れようと手を伸ばしている。
今まで見向きもしなかったくせに、今更何をしているのかしら。
泣き喚いてみっともない。
やっぱりこんな奴嫌だわ。
元々好きじゃなかったけど、やっぱり嫌だわ。
こんな奴と何度も肌を合わせるなんて出来ないわ。
「嘘だと、スィートピー。お前は嘘で姉を追い詰めて、それで姉の命を奪って平気でいるのか」
「平気じゃないわ。十分驚いているわ。お姉様はそんなこと一言も言わなかったもの。教えられたらお姉様は側妃にして差し上げたのに。痛っ」
また私の頬が熱くなり、お父様に打たれたのだと今度ははっきりと分かりました。
「何故お姉様ばかり贔屓するのですか、私がシオン殿下の心を射止めたのですからそれで良いではありませんか。お姉様に魅力がないのが悪いんです。私が悪いんじゃありません。悪いのはお姉様よ! いやっ、お父様止めて! 痛いわ、なんで打つの!」
「お前はなんて恥知らずな娘なんだ。あの時お前が不憫だと、子供に罪はないからと引き取ったのが悪かった。お前のような娘に育つと分かっていれば、あの時陛下が言う通りお前を母親と一緒に殺したいものを」
え、お父様は何を言っているの。
「お父様」
「父などと呼ぶな、穢らわしい」
「いやっ」
今度は蹴り飛ばされて、私はよろけてソファーに背中をぶつけてしまいました。
でも助けてくれる人は誰もいません。
「なぜ陛下が? 母親って」
母親とは誰なんでしょう。
お母様ではないの? どうして陛下が出てくるの。
「陛下の側妃がお前の母親だ。子が出来ないからと不義で子を作り産んで、愚かにも陛下の子だと」
「え、側妃は若くて私とそう年が違わない」
「お前を産んですぐに陛下から死を賜った。当然だろう不義を働いた上王家の子だと謀ったんだ。陛下はお前も罪は同じとしていたが、生まれたばかりのお前を殺すのは忍びないからお前を家で引き取ったに過ぎない」
そんな、そんな話。
私は本当に公爵家の、この家の娘では無かったというのでしょうか。
お兄様の胸に倒れ込むようにして、動かなくなった。
シオン殿下もお兄様も何か言い合っているけれど、何を話してるのか分からない。
誰が誰の子供?
お父様?
分からない。
お姉様は動かなくて、お兄様はシオン殿下を睨みつけながらお姉様の背中を撫でている。
優しい手付きに私は胸の奥に何かが渦巻いて気分が悪くなる。
「お前はなんていうことを!」
突然頬が熱くなって、気がつくと床に倒れていた。
シオン殿下はお姉様の体に触れようとして、お兄様に阻止されている。
じゃあ、私は誰に?
「スィートピー、恥知らずな真似をしたな」
この人は誰。
私を見つめるこの顔はお父様に見えるけれど全然違う人に思うくらいに恐ろしい顔をしている。
この人は誰。
「お、お父……様」
「お前みたいな恥知らずな娘を持った覚えはないっ。姉の婚約者に手を出しただけでなく、子まで出来ただとっ。お前の様な愚かな恥知らずなど見たことがない」
私が悪い?
お姉様はふざけてるのかまだ動こうとしない。
「お姉様、ふざけないで! そもそもシオン殿下の心を掴めなかったあなたが悪いんでしょ。私が悪いんじゃないわよ」
「スィートピー、お前のせいで命を落とした姉を侮辱するのはよせ、可哀想なスクテラリア。愚かな妹のせいで命を落とすことになるなんて」
命を落とした?
ふざてけいるのじゃなく、本当にお姉様は命を落としたの?
「私が悪いんじゃないわよ。騙される方が悪いのよ」
「騙す?」
「子供なんかいないわ、シオン殿下とは確かにそういうことがあったけれど嘘よ。そうすれば私が婚約者になれると思ったから嘘をついたの。シオン殿下もそうしていいって言ってくれたの。私は選ばれたのよ、シオン殿下に」
私を見ようともせずに取り乱したままのシオン殿下は、何とかしてお姉様に触れようと手を伸ばしている。
今まで見向きもしなかったくせに、今更何をしているのかしら。
泣き喚いてみっともない。
やっぱりこんな奴嫌だわ。
元々好きじゃなかったけど、やっぱり嫌だわ。
こんな奴と何度も肌を合わせるなんて出来ないわ。
「嘘だと、スィートピー。お前は嘘で姉を追い詰めて、それで姉の命を奪って平気でいるのか」
「平気じゃないわ。十分驚いているわ。お姉様はそんなこと一言も言わなかったもの。教えられたらお姉様は側妃にして差し上げたのに。痛っ」
また私の頬が熱くなり、お父様に打たれたのだと今度ははっきりと分かりました。
「何故お姉様ばかり贔屓するのですか、私がシオン殿下の心を射止めたのですからそれで良いではありませんか。お姉様に魅力がないのが悪いんです。私が悪いんじゃありません。悪いのはお姉様よ! いやっ、お父様止めて! 痛いわ、なんで打つの!」
「お前はなんて恥知らずな娘なんだ。あの時お前が不憫だと、子供に罪はないからと引き取ったのが悪かった。お前のような娘に育つと分かっていれば、あの時陛下が言う通りお前を母親と一緒に殺したいものを」
え、お父様は何を言っているの。
「お父様」
「父などと呼ぶな、穢らわしい」
「いやっ」
今度は蹴り飛ばされて、私はよろけてソファーに背中をぶつけてしまいました。
でも助けてくれる人は誰もいません。
「なぜ陛下が? 母親って」
母親とは誰なんでしょう。
お母様ではないの? どうして陛下が出てくるの。
「陛下の側妃がお前の母親だ。子が出来ないからと不義で子を作り産んで、愚かにも陛下の子だと」
「え、側妃は若くて私とそう年が違わない」
「お前を産んですぐに陛下から死を賜った。当然だろう不義を働いた上王家の子だと謀ったんだ。陛下はお前も罪は同じとしていたが、生まれたばかりのお前を殺すのは忍びないからお前を家で引き取ったに過ぎない」
そんな、そんな話。
私は本当に公爵家の、この家の娘では無かったというのでしょうか。
84
お気に入りに追加
4,268
あなたにおすすめの小説
【完結】ええと?あなたはどなたでしたか?
ここ
恋愛
アリサの婚約者ミゲルは、婚約のときから、平凡なアリサが気に入らなかった。
アリサはそれに気づいていたが、政略結婚に逆らえない。
15歳と16歳になった2人。ミゲルには恋人ができていた。マーシャという綺麗な令嬢だ。邪魔なアリサにこわい思いをさせて、婚約解消をねらうが、事態は思わぬ方向に。
【完結】婚約破棄はしたいけれど傍にいてほしいなんて言われましても、私は貴方の母親ではありません
すだもみぢ
恋愛
「彼女は私のことを好きなんだって。だから君とは婚約解消しようと思う」
他の女性に言い寄られて舞い上がり、10年続いた婚約を一方的に解消してきた王太子。
今まで婚約者だと思うからこそ、彼のフォローもアドバイスもしていたけれど、まだそれを当たり前のように求めてくる彼に驚けば。
「君とは結婚しないけれど、ずっと私の側にいて助けてくれるんだろう?」
貴方は私を母親だとでも思っているのでしょうか。正直気持ち悪いんですけれど。
王妃様も「あの子のためを思って我慢して」としか言わないし。
あんな男となんてもう結婚したくないから我慢するのも嫌だし、非難されるのもイヤ。なんとかうまいこと立ち回って幸せになるんだから!
悪役令嬢は処刑されないように家出しました。
克全
恋愛
「アルファポリス」と「小説家になろう」にも投稿しています。
サンディランズ公爵家令嬢ルシアは毎夜悪夢にうなされた。婚約者のダニエル王太子に裏切られて処刑される夢。実の兄ディビッドが聖女マルティナを愛するあまり、歓心を買うために自分を処刑する夢。兄の友人である次期左将軍マルティンや次期右将軍ディエゴまでが、聖女マルティナを巡って私を陥れて処刑する。どれほど努力し、どれほど正直に生き、どれほど関係を断とうとしても処刑されるのだ。
【完結】消えた姉の婚約者と結婚しました。愛し愛されたかったけどどうやら無理みたいです
金峯蓮華
恋愛
侯爵令嬢のベアトリーチェは消えた姉の代わりに、姉の婚約者だった公爵家の子息ランスロットと結婚した。
夫とは愛し愛されたいと夢みていたベアトリーチェだったが、夫を見ていてやっぱり無理かもと思いはじめている。
ベアトリーチェはランスロットと愛し愛される夫婦になることを諦め、楽しい次期公爵夫人生活を過ごそうと決めた。
一方夫のランスロットは……。
作者の頭の中の異世界が舞台の緩い設定のお話です。
ご都合主義です。
以前公開していた『政略結婚して次期侯爵夫人になりました。愛し愛されたかったのにどうやら無理みたいです』の改訂版です。少し内容を変更して書き直しています。前のを読んだ方にも楽しんでいただけると嬉しいです。
人の顔色ばかり気にしていた私はもういません
風見ゆうみ
恋愛
伯爵家の次女であるリネ・ティファスには眉目秀麗な婚約者がいる。
私の婚約者である侯爵令息のデイリ・シンス様は、未亡人になって実家に帰ってきた私の姉をいつだって優先する。
彼の姉でなく、私の姉なのにだ。
両親も姉を溺愛して、姉を優先させる。
そんなある日、デイリ様は彼の友人が主催する個人的なパーティーで私に婚約破棄を申し出てきた。
寄り添うデイリ様とお姉様。
幸せそうな二人を見た私は、涙をこらえて笑顔で婚約破棄を受け入れた。
その日から、学園では馬鹿にされ悪口を言われるようになる。
そんな私を助けてくれたのは、ティファス家やシンス家の商売上の得意先でもあるニーソン公爵家の嫡男、エディ様だった。
※マイナス思考のヒロインが周りの優しさに触れて少しずつ強くなっていくお話です。
※相変わらず設定ゆるゆるのご都合主義です。
※誤字脱字、気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません!
【完結】唯一の味方だと思っていた婚約者に裏切られました
紫崎 藍華
恋愛
両親に愛されないサンドラは婚約者ができたことで救われた。
ところが妹のリザが婚約者を譲るよう言ってきたのだ。
困ったサンドラは両親に相談するが、両親はリザの味方だった。
頼れる人は婚約者しかいない。
しかし婚約者は意外な提案をしてきた。
王太子妃候補、のち……
ざっく
恋愛
王太子妃候補として三年間学んできたが、決定されるその日に、王太子本人からそのつもりはないと拒否されてしまう。王太子妃になれなければ、嫁き遅れとなってしまうシーラは言ったーーー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる