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善き神が変わる時
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善き神は、王の為自らを差し出した王妃の心を好ましく思いました。
王の自らの命を捨ててまで民を守ろうとした姿もを素晴らしいと感じていたものの、その王を救う為自分を差し出した王妃の心はとても美しいと感じたのです。
王妃は心から王を愛していましたし、それと同じ位民を愛していました。
王と民の幸せが王妃の幸せなのだと、そのためなら自分が不幸になる事位何でもないのだと信じていたのです。
不思議な事に、国が救われたのは王と王妃の願いに応えた神の力だと民達は理由も無く理解していました。
善き神の姿は見えなくとも、神はすぐ側にいて自分達を見守ってくれている。
大量の虫の発生により作物が食われ、草木が枯れていったけれど、それでも自分達は今神の力で生きている。
何故もっと早く助けてくれなかったのか等、考える者は無く。
神を信じ祈るものが増え、そうしていく内に善き神の力は再び強くなっていきました。
善き神は王妃の宮の奥庭に作られた神殿に暮らし、王妃を妻として日々を過ごしていきました。
善き神の姿は全身白く瞳も何もかも真っ白でしたがそれは実体では無く王妃に触れる事は出来ませんでした。
ですが、美しい王妃の側にいる内に彼女に触れたくなってしまった善き神は、人の姿を取り王妃の本当の夫として過ごす様になりました。
それが王妃の心を壊すとは思いもせずに、ただ美しい王妃の本当の夫になれた事が嬉しくて善き神は幸せを感じていたのです。
王妃の夫として過ごす毎日は、ただ人を眺めていた日々とは違い楽しく幸せでした。
けれどその幸せを感じていたのは、善き神だけだったのです。
ある日、人の姿を解いた善き神の髪の一房が真っ黒に変わっていました。
ある日、人の姿を解いた善き神の指先が真っ黒に変わっていました。
何日も何日も掛けて善き神の姿は白から黒へ変化していき、その内に身体が白と黒の二つに分かれてしまったのです。
白き姿の善き神は、王宮を出て民達が自ら建設した神殿の中に飛んでいきました。
王宮に暮らすのが何故か辛く感じ、黒くなり別れてしまった半身の側にいるのも辛かったからです。
神殿の奥に届くのは民達の純粋な祈りの声のみで、そこで漸く白き姿の善き神は安堵したのです。
黒き姿の善き神は、自分の姿全部が夜の闇よりも黒い姿になっていると気が付きました。
その黒は、王妃の嘆きから出来ていると気が付きました。
善き神の妻となった王妃は、王と閨を共にすることが無くなりました。
王妃は息子を一人だけ産んでいて、それは次の王となるのだと期待され大きくなっていきました。
ですが、虫による悲劇を覚えている臣下達は一人しかいない子の存在に不安を感じ王に側妃を娶る様願い出たのです。
仲が良かった王と王妃は閨を共にしなくなった為、子供が出来る可能性がなくなってしまったのですからそれは仕方がない事でした。
たった一人の王子が死んでしまえば、血筋が断たれてしまうのです。
王妃と閨を共に出来ない理由を話せない王は、臣下達が言うがままに側妃を娶り子を産ませました。
王妃には何も話さずに、側妃は王宮に入り、王は王妃以外を愛した為に王妃と閨を共にしなくなり寵愛の相手を側妃とし子供を産ませたのだという噂だけが王妃の耳に届いたのです。
愛する王の為、王妃は愛してもいない善き神の妻になったというのに。
王は王妃を忘れて違う女を寵愛している。
その噂は王妃の心を簡単に壊しました。
それでも王を思い続け、王と離れる原因になった善き神を恨みました。
何も知らない善き神は、王妃を妻として大切にしながら王妃からの恨みをその身に受け続けました。
恨みはやがて、善き神を悪へと変えいつしか黒き善き神は魔神へと変化していました。
善き神は、人を長い時間眺めて過ごしてはいたものの、人の心の変化や妬みを理解出来なかったのです。
人はその場でのみ感謝しても、その感謝は続かずに、自分が不幸になると感謝した相手を簡単に恨む様になるなど善き神は想像もしなかったのです。
そして、王妃は感謝の心すら持たず、王の命乞いをしたに過ぎなかったのですから、善き神に寄り添おうなど元々思ってすらいなかったのですから、自分の辛さを善き神のせいにすることに躊躇いなど無かったのです。
魔神となった善き神の心は、いつしか闇に呑まれていました。
神殿の奥に逃げた白き善き神は、魔神に変化した自分の半身を哀れだと嘆きその原因となった王家に呪いを掛けました。
王は代替わりしても、今の王妃が一人息子を産んですぐに魔神の妻となったのと同じ様に王妃は魔神の妻になる。
王は王妃を魔神に差し出した後は、側妃を娶るが側妃から子は生まれない。
王と王妃の間には、必ず息子が一人生まれ病気も知らず健康に育ち次の王となる。王妃と魔神の間には女の子のみが生まれるが、それはすべて王の子だと周囲には認識される。
王が王妃を魔神に差し出すことを守れば、魔神は王家の血筋を守り国を守り富ませる。
けれど王も王妃も幸せにはなれない。
これは契約と言う名の呪い、だから幸せにはなれない。
何代も何代も、国は富み大きくなっても、魔神との契約は続き、魔神の血を受け継いだ子はこの国に、他国に増えていく。
王妃を妻としても孤独で不幸な魔神を一人にしない為に、妻に愛されることがなく恐れられる魔神が一人にならない為に、魔神の血を受けついだ子達は生まれた瞬間からすべてを理解し、魔神の悲しみを自分のものとして王家の血を恨み続ける。
それこそが、白き善き神が王に科した呪いだったのです。
王の自らの命を捨ててまで民を守ろうとした姿もを素晴らしいと感じていたものの、その王を救う為自分を差し出した王妃の心はとても美しいと感じたのです。
王妃は心から王を愛していましたし、それと同じ位民を愛していました。
王と民の幸せが王妃の幸せなのだと、そのためなら自分が不幸になる事位何でもないのだと信じていたのです。
不思議な事に、国が救われたのは王と王妃の願いに応えた神の力だと民達は理由も無く理解していました。
善き神の姿は見えなくとも、神はすぐ側にいて自分達を見守ってくれている。
大量の虫の発生により作物が食われ、草木が枯れていったけれど、それでも自分達は今神の力で生きている。
何故もっと早く助けてくれなかったのか等、考える者は無く。
神を信じ祈るものが増え、そうしていく内に善き神の力は再び強くなっていきました。
善き神は王妃の宮の奥庭に作られた神殿に暮らし、王妃を妻として日々を過ごしていきました。
善き神の姿は全身白く瞳も何もかも真っ白でしたがそれは実体では無く王妃に触れる事は出来ませんでした。
ですが、美しい王妃の側にいる内に彼女に触れたくなってしまった善き神は、人の姿を取り王妃の本当の夫として過ごす様になりました。
それが王妃の心を壊すとは思いもせずに、ただ美しい王妃の本当の夫になれた事が嬉しくて善き神は幸せを感じていたのです。
王妃の夫として過ごす毎日は、ただ人を眺めていた日々とは違い楽しく幸せでした。
けれどその幸せを感じていたのは、善き神だけだったのです。
ある日、人の姿を解いた善き神の髪の一房が真っ黒に変わっていました。
ある日、人の姿を解いた善き神の指先が真っ黒に変わっていました。
何日も何日も掛けて善き神の姿は白から黒へ変化していき、その内に身体が白と黒の二つに分かれてしまったのです。
白き姿の善き神は、王宮を出て民達が自ら建設した神殿の中に飛んでいきました。
王宮に暮らすのが何故か辛く感じ、黒くなり別れてしまった半身の側にいるのも辛かったからです。
神殿の奥に届くのは民達の純粋な祈りの声のみで、そこで漸く白き姿の善き神は安堵したのです。
黒き姿の善き神は、自分の姿全部が夜の闇よりも黒い姿になっていると気が付きました。
その黒は、王妃の嘆きから出来ていると気が付きました。
善き神の妻となった王妃は、王と閨を共にすることが無くなりました。
王妃は息子を一人だけ産んでいて、それは次の王となるのだと期待され大きくなっていきました。
ですが、虫による悲劇を覚えている臣下達は一人しかいない子の存在に不安を感じ王に側妃を娶る様願い出たのです。
仲が良かった王と王妃は閨を共にしなくなった為、子供が出来る可能性がなくなってしまったのですからそれは仕方がない事でした。
たった一人の王子が死んでしまえば、血筋が断たれてしまうのです。
王妃と閨を共に出来ない理由を話せない王は、臣下達が言うがままに側妃を娶り子を産ませました。
王妃には何も話さずに、側妃は王宮に入り、王は王妃以外を愛した為に王妃と閨を共にしなくなり寵愛の相手を側妃とし子供を産ませたのだという噂だけが王妃の耳に届いたのです。
愛する王の為、王妃は愛してもいない善き神の妻になったというのに。
王は王妃を忘れて違う女を寵愛している。
その噂は王妃の心を簡単に壊しました。
それでも王を思い続け、王と離れる原因になった善き神を恨みました。
何も知らない善き神は、王妃を妻として大切にしながら王妃からの恨みをその身に受け続けました。
恨みはやがて、善き神を悪へと変えいつしか黒き善き神は魔神へと変化していました。
善き神は、人を長い時間眺めて過ごしてはいたものの、人の心の変化や妬みを理解出来なかったのです。
人はその場でのみ感謝しても、その感謝は続かずに、自分が不幸になると感謝した相手を簡単に恨む様になるなど善き神は想像もしなかったのです。
そして、王妃は感謝の心すら持たず、王の命乞いをしたに過ぎなかったのですから、善き神に寄り添おうなど元々思ってすらいなかったのですから、自分の辛さを善き神のせいにすることに躊躇いなど無かったのです。
魔神となった善き神の心は、いつしか闇に呑まれていました。
神殿の奥に逃げた白き善き神は、魔神に変化した自分の半身を哀れだと嘆きその原因となった王家に呪いを掛けました。
王は代替わりしても、今の王妃が一人息子を産んですぐに魔神の妻となったのと同じ様に王妃は魔神の妻になる。
王は王妃を魔神に差し出した後は、側妃を娶るが側妃から子は生まれない。
王と王妃の間には、必ず息子が一人生まれ病気も知らず健康に育ち次の王となる。王妃と魔神の間には女の子のみが生まれるが、それはすべて王の子だと周囲には認識される。
王が王妃を魔神に差し出すことを守れば、魔神は王家の血筋を守り国を守り富ませる。
けれど王も王妃も幸せにはなれない。
これは契約と言う名の呪い、だから幸せにはなれない。
何代も何代も、国は富み大きくなっても、魔神との契約は続き、魔神の血を受け継いだ子はこの国に、他国に増えていく。
王妃を妻としても孤独で不幸な魔神を一人にしない為に、妻に愛されることがなく恐れられる魔神が一人にならない為に、魔神の血を受けついだ子達は生まれた瞬間からすべてを理解し、魔神の悲しみを自分のものとして王家の血を恨み続ける。
それこそが、白き善き神が王に科した呪いだったのです。
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