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1章 婚約破棄

009 聖なる魔力

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パーティー会場を後にして、先王陛下の自室へと招かれた私達バレンシア家。

王族との会談に馴れている父上と母上が緊張でガチガチになっているのを目の当たりにすると、やはり今の状況は普通ではないのだと実感させられる。何しろ50年前にこの国を…世界を救った3人が勢揃いしているのだ。

「何から話そう…いや、そんな事は決まっておったな…オーロラ=バレンシア嬢。この度は儂らの孫のレイスが大変申し訳ない事をした…レイスの祖父として、先代のティンバードール王国国王として、そして何より其方とレイスの婚約を取り決めた者として謝らせてもらいたい。本当にすまなかった…」

「貴女とレイスの婚約を決めたのはカイザルと私だったの…大人の事情で決まった婚約とは言え、貴女は本気でレイスを好きになってくれていたのね…前に城の中でレイスと一緒にいる貴女を見てすぐに分かったわ…それなのに本当にごめんなさい…」

「あ、頭を上げて下さい…殿下と私の婚約を決めたのは先王陛下とリリアン様だったのですね?」

私はてっきり婚約の事はシーシャル国王陛下が決めた事だと思っていた。普通王族や貴族の婚約については親同士が決める事だ。

「15年前だったかしら?バレンシア侯爵が初めての謁見にまだ歩ける様になったばかりの貴女を連れてきたのは」

「その時儂は既にシーシャルに王位を譲っていたが、亡くなった其方の祖父…前バレンシア侯爵とは共に魔物と戦った戦友でのぉ。戦友の孫を見ようと儂らも謁見に同席しておったんじゃ。その時一眼見て分かったよ。この子が『聖なる魔力』を持つ存在だとな」

聖なる魔力?初めて耳にする言葉だ。確かに私は魔法が使えるが、あくまで同年代で魔法が使える人間の平均的な魔法ばかりだ。特に優れている訳でも劣っている訳でも無い。

「聖なる魔力ですか?私は魔法についてはごく平凡で、魔法を教えて下さった先生からも特に何も言われた事はありません」

「それはそうでしょうね。普通の魔法使いに分かる筈はありません。でも私とカイザルはマリウス様の元で魔法を学んでいる時に一度だけ聖女様の姿を目にした事が有るの。その時と同じ魔力を貴女に感じた…今だって感じるわ。この感覚は直接聖女様の魔力を感じた人間にしか分からないと思うわ。だから貴女の魔法の先生も分からなかったのよ」

「ちょ…ちょっとまって下さい!?お二人は聖女様とお会いした事が有るのですか!?聖女様って確か何千年も前に魔物を封じる為にお亡くなりになったとばかり…」

「イーリアスが魔物を封じたのはそんなにの事では無いよ。あれは…12億1126万822年前の事だった。それにイーリアスは死んでなんかいない。まだ生きているよ」
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