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1章 婚約破棄

007 侮辱

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「きっ!?貴様ァ!?今何と言った!?賢者か何だか知らないが我がレイルデスク皇国の皇女殿下を侮辱するとは許されぬぞ!我が火炎魔法で焼き尽くしてくれる!出でよ炎…なっ!?何故魔法が使えぬ!?」

「だってここって魔法が使えない様に結界が張られてるもん。火炎魔法が使いたいの?手伝ってあげるよ。ほら、もう魔法が使える筈だから試してごらん?」

突如1人の貴族…恐らくはレイルデスク皇国の貴族だろう。がマリウス様を怒鳴りつけ、あろう事が攻撃魔法を唱えようとした。しかし怒りをぶつけられたマリウス様はどこ吹く風と言った調子だ。

「舐めおって…皇女殿下だけでなく皇国の火焔侯と呼ばれる私も愚弄するか!その命をもって詫びるが良い!出でよ!火焔竜!!」

皇国の火焔侯…その名前には聞き覚えが有る。皇国でも5本の指に入ると呼ばれる有名な魔法使いだ。彼の腕から放たれた炎が竜の形になりマリウス様へと襲い掛かる。

「なっ!?私の火焔竜が…掻き消された…だと…?」

「うーん…15点ってところかな?魔力量は悪く無いけど、何でワザワザ竜の形にするか意味分かんないし、何より僕1人を始末したいのにこんなに広範囲に影響与える様にしちゃダメでしょ?心臓に指の先ほどの穴を開けたら人間なんて簡単に死んじゃうんだからこのくらいで良いんだよ。ほら」

火炎の竜はマリウス様の目前まで迫り、そこで消えてしまった。マリウス様は指一本動かしては無い。そしてマリウス様の目が一瞬だけ赤く光った。

「一体何をし…たぁぁぁぁぁぁっ!?」

「あーあ。こんな大勢の前でパンツ一丁になっちゃって。上着が立派な分なんだか変態ぽいね。うん、今日から君は露出侯って名乗ると良いよ」

目で追えなかったが、恐らくはマリウス様の魔法だろう。火炎侯…改め露出侯のズボンのベルトの部分が焼き切られ、支えを失ったズボンがずり落ちて下着が露わになっていた。マリウス様の言う通り、勲章が山ほど付けられた上着と相まって確かに変態っぽい。

「大体ね?君達の言う皇族だとか王族だとか貴族だとかって、勝手に君達が格付けしてるだけで、僕にとっては皆同じ人間なんだよ。正直今の世の中みたいに一部の人間が他人を働かせて利益を独占してるってのはあんまり良い事とは思えない…って説教臭くなっちゃったね」

「マ…マリウス様…私の国の者が失礼な真似をして申し訳有りませんでした!どうか!どうかお許しを…」

「そう言うところが君を好きになれない原因なんだよね。ステファニーさんだったっけ?君今心の中で『皇族の私が配下の失態に頭を下げるなんて、これで私の株が上がる事間違い無しですわ!』とか思ってるでしょ?読心魔法を使った訳じゃないけど、昔から君みたいな人ってどこにでもいたからわかりやすいんだよね。他人の失敗を即座に自分の評価に繋げようとする頭の回転の早さは認めるけど、僕はそんな人ってあんまり好きじゃないなぁ…」
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