機械仕掛けの異世界転生〜勇者をクビにされたオッさんですが異世界でヒーローやってます〜

ふるっかわ

文字の大きさ
上 下
11 / 23
1章 北の森のオーク

幕間 とある貴族の屋敷にて

しおりを挟む
「一体何がどうなっているのだ!レッドドラゴンの襲撃の次はスタンピードの兆候だと!?どうして私ばかりがこの様な目に合う!?」

身なりのいい男が机を叩きながら叫ぶ、高価な調度品に囲まれた部屋には男の他に妖艶な色気に包まれた美女が葡萄酒の入ったグラスを傾けていた。

「間違い無い情報ですわ辺境伯様、近いうちに魔物達は大挙してこの街に押し寄せるでしょう、今までに我が商会の情報が間違っていた事がありまして?」

「情報があってもどうすればいい!?スタンピードなど勇者を何人も招集しなければ対処出来ない!関所を破壊された事で皇帝陛下は私の爵位剥奪も含めた処罰を考えてるとの噂だ!これ以上何か問題が起これば間違い無く廃爵になる!」

「…もし魔物を誘導する方法があるとすればどうなされますか?」

女は辺境伯と呼ばれた男の瞳を見つめる、男の表情からは徐々に焦りが消えていく。

「喰えない女め、何か策があるのだな?お前はいつも私を焦らせ商談を優位に進めようとする」

「流石は辺境伯様ですわ、私の浅はかな考えなどお見通しですのね」

女は鞄から紫色に光る水晶を取り出し男の手に握らせた。

「これは魔物を引き寄せる強力な波長を放つ水晶ですの、魔物を引き寄せたい場所でこの水晶を破壊して下さいまし、そうですわね…ここからゴーホンぐらいの距離なら効果が有りますわ」

「くっくっく、素晴らしい品があったものよ、魔物どもがゴーホンを襲えば復興支援を名目に兵を向けて実行支配する事もできるやも知れぬ、絶対絶命の危機が千載一遇の好機に変わりおったわい」

男は水晶を女から渡された鞄にしまうと自分の盃に注がれた葡萄酒を一気に飲み干した。

「そうなればきっと皇帝陛下も辺境伯様の有能さをお認めになられるでしょう、この水晶は未来の大貴族様への先行投資です、料金は頂きませんわ」

「世辞の上手い奴め、どうだ?其方は頭も回るし見目も美しい、私の側室にしてやらんでもないぞ」

男はいやらしい笑みを浮かべ女の手を撫でまわす、しばらくすると女はやんわりと男の手を外し立ち上がった。

「お戯れは程々にししてくれませんと、このままでは私が辺境伯様に本気になってしまいますわ、今度お逢いする時にお心変わりがなければまた誘って下さいまし、本日は失礼致しますわね」

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


屋敷を離れた馬車の中何度も何度も入念に男に握られた手を布で拭き取りながら女は呟く。

「ここまで思い通りに動いてくれるなんて本当に馬鹿な男、まぁ私にとっては仕事がしやすくて助かるわ、問題はもう1人の辺境伯ね、あのバカみたいに簡単な相手じゃないわ、策を練らないと」

女を乗せた馬車は月の光に照らされながら夜の街道へと消えて行った。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

二度目の転生は傍若無人に~元勇者ですが二度目『も』クズ貴族に囲まれていてイラッとしたのでチート無双します~

K1-M
ファンタジー
元日本人の俺は転生勇者として異世界で魔王との戦闘の果てに仲間の裏切りにより命を落とす。 次に目を覚ますと再び赤ちゃんになり二度目の転生をしていた。 生まれた先は下級貴族の五男坊。周りは貴族至上主義、人間族至上主義のクズばかり。 …決めた。最悪、この国をぶっ壊す覚悟で元勇者の力を使おう…と。 ※『小説家になろう』様、『カクヨム』様にも掲載しています。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

処理中です...