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1章 北の森のオーク
幕間 とある貴族の屋敷にて
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「一体何がどうなっているのだ!レッドドラゴンの襲撃の次はスタンピードの兆候だと!?どうして私ばかりがこの様な目に合う!?」
身なりのいい男が机を叩きながら叫ぶ、高価な調度品に囲まれた部屋には男の他に妖艶な色気に包まれた美女が葡萄酒の入ったグラスを傾けていた。
「間違い無い情報ですわ辺境伯様、近いうちに魔物達は大挙してこの街に押し寄せるでしょう、今までに我が商会の情報が間違っていた事がありまして?」
「情報があってもどうすればいい!?スタンピードなど勇者を何人も招集しなければ対処出来ない!関所を破壊された事で皇帝陛下は私の爵位剥奪も含めた処罰を考えてるとの噂だ!これ以上何か問題が起これば間違い無く廃爵になる!」
「…もし魔物を誘導する方法があるとすればどうなされますか?」
女は辺境伯と呼ばれた男の瞳を見つめる、男の表情からは徐々に焦りが消えていく。
「喰えない女め、何か策があるのだな?お前はいつも私を焦らせ商談を優位に進めようとする」
「流石は辺境伯様ですわ、私の浅はかな考えなどお見通しですのね」
女は鞄から紫色に光る水晶を取り出し男の手に握らせた。
「これは魔物を引き寄せる強力な波長を放つ水晶ですの、魔物を引き寄せたい場所でこの水晶を破壊して下さいまし、そうですわね…ここからゴーホンぐらいの距離なら効果が有りますわ」
「くっくっく、素晴らしい品があったものよ、魔物どもがゴーホンを襲えば復興支援を名目に兵を向けて実行支配する事もできるやも知れぬ、絶対絶命の危機が千載一遇の好機に変わりおったわい」
男は水晶を女から渡された鞄にしまうと自分の盃に注がれた葡萄酒を一気に飲み干した。
「そうなればきっと皇帝陛下も辺境伯様の有能さをお認めになられるでしょう、この水晶は未来の大貴族様への先行投資です、料金は頂きませんわ」
「世辞の上手い奴め、どうだ?其方は頭も回るし見目も美しい、私の側室にしてやらんでもないぞ」
男はいやらしい笑みを浮かべ女の手を撫でまわす、しばらくすると女はやんわりと男の手を外し立ち上がった。
「お戯れは程々にししてくれませんと、このままでは私が辺境伯様に本気になってしまいますわ、今度お逢いする時にお心変わりがなければまた誘って下さいまし、本日は失礼致しますわね」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
屋敷を離れた馬車の中何度も何度も入念に男に握られた手を布で拭き取りながら女は呟く。
「ここまで思い通りに動いてくれるなんて本当に馬鹿な男、まぁ私にとっては仕事がしやすくて助かるわ、問題はもう1人の辺境伯ね、あのバカみたいに簡単な相手じゃないわ、策を練らないと」
女を乗せた馬車は月の光に照らされながら夜の街道へと消えて行った。
身なりのいい男が机を叩きながら叫ぶ、高価な調度品に囲まれた部屋には男の他に妖艶な色気に包まれた美女が葡萄酒の入ったグラスを傾けていた。
「間違い無い情報ですわ辺境伯様、近いうちに魔物達は大挙してこの街に押し寄せるでしょう、今までに我が商会の情報が間違っていた事がありまして?」
「情報があってもどうすればいい!?スタンピードなど勇者を何人も招集しなければ対処出来ない!関所を破壊された事で皇帝陛下は私の爵位剥奪も含めた処罰を考えてるとの噂だ!これ以上何か問題が起これば間違い無く廃爵になる!」
「…もし魔物を誘導する方法があるとすればどうなされますか?」
女は辺境伯と呼ばれた男の瞳を見つめる、男の表情からは徐々に焦りが消えていく。
「喰えない女め、何か策があるのだな?お前はいつも私を焦らせ商談を優位に進めようとする」
「流石は辺境伯様ですわ、私の浅はかな考えなどお見通しですのね」
女は鞄から紫色に光る水晶を取り出し男の手に握らせた。
「これは魔物を引き寄せる強力な波長を放つ水晶ですの、魔物を引き寄せたい場所でこの水晶を破壊して下さいまし、そうですわね…ここからゴーホンぐらいの距離なら効果が有りますわ」
「くっくっく、素晴らしい品があったものよ、魔物どもがゴーホンを襲えば復興支援を名目に兵を向けて実行支配する事もできるやも知れぬ、絶対絶命の危機が千載一遇の好機に変わりおったわい」
男は水晶を女から渡された鞄にしまうと自分の盃に注がれた葡萄酒を一気に飲み干した。
「そうなればきっと皇帝陛下も辺境伯様の有能さをお認めになられるでしょう、この水晶は未来の大貴族様への先行投資です、料金は頂きませんわ」
「世辞の上手い奴め、どうだ?其方は頭も回るし見目も美しい、私の側室にしてやらんでもないぞ」
男はいやらしい笑みを浮かべ女の手を撫でまわす、しばらくすると女はやんわりと男の手を外し立ち上がった。
「お戯れは程々にししてくれませんと、このままでは私が辺境伯様に本気になってしまいますわ、今度お逢いする時にお心変わりがなければまた誘って下さいまし、本日は失礼致しますわね」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
屋敷を離れた馬車の中何度も何度も入念に男に握られた手を布で拭き取りながら女は呟く。
「ここまで思い通りに動いてくれるなんて本当に馬鹿な男、まぁ私にとっては仕事がしやすくて助かるわ、問題はもう1人の辺境伯ね、あのバカみたいに簡単な相手じゃないわ、策を練らないと」
女を乗せた馬車は月の光に照らされながら夜の街道へと消えて行った。
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