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1章 北の森のオーク

07 救出作戦

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俺達4人はオークの巣の入口近くに移動した、オークには見張りを立てるほどの知能はない様だ、入口はガラ空きだった。

「この粉は魔力で燃やさなくても大丈夫なのか?それなら俺が火を付けてくるよ」

「ええ、できれば少し入った所で焚いた方が効果が有ると思いますが…身軽なアンの方が適任では?」

「任せてくれ、俺にはこんな事が出来る」

俺は光学迷彩を展開し姿を消す、クロスの装甲はその頑強さに似合わず動く際に殆ど音を出さない、潜入するのはお手の物だ。

「ク…クロス?何処に行ったんだ?」

「姿が消えた?ここにいるの?」

アンが恐る恐る俺に手を伸ばす、俺はさっきから一歩も動いていない、アンの手が俺の胴体に触れると同時に光学迷彩を解除した。

「これならもし奴らが入口近くにいても大丈夫だろ?」

「魔法…ですか?魔力も感じなかったけど、それではクロスに着火をお願いします、火がついたら僕が入口から魔法で風を送りますね」

「魔法じゃないさ、俺は魔力が無いからね、技の様なモノだと思ってくれ、それじゃあ行ってくるよ」

ドゥークから粉の入った袋を貰い巣へと入る、洞窟は広く人間が3人程並んで歩ける幅があった。

「アークス、洞窟の構造が知りたいんだが何か方法が無いか?」

『超音波を反響させる方法かナノマシンのスキャンによる方法でマッピングが可能です』

「ナノマシンでスキャンしてくれ、囚われた人とオーク達の正確な位置も知りたい」

洞窟の壁に手を触れナノマシンを放つ、壁が淡く発光しながら奥へと光が進んで行った。

『マッピングを開始、モニターに進捗を表示します』

新たに現れたウインドウにマップが構成されていく、思ったより単純な構造の洞窟の様だ。

「完成まで少し時間がかかるな、コイツを燃やして一旦戻るか」

ドゥークから預かった袋を指先のバーナーで火を付ける、袋はパチパチと音を立て燃え始めた。

『警告、人体に有毒な物質が発生しています、この場での変身解除は危険です』

「わかってる、心配してくれてありがとうな」

これでドゥークに風を送ってもらえば大丈夫だろう、俺は一旦巣の外へと向かった。

巣の入口には3人が待機していた、俺は光学迷彩を解き3人に近づく。

「火を付けて来た、風を送ってくれ」

「わかりました、まずは第1段階クリアですね」

「それと洞窟内の地図を作っている、一緒に確認してくれないか?」

俺は空中にマッピング中の地図を映し出す、3人はそれを見て口をあんぐりと開けた。

「やっぱり魔法か?なんなんだこの地図は…?」

「恐ろしく正確な地図ね、それにみるみる地図が完成して行くわ、貴方何者なの?」

「これも俺の技さ、詳しくは詮索しないでもらえると助かる」

「やはり魔力は感じませんが…わかりました、今は囚われた女性達の救出に集中しましょう、僕は風を送り込みますね」

ドゥークが魔法で風を送る間俺達3人は周囲を警戒しながら完成していくマップを確認した、しばらくするとアークスからマップの完成を告げるアナウンスがあった、囚われている女性は4人で間違い無い様だ。

「3人とも、もう大丈夫です、中へ行きましょう、マスクを忘れない様に気をつけて下さい、まだ煙が洞窟内に漂っています」

マップの完成とほぼ同時にマスクを付けたドゥークが話しかけて来た、こちらも準備が整った様だ。

「俺はマスクがなくても大丈夫だ、それじゃあ中に向かうとするか」

マスクを付けた3人は俺の問いかけに頷いた。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

「次の分かれ道を左に向かう、分かれ道はこれで最後だ、もうすぐ目的地に着く」

4人で洞窟を進む、囚われた女性達はすぐ近くだ、周りにはオークらしき魔物の反応が確認が映し出されたが全く動かない、例の粉が効果を発揮したのだろう。

「この先ね、…アレはオーク?薬が効いた様ね全員動いていないわ」

「時間があれば今の内に全滅させたいところだな、クロス、囚われた人達はこの広場にいるのか?」

俺達は洞窟の最深部、広場の様になった場所に着いた、中では大量のオーク達が無造作に転がっている、人間の反応はこの広場の奥の方だ。

「この岩の奥だな、やけに厳重に通路がふさがれている、動かすから少し待ってくれ」

オーク達の間を縫う様に広場を奥へと歩く、広場の壁には岩で塞がれた横穴の入口があった。

「凄い…私でも1人じゃ動かせないわよ、こんな大きな岩」

「砕いてしまうから少し離れてくれ、破片が飛ぶと危ない」

俺は横穴を塞ぐ大岩に腕を突き刺し持ち上げた、3人が離れたのを確認し内部から粉砕する。

「こりゃあ街の噂も大袈裟って訳でも無かったな、クロス…、本当に人間か?」

「もちろん人間さ、訳あってこの鎧を脱げないんだ、すまない」

「謝らないで下さい、貴方が誰であれ僕達や囚われた人達を助けようとしてくれているのは紛れも無い事実です、何か事情があるのなら恩人の素顔を詮索するなんて出来ません」

「そうしてもらえると助かる、囚われた人達はすぐそこだ、早く助けよう」

「そうだな、変な事言って悪かった、謝るよ、お前は間違いなくいいヤツだ、それが判れば十分だ」

相変わらずお人好しだな、冒険者登録の時に案内役のローラとはぐれ右往左往していた俺に声を掛けてくれたのもトロワー達だった、困っている人を放って置けない性質なんだろう。

「見ず知らずの人達を助けようとする君達こそいいヤツらだ、さぁ、行こう」

俺達4人は横穴を奥へと進んで行った。
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