婚約破棄され追放されましたが私、聖女だったみたいです。

1話

「一体…一体どう言う事ですか？私にはお父様とお義母様の仰っている意味が良く分かりません」

「どう言う事も何も今言った通りよ？貴女とエルメス王子殿下との婚約は白紙になりました。代わりに義妹のマイラが王子殿下の元へと嫁ぎます。こんな簡単な話も分からないのですか？」

「ミラン…勘弁しておくれ…お前には可哀想な話だが、これも我がオークス侯爵家の将来の為なのだ…どうか分かって欲しい…」

まるで汚物を見る様な目で私を見つめる義母と、申し訳無さそうに俯く父。

珍しくお義母様から呼び出された時点でロクな話では無い事は予想出来ていたが、この展開までは予想出来て無かった。

半年後に婚約発表が迫っていた私と婚約者との縁談が破談になった事を告げられたのだ。

「…エルメス…エルメス様はこのお話にご納得されたのですか…？」

「王子殿下は関係ありません。貴女ごとき田舎男爵の血を引く女が王族と婚姻？夢を見るのも大概になさい！」

「確かに私の本当のお母様は男爵家の人間です…でも！殿下はその事も承知の上で私との婚約を申し出てくれたのです！お話を！一度だけでも直接殿下とお話をさせて下さい！こんな事は納得できません！」

「いい加減にしなさい！これはもう決定した事です！オークス侯爵家の長女ミランは頭がおかしくなって田舎での療養中。この話はもう社交界では有名な話です。気の狂った娘を王家に嫁がせるなど言語同断。そんな事をすれば我がオークス侯爵家は国中の笑い者…いえ、国王陛下のお怒りを買えば、家の断絶だって起こり得るのですよ？」

そこ意地の悪い笑みを浮かべる義母。

やられた…完全にしてやられた。最近義母がやたらとお茶会やパーティに参加していたが全てはこの為だったのか。私の悪い噂を広める為に尽力していてのだろう。

「貴女にはこの屋敷を出て行ってもらいます。」