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空編
93.デッドマンズアーミー
しおりを挟む再び時は戻り、ウルス城占領時、
ここに来るまでに、帝国南部侵攻軍は王国側からは小規模な抵抗を受けたが、そのあとは特に何もしてくることもなくすんなりとウルス城に到達していた。
ウルス城やその周辺は人がおらず不気味な静けさが漂っていた。
「なんだ、誰もいないのか?周辺の情報はどうなってる?」
「申し上げます!城内には兵はおろか住民も食糧などすべてが消えています!」
それを不審に思ったガンテは馬上からそう叫ぶと、情報参謀が走ってきてウルス城には人がいないどころか食料や武器などすべてがなくなっていることを報告していた。
これはおそらく帝国側に現地調達をさせないために徹底的に空にしていったためだろう。
「何もないだと?!これでは俺が楽しみにしていたものもないのか」
「はっ、おそらく」
ガンテはそれを聞いた瞬間非常に落胆していた、それは彼の“趣味”である“女性狩り”ができないと思ったからだ。
そんな彼の後ろにぴったりとくっつくようについてきている馬車にはこの道中やどこかで“購入”してきた彼のコレクションが詰まっていた。
「まぁ、よい、もしかしたら敵の罠かもしれないからよく注意して入城するようにしろ!」
「「「はっ!」」」
ここ以外にも途中の村や港もすべてもぬけの殻になっていた。
これに対して、当初は罠かと思いびくびくしながら過ごしていたが、その後一週間王国側から何の音沙汰もなく、そのままあっさりと占領していた。
ただここを占領したのはこの全体の戦略の中の一歩でしかなく、ガンテはこの後の計画を立てた。
その計画というのはガンテの“呪術”による死んだ後も兵として(ゾンビ化)戦わせる計画だ。
ガンテは今まで武闘派として軍内部で有名であったが、彼は魔法も上級魔術師以上に使えるのだが、何故かこれをずっと隠し続けていた。
それは、ある人物と王国だけではなくこの大陸すべての人間をゾンビ化させすべてを支配しようと企んでいたからだ。
その“呪術”を兵たちに有効かする前に、ある人物から直接得た“麻薬”を兵に投与し身体能力と耐久性(頭以外が欠損しても動き続けられる)・攻撃力(ワンパンで常人の頭が吹き飛ぶぐらい)を上げる。
こうすることによって、たとえ呪術によって異常な力を得た兵士たちを味方の他の部隊に見られても身体強化の薬を使いましたと言ってごまかすことができるとガンテは考えていた。
この“呪術”が発動するのはかけた対象が死んでいて術者も死んでいる場合に発動される、そしてその対象は術者の指示にしか従わないようになり、もし術者が近くにいなかったり存在そのものが消えてしまった場合は生きた人間の肉を食べるため彷徨い、対象者が生きた人間に噛みつくとその呪いが生きた人間も同じく呪われ、それを繰り返す。
これの連鎖を止めるには弱点である頭部を破壊しなくてはならないのだが、薬物を摂取した為。
術者だけは不死身以外生前と同じ状態のままでいられるが、不死身になる前にタイムラグがありその間は無防備になってしまうそこの状態で頭部が破壊されると二度と復活しないという弱点がある。
占領から1週間後、モンスター大量発生や流行病(恐らくインフルエンザに近い感染症)の発生で大量の死者を出してしまい、さらにその悲惨な状態を見て脱走していった兵も出るほどになってしまったので、計画は中止にせざるを得ない状態にまでなってしまった。
この状況の報告を受けたガンテはやけくそになって敵兵諸共ゾンビ化させそれを指揮し、その兵によって膨れ上がった兵力を利用して王国中央部への侵攻作戦に変更した。
そしてこの計画が軍上層部に知られ利用されるのを嫌い、増援や支援要請・使者などをことごとく断っていった、さらにこれら自体もともとプライドの高いガンテには耐えられなかったのもある。
それからさらに1週間後、今度はガンテ自身も“麻薬”を摂取していてその影響で薬物中毒を引き起こしていた。
その為ガンテの思考能力・身体能力が極端に低下し、このころには女性奴隷との性行為か、少ない備蓄食料を食べるか、麻薬の摂取のことしか頭になかった。
さらに、この時最悪なことに彼の参謀や高級将官などもこの麻薬による中毒症状により行動不能に陥っていて、誰もこの作戦を追行できるものはいなくなっていた。
こんな状態のところにレナ達が突入、当然思考能力と身体能力の著しく低下したガンテは成す術もなく即射殺される。
ガンテが射殺されたことによって、彼の呪術がじどう的に発動し、城内で死んでいった兵士が全員ゾンビとなって甦り、ゾンビパニックにつながることとなった。
この能力は軍上層部(特に軍団長以上の人間)に認知されていなかった、しかし完全にこの情報を得ていなかったわけではなく、当然陸軍情報局や海軍情報参謀も知っていたが、ガンテの個人的な圧力や不可解な政治的圧力(黒い仮面の存在)により情報が止められていた。
そして、彼の死によってこの呪術に関することはついぞ知られることはなかった。
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