90 / 93
空編
90.帝国首都爆撃と帝国空軍基地空爆作戦!
しおりを挟むカルロゼ北での空戦後
夜になり、予定通りであれば帝国首都に爆撃機を出撃させ主要基地や政府関連施設を攻撃させていたが、それよりも先にカルロゼの町やセレンデンス基地に近い帝国空軍のレヴァイス空軍基地を攻撃することをその予定にあった部隊に命令を下した。
というのもレヴァイス空軍基地は単に近くにあるというだけではなく(これだけでも十分脅威になるが)、ここが今回の敵空軍侵攻部隊の拠点であり、主力部隊が集結してきているというのが一番大きい、そこでまだ敵が戦闘準備を基地でしているところを狙い基地もろとも破壊してしまおうということだ。
これには第445飛行隊所属のB-1Bを出撃させることにした。
このB-1Bはアメリカ空軍が運用する戦略爆撃機のことで、ランサー(槍騎兵)の愛称でよばれている。
B-1Bは兵装最大搭載量がB-2爆撃機の18tに比べて約三倍の56tも搭載することができる。
最高速度もマッハ1.25と音速を超えて飛ぶこともできるので、現場に急行して爆撃しそのまま敵の迎撃が上がってくる前にこの最高速を生かしてヒットアンドアウェイも出来るし、もし万が一敵に襲われたときはこれで素早くその場から脱することもできる、まさに“ランサー”だ。
この第445飛行隊所属のB-1B10機は、第一航空団の護衛を受けながら搭載できる最大の爆弾を抱え飛び去って行った。
彼らが飛び立ってから3時間後、彼らから「敵基地の完全な破壊と地上にいた敵の全滅を確認」と報告をしてきた。
細かい報告だと、敵竜騎兵隊の竜は広いグラウンドのような場所に露天の状態で寝ていて、兵たちはちょうど夕食の時間だったのか酒盛りをしていたのか、焚火の火の明かりがあたりをうっすらと照らしていて、何がどこにあるのかが肉眼でも確認できる状態だった。
そのため、爆発範囲が広い爆弾なのでそこまで精密に目標を絞らなくてよかったのだが、より効果的な爆撃をすることができたので、外したものがものすごく少なく、かつ短時間で済ませることができたと報告にはあった。
これを聞いた、夜にも交代で勤務している司令部要員や整備要員を沸かせていたが、彼らとは違った反応を示すものもいた。
それは、元々首都を爆撃するつもりで準備して今か今かと待機していた、第443飛行隊の兵たちだ。
彼らは、仲間の華々しい戦果報告を聞いて我慢できなくなったのか、命令違反でもいいから出撃してくれと司令部に懇願してきた。
その迫力に負けた、司令部指揮代行が首都爆撃の命令を出してしまった。
本来であれば重大な命令違反として“処刑”は免れないことであったが、今回はもともと予定していたことでもあったので厳重注意のみで済んだ。
出撃命令(許可)が出た第443飛行隊は準備していたB-2爆撃機4機を発令からわずか5分の時間で発進させていた。
目標であるデスニア帝国の首都であるディシアは、セレンデンス基地からおよそ2442㎞の位置(往復距離4884㎞)にあるので、B-2爆撃機だと無給油で往復することができるので給油機は同行させず、それと護衛の戦闘機は航続距離などの問題でついていくことができないので単独での作戦になる。
敵地の奥深くそれに加えて一番危険な敵の首都に、彼らはそんなことを臆することもなく飛んで行った。
飛び立ってから5時間後、朝日が昇りかけ段々と明るくなってきたころ。
飛び立った彼らは一機もかけることも傷つくこともなく、無事に基地に帰ってきた。
第443飛行隊所属4機はまず首都上空に到達後、真っ先に首都の女帝のいると思われる城に一機目がGBU-57A/B(通称バンカーバスター)を投下、見事命中、爆弾の特徴を活かし城壁をいとも簡単に突き破り城の中心部に到達すると爆発大炎上の後、支えを失った城はあっけなく崩壊していったという。
その後、近くにあった帝国海軍ディシア基地を二機目がBLU-96(燃料気化爆弾)を投下し停泊していた艦船十数隻にたいして損害を与え、さらに夜なので基地内の兵舎で寝ていた兵士たちはそのまま永遠に目を覚まさなくなった。
次にディシア空軍基地と思われる場所に三機目はCBU-97(クラスター爆弾)を投下し地上に無数の子爆弾をばらまき無差別に攻撃し兵舎や倉庫・竜などを破壊または殺害し大きな被害を与えた。
最後に政府機関庁舎群に対して四機目が二機目と同じくBLU-96(燃料気化爆弾)を投下した、不幸中の幸いでこの時政府機関庁舎群には警備の人間以外いなかったので大きな人的被害にはならなかった、この場所にこの爆弾を使ったのは政府機関内にある書類などの情報を焼き尽くし政治活動はもとより経済活動なども含め妨害する意味も込められている。
こうしてこの世界初のコンダート王国による帝国首都ディシアへの直接的攻撃は大成功を収めた。
帝国サイド
爆撃から数時間後
ディシア市民たちは初の“空襲”に驚きや恐怖を隠せないでいた。
この世界の歴史上この首都は一度たりとも敵の攻撃を受けたことがないのだから無理はないだろう。
それがまだ、町の一角や軍事施設だけならまだしも、この攻撃でこの国のシンボルでこの国の指導者である女帝の住まう城が今や崩れ去りただの瓦礫と化しているというのだから、ディシア市民のほぼすべての人々が恐慌状態に陥っていても不思議はないだろう。
これには政府高官や軍上層部も朝には大慌てで会議やら対応に追われ大混乱に陥っていた。
この攻撃で軍人の死傷者は5万6800名に上り、一般市民も1200名と少なくない人が犠牲になってしまった。
そしてこの国の人々にとって一番気になる女帝は、この時たまたま国内の軍幹部と会談をするために保養地がある帝国西南部にあるテーザ湖に訪れていて、その近くの宿に宿泊していたため運よくこの難を逃れていた。
ディシア城の崩壊と帝都ディシアにおける被害の報告を聞いた女帝は、怒りのあまり宿泊先の執務室の机の上に置いてあったものすべてを床に投げつけたうえで、机に突っ伏したそうだ。
その時、ぼそりと小声で「思ったより早かったな」といっていたとかいないとか。
この帝都爆撃から一週間後、帝国領内では帝国がこのままでは王国に負けてしまうのではという人々が出始め、爆撃から二週間後には首都近郊の住民が次々に“武装蜂起”し、これに呼応する形で地方各地でも武装蜂起が起きていた。
これに女帝直下の部隊が“鎮圧”という名目で出撃し、これを次々に“口封じ”をしていった。
この“口封じ”が全国で一斉に開始されると、この一連の騒動は鳴りを潜めた。
しかし、帝国中部地方では、無理やり帝国領土内に組み込まれたかつて独立して存在していた国々の子孫たちや今の反帝国派の領主たちは、表向きはただの地方政治集会として集まりこの会議で反旗を翻すことを計画する。
この計画を実行するにあたって王国側についたほうが得だとみてすぐに密使を送ることにした。
爆撃を受け帝国陸海空軍の各参謀部は、陸海軍では王国には太刀打ちできないと考えが出始め、まだ対抗措置が取れそうな空軍の全部隊を投じて、飽和攻撃による敵航空部隊壊滅を優先的に実行し、壊滅させた暁には一気に王国側の陸軍部隊と海軍艦艇に対して空襲を行い、兵力を激減させたのち、再び陸海軍での侵攻作戦を始める計画を練り始めていた。
この前に、帝国を裏切りさらにイスフェシア皇国と同盟関係を結んだ、テレン聖教国に陸軍最精鋭の部隊を投入し完全に支配下に置く、
その後イスフェシアに対して包囲戦を挑みこちらも完全な支配下に置くことにする計画を実行。
この計画を実行する理由は、第一に大量の奴隷を得てそれを最前線に送り込み帝国兵の”肉壁”にすること、次に帝国の軍事力を王国に対して示すことが挙げられる。
王国サイド
この二つの爆撃の報告を東部方面隊司令部内の来賓用寝室で寝起き一発目にエリカから受けた俺とメリアは、朝一番でこの吉報を聞き、不安な日々を過ごす俺たちの心の中に光が差した。
そしてウルス城の攻略準備が整ったとの報告も入ったので、朝食をとった後すぐにワタとメリアはウルス近郊の前線指揮所に向かことにした。
いよいよこれから直接的な帝国への反攻作戦が始まる。
10
お気に入りに追加
515
あなたにおすすめの小説
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています

転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件
月風レイ
ファンタジー
普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。
そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。
そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。
そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。
そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。
食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。
不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。
大修正中!今週中に修正終え更新していきます!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラス転移で神様に?
空見 大
ファンタジー
空想の中で自由を謳歌していた少年、晴人は、ある日突然現実と夢の境界を越えたような事態に巻き込まれる。
目覚めると彼は真っ白な空間にいた。
動揺するクラスメイト達、状況を掴めない彼の前に現れたのは「神」を名乗る怪しげな存在。彼はいままさにこのクラス全員が異世界へと送り込まれていると告げる。
神は異世界で生き抜く力を身に付けるため、自分に合った能力を自らの手で選び取れと告げる。クラスメイトが興奮と恐怖の狭間で動き出す中、自分の能力欄に違和感を覚えた晴人は手が進むままに動かすと他の者にはない力が自分の能力獲得欄にある事に気がついた。
龍神、邪神、魔神、妖精神、鍛治神、盗神。
六つの神の称号を手に入れ有頂天になる晴人だったが、クラスメイト達が続々と異世界に向かう中ただ一人取り残される。
神と二人っきりでなんとも言えない感覚を味わっていると、突如として鳴り響いた警告音と共に異世界に転生するという不穏な言葉を耳にする。
気が付けばクラスメイト達が転移してくる10年前の世界に転生した彼は、名前をエルピスに変え異世界で生きていくことになる──これは、夢見る少年が家族と運命の為に戦う物語。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

~僕の異世界冒険記~異世界冒険始めました。
破滅の女神
ファンタジー
18歳の誕生日…先月死んだ、おじぃちゃんから1冊の本が届いた。
小さい頃の思い出で1ページ目に『この本は異世界冒険記、あなたの物語です。』と書かれてるだけで後は真っ白だった本だと思い出す。
本の表紙にはドラゴンが描かれており、指輪が付属されていた。
お遊び気分で指輪をはめて本を開くと、そこには2ページ目に短い文章が書き加えられていた。
その文章とは『さぁ、あなたの物語の始まりです。』と…。
次の瞬間、僕は気を失い、異世界冒険の旅が始まったのだった…。
本作品は『カクヨム』で掲載している物を『アルファポリス』用に少しだけ修正した物となります。

神々に育てられた人の子は最強です
Solar
ファンタジー
突如現れた赤ん坊は多くの神様に育てられた。
その神様たちは自分たちの力を受け継ぐようその赤ん
坊に修行をつけ、世界の常識を教えた。
何故なら神様たちは人の闇を知っていたから、この子にはその闇で死んで欲しくないと思い、普通に生きてほしいと思い育てた。
その赤ん坊はすくすく育ち地上の学校に行った。
そして十八歳になった時、高校生の修学旅行に行く際異世界に召喚された。
その世界で主人公が楽しく冒険し、異種族達と仲良くし、無双するお話です
初めてですので余り期待しないでください。
小説家になろう、にも登録しています。そちらもよろしくお願いします。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる