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内政編
68.陸・空軍合同作戦会議
しおりを挟む話が始まる前にセフィーロとエレンはせっせと会議室にいる皆に資料を渡していた。
資料を配り終わった二人は、壇上に上がり、ひと呼吸ついていた。
二人はいきぴったりに動き始め、陸軍ヴァーテ・エレン参謀本部長が作戦の概要と敵軍について話し始め、それに合わせるようにして黒板もどきに空軍エレテス・セフィーロ総参謀長が書き始めていた。
そもそも、この二人は王立士官学校の同期でクラスもずっと一緒だったのでお互いのことがよくわかっているようで、別の組織の人間同士とは思えないようなスムーズな動きを見せてくれている。
「まず、本作戦名を“アイアンフィスト(鉄拳)”命名しました、これは、帝国に対して大打撃を与えるという意味を込めて命名しいたしました」
「“アイアンフィスト”作戦の流れはこの通り」
エレンが黒板もどきを指差すと、丁度セフィーロが書き終わった後だった。
アイアンフィスト作戦の流れ
1. 侵攻前準備
陸軍特殊作戦軍第一連隊“メランオピス”・陸軍特殊部隊第一師団“ブラックベレー”が先発隊として行軍開始
両部隊はヘリボーンにてセレンデンスの町まで進軍しここでいったん休止。
翌日、その前の日に夜を徹して運んできた車両に分乗し、ウルス城周辺まで進軍を開始(セレンデンス~ウルス間約750㎞)
ウルス城周辺に到着後、ウルス城近くにある山のふもとの森に前哨基地をブラックベレー所属第79工兵中隊によって建設開始、同時期にメランオピス所属第A(アルファ)大隊はウルス城内部に潜入し情報収集と工作任務を開始、ブラックベレー所属機械化歩兵連隊はウルス城周辺を警備しているデスニア帝国軍に対して威力偵察を開始。
本作戦の参加部隊である、対空・自走・防空砲兵師団と機甲軍団・近衛軍団を編成の後、東部遠征軍を新設しその司令官にウェルシュ・ヨナを任命。
東部遠征軍は直ちにセレンデンスに向かって行軍を一斉に開始(行軍距離約1410km、行軍速度50㎞)
行軍開始から3日後に到着(途中休憩や睡眠を挟んだ為時間がかかった)し一旦休止
前哨基地完成の報を受け東部遠征軍が進軍を再開、翌日までにはウルス前哨基地に到着
2. 作戦前夜
城内に潜入していたメランオピス所属D(デルタ)大隊(レナが直接現場指揮)は、城内を占拠しているデスニア帝国陸軍の司令官を夜襲によって射殺若しくは捕獲、メランオピス所属B(ブラボー)大隊は城内地下に閉じ込められている“奴隷”達を救出、残るA(アルファ)・C(チャーリー)大隊は城門を内側から破壊し、本隊の侵入経路を作る
ブラックベレー所属全部隊は城内から城下町外に出れる裏口を発見し次第罠を仕掛け、その周辺で待機。
3. 作戦決行日
作戦当日、想定によれば敵陸軍部隊の指揮系統が寸断されているので、むきになった敵軍が一斉突撃を敢行してくると思われる。
敵が動き始めたのを確認し、味方自走砲師団所属する全砲門によって一斉射撃を開始。
それを合図に、千を超える戦車軍団と近衛軍団全軍がウルス城に向かって一斉進軍。
周辺を守備している敵兵を蹴散らし、城内に残っている敵を掃討殲滅する
前哨基地に緊急時用でQRF(Quick Response Force:即時対応部隊)を編制しておく、その部隊には王直属の武装侍女隊(通称 ミスティア)一個大隊を設置する。
そもそも、QRFというのは読んで字の如く、呼ばれてからすぐに対応できる応援部隊のことで、大規模な援軍が来るまでのつなぎに使われることもある。
このQRFとして待機する武装侍女隊(通称 ミスティア)は本来、王室関係者が外出した時に護衛する任務だが、今回は実戦経験を積ませるためという意味も込めて向かわせた。
一通りエレンの説明が終わると今度は手に資料を持ち、敵情が書かれているページまでめくると、再び口を開いた。
「次に敵情に、ついてのお話です、お手元の資料の敵兵力についてのページをみていていただきたいのですが、これが、現在までに分かっている兵力の情報です」
この資料には以下のように書かれていた
デスニア帝国陸軍
参加部隊
東部侵略軍
敵将
総司令官兼ウルス城占領軍司令 エレクサンドラ・ガンテ大将
総兵力:5万2千
歩兵:4万3千
騎兵:9千
デスニア帝国海軍
参加部隊
第十艦隊(王国東部海域担当)
海軍海兵隊
敵将
第十艦隊司令 アレクシドロ・メテス中将
海兵隊部隊長 シードル大佐
総兵力:3万
艦船:200隻
海兵隊:1万
デスニア帝国空軍
参加部隊
不明(帝国本土か国境付近から飛来してくる模様だが現在調査中)
敵将 ハルト・ケイル空軍大将(推定)
総兵力:推定500隻以上の飛空艇及び1000機以上の竜騎兵
「以上が敵兵力についてでした、この情報からもわかる通り空軍の詳細はいまだつかめておらずいまだ調査中です、そして敵の航空戦力ですが、今後も増えてくると予想されており、この状況を好転させるには王国空軍の早期作戦開始が望まれます、私からは以上です」
陸軍側の話が終わると、今度はセフィーロが話始めた、それと同時にエレンはそのまま黒板もどきに情報を書き始めていた。
この新たに組織したコンダート王国空軍参謀に抜擢されたエレテス・セフィーロは、王都アルダートに拠点を置く商人ギルド内で一二を争うほどのエレテス総合商会(食料・日用・衣料品や武器や防具、輸入品などを幅広く扱う総合商社)の社長の娘として生まれた。
父の仕事上軍とも関係があるため、直接的なコネを作る目的もあってセフィーロは半ば強引に王国士官学校に入れられていた。
しかし、セフィーロは元々何かを学ぶことや何かの情報を得ること、新しいことに挑戦することにものすごく興味を持っていたおかげなのか、成績も学校全体で上位をとることが多かった、そして卒業後同期だったヴァーテ・エレンと一緒に陸軍に入り、少し前までエレンの部下として陸軍情報参謀長を務めていた。
そして、彼女の今まで培ってきたであろう高い情報処理・収集能力と挑戦心に俺は感心し、空軍の参謀として選んだ。
そんな彼女は、俺が任命時にあげた青いベレー帽をかぶり、金髪のセミロングで後ろをポニーテールでまとめ上げ、目は水色のような色をしている。
空軍用として用意した紺色の軍服を着ているが、胸が隠しきれず谷間が見えてしまっているし、短めのスカートからは綺麗な長い脚がすらりと伸びている。
閑話休題
「次に空軍の今後について話したいと思います、まず初めにこの後の予定をお伝えします」
1.セレンデンス基地の滑走路と格納庫、燃料タンクなどの施設の“召喚” が終わり次第、戦闘機や爆撃機、基地防空隊の兵器の召喚をしてもらう。
2.すべての召喚が終わり次第順次訓練開始、この訓練期間は1週間を予定
3.すべての部隊が訓練を終了させたのち、敵航空戦力に対して長距離ミサイル攻撃を開始
同時期に味方地上部隊と連携し、ベルン港奪還作戦を開始
「簡単ではありますが以上になります、質問・指摘等は時間の都合上、後程個別にお伺いするかたちをとらせていただきます」
二人が壇上を降りた後、今度は俺が壇上に上がった。
「二人とも、ご苦労様、諸君これからまた大変な思いをすることになるだろうが、どうか耐えてくれ、この東部戦域を奪還すれば、あとは敵を押し戻すだけだ……、これからもよろしく頼む。私からは、以上だ、解散!!」
「「「「「コンダート王国に栄光あれ!!!!」」」」」
こうして新たな帝国への復讐が始まろうとしていた。
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