65 / 93
内政編
65.帰港と国会と軍会議と
しおりを挟む私が初めてあの人に...ドミニカ様に出会ったのはちょうど5歳になったばかりの頃だった。
私の今は亡き毋に連れられ後宮に御挨拶に行ったのだ。
母上とは違う紫色の髪と瞳で、煌びやか...いや、その派手過ぎる装いに苦手な人だと感じてしまったのは今でも変わらない。
「お初にお目にかかります。レオン・クラン・カスティリアと申します。以後、お見知り置きを。」
そうしてまだ、少し慣れない不格好な礼をした。
そうするとドミニカ様は目を優しそうに細め、口をにこやかにした。
「これはこれは、レオン様。ご丁寧にどうもありがとうございます。
私はドミニカですわ。どうぞ、第二の母だと思って下さいませ。」
見た目よりも遥かに優しそうな物腰に私は少し警戒心を解いてしまっていた。
ああ、この方は見た目よりも穏やかな人なのではと。
だが、その勝手な想像は直ぐに打ち砕かれる。
「ああ、そうだわ。アリナ様もいらしゃっていたわね。あまりにも質素な装いだから気付かなかったわ。
ごめんなさいね...?」
そういい扇で隠す口元は見なくても分かるほど歪んでいるろうと感じた。
母上はその物言いに不機嫌を示すように眉を寄せたが、直ぐに戻す。
「いいえ…お気になさらないでくださいまし。今日はこの子の挨拶で来たのですから。」
そう言って、軽く流していた。
そんな安い喧嘩を受けるほど頭も弱くないのだ。さっさと挨拶を済ませ、帰るつもりでいた。
「…そうですわね。あぁ、そうだわ!せっかくなのですからお茶会なんていかがかしら?私、もっとよくレオン様とお話したいのです。」
ドミニカ様はこれはいい案だとばかりに先に決め、近くのメイドに支持をした。
母上はあまりに変えない顔を少ししかめ、忌々しそうにドミニカ様を見つめていた。
断ってもよかったのだが、あまりこの人に悪い印象を与えるべきではないと判断し参加することになった。
母上はとても嫌そうだったがさっさと終わらせて帰るわよと目が語っていた。
席につき、お茶会が始まる。
時間のほとんどをドミニカ様がお話になり、ご自分の得意なこと、好きなこと、趣味や何故かお父様についても多く語っていた。
ドミニカ様のお生まれは隣国のアスクエート帝国で第3皇女だったそうだ。
アスクエート帝国は海に面しており、貿易が盛んだった。それに目をつけた父上…国王陛下はアスクエート帝国とカスティリア王国に協定を結んだ。
陸地での貿易行路でカスティリア王国の領土を渡る代わりに、アスクエート帝国の海路の貿易航路を確保した。そんな協定だ。
そして、その協定をより強固にするためにドミニカ様との政略結婚が決まったのだ。
だが、お父様は元々結婚だなんだという話は
苦手で、母上との結婚も国王という地位に収まるためだけのものだったらしい。
そして、今回も国の実益のためだ。
結婚だなんて名ばかりで、ドミニカ様を早々に後宮に放り込み放置しているというのが今の現状だ。
まぁ、お父様が物凄くドミニカ様を嫌っているというのもあるのだが…
ふと、耳を済ませると女の子の泣き声が聞こえる。
「あら、ラベンナが泣いていますわ。私に会いたくなったのかしら…?」
そう思うのであれば、早く会いに行けば良いものを。
「私のラベンナは、それはそれは可愛いのですわ。私に似たのかしら…ふふ。この前もね…」
そうして、また話が始まる。
私は最早遠い目をして、これはいつ終わるのだろうか。と感じていた。
ふと、母上を見ると顔色が少し悪く感じる。
近くに控えていたメイドを呼び、支えられるように立ちながらも母上はこちらを見やった。
「ごめんなさい…少し気分が優れないみたいで……そろそろおいとましましょうか。」
はい、と立ち上がろうとすると私の手をドミニカ様が掴んだ。
「お待ちになって。レオン様、まだ私とお話しましょう?私、まだまだ話し足りないのですわ。アリナ様、ご気分が優れないのでしたら直ぐに医務室に行かれた方が良いのではなくて?」
私はその一瞬、この人が何を言ったのか分からなかった。
何を言っているんだこの人は?
母上は正妃、貴方よりも地位は上だ。その方にその言いざまはなにか?
頭に血が登り始め、掴まれた腕を振りほどこうとした。が、その前に母上が弱々しい声で話し出す。
「……何を言って………。うっ…」
益々、顔色が悪くなっていく。そんな母上が心配になり、気づいたら声を出していた。
「母上、私は大丈夫です。ドミニカ様とお茶会を続けますので、早く王宮にお戻りください。私は、大丈夫ですので。」
そう強く見つめ、母上に伝える。
母上は酷く眉間にシワを寄せていたが、暫くして頷き、メイドに支えられるようにして王宮に戻って行った。
私の今は亡き毋に連れられ後宮に御挨拶に行ったのだ。
母上とは違う紫色の髪と瞳で、煌びやか...いや、その派手過ぎる装いに苦手な人だと感じてしまったのは今でも変わらない。
「お初にお目にかかります。レオン・クラン・カスティリアと申します。以後、お見知り置きを。」
そうしてまだ、少し慣れない不格好な礼をした。
そうするとドミニカ様は目を優しそうに細め、口をにこやかにした。
「これはこれは、レオン様。ご丁寧にどうもありがとうございます。
私はドミニカですわ。どうぞ、第二の母だと思って下さいませ。」
見た目よりも遥かに優しそうな物腰に私は少し警戒心を解いてしまっていた。
ああ、この方は見た目よりも穏やかな人なのではと。
だが、その勝手な想像は直ぐに打ち砕かれる。
「ああ、そうだわ。アリナ様もいらしゃっていたわね。あまりにも質素な装いだから気付かなかったわ。
ごめんなさいね...?」
そういい扇で隠す口元は見なくても分かるほど歪んでいるろうと感じた。
母上はその物言いに不機嫌を示すように眉を寄せたが、直ぐに戻す。
「いいえ…お気になさらないでくださいまし。今日はこの子の挨拶で来たのですから。」
そう言って、軽く流していた。
そんな安い喧嘩を受けるほど頭も弱くないのだ。さっさと挨拶を済ませ、帰るつもりでいた。
「…そうですわね。あぁ、そうだわ!せっかくなのですからお茶会なんていかがかしら?私、もっとよくレオン様とお話したいのです。」
ドミニカ様はこれはいい案だとばかりに先に決め、近くのメイドに支持をした。
母上はあまりに変えない顔を少ししかめ、忌々しそうにドミニカ様を見つめていた。
断ってもよかったのだが、あまりこの人に悪い印象を与えるべきではないと判断し参加することになった。
母上はとても嫌そうだったがさっさと終わらせて帰るわよと目が語っていた。
席につき、お茶会が始まる。
時間のほとんどをドミニカ様がお話になり、ご自分の得意なこと、好きなこと、趣味や何故かお父様についても多く語っていた。
ドミニカ様のお生まれは隣国のアスクエート帝国で第3皇女だったそうだ。
アスクエート帝国は海に面しており、貿易が盛んだった。それに目をつけた父上…国王陛下はアスクエート帝国とカスティリア王国に協定を結んだ。
陸地での貿易行路でカスティリア王国の領土を渡る代わりに、アスクエート帝国の海路の貿易航路を確保した。そんな協定だ。
そして、その協定をより強固にするためにドミニカ様との政略結婚が決まったのだ。
だが、お父様は元々結婚だなんだという話は
苦手で、母上との結婚も国王という地位に収まるためだけのものだったらしい。
そして、今回も国の実益のためだ。
結婚だなんて名ばかりで、ドミニカ様を早々に後宮に放り込み放置しているというのが今の現状だ。
まぁ、お父様が物凄くドミニカ様を嫌っているというのもあるのだが…
ふと、耳を済ませると女の子の泣き声が聞こえる。
「あら、ラベンナが泣いていますわ。私に会いたくなったのかしら…?」
そう思うのであれば、早く会いに行けば良いものを。
「私のラベンナは、それはそれは可愛いのですわ。私に似たのかしら…ふふ。この前もね…」
そうして、また話が始まる。
私は最早遠い目をして、これはいつ終わるのだろうか。と感じていた。
ふと、母上を見ると顔色が少し悪く感じる。
近くに控えていたメイドを呼び、支えられるように立ちながらも母上はこちらを見やった。
「ごめんなさい…少し気分が優れないみたいで……そろそろおいとましましょうか。」
はい、と立ち上がろうとすると私の手をドミニカ様が掴んだ。
「お待ちになって。レオン様、まだ私とお話しましょう?私、まだまだ話し足りないのですわ。アリナ様、ご気分が優れないのでしたら直ぐに医務室に行かれた方が良いのではなくて?」
私はその一瞬、この人が何を言ったのか分からなかった。
何を言っているんだこの人は?
母上は正妃、貴方よりも地位は上だ。その方にその言いざまはなにか?
頭に血が登り始め、掴まれた腕を振りほどこうとした。が、その前に母上が弱々しい声で話し出す。
「……何を言って………。うっ…」
益々、顔色が悪くなっていく。そんな母上が心配になり、気づいたら声を出していた。
「母上、私は大丈夫です。ドミニカ様とお茶会を続けますので、早く王宮にお戻りください。私は、大丈夫ですので。」
そう強く見つめ、母上に伝える。
母上は酷く眉間にシワを寄せていたが、暫くして頷き、メイドに支えられるようにして王宮に戻って行った。
10
お気に入りに追加
515
あなたにおすすめの小説

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜
水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。
その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。
危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。
彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。
初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。
そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。
警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。
これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。
果たして、阿宮は見知らぬ世界でどう生きていくのか————。
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています

転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件
月風レイ
ファンタジー
普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。
そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。
そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。
そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。
そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。
食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。
不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。
大修正中!今週中に修正終え更新していきます!

【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
異世界転移した町民Aは普通の生活を所望します!!
コスモクイーンハート
ファンタジー
異世界転移してしまった女子高生の合田結菜はある高難度ダンジョンで一人放置されていた。そんな結菜を冒険者育成クラン《炎樹の森》の冒険者達が保護してくれる。ダンジョンの大きな狼さんをもふもふしたり、テイムしちゃったり……。
何気にチートな結菜だが、本人は普通の生活がしたかった。
本人の望み通りしばらくは普通の生活をすることができたが……。勇者に担がれて早朝に誘拐された日を境にそんな生活も終わりを告げる。
何で⁉私を誘拐してもいいことないよ⁉
何だかんだ、半分無意識にチートっぷりを炸裂しながらも己の普通の生活の(自分が自由に行動できるようにする)ために今日も元気に異世界を爆走します‼
※現代の知識活かしちゃいます‼料理と物作りで改革します‼←地球と比べてむっちゃ不便だから。
#更新は不定期になりそう
#一話だいたい2000字をめどにして書いています(長くも短くもなるかも……)
#感想お待ちしてます‼どしどしカモン‼(誹謗中傷はNGだよ?)
#頑張るので、暖かく見守ってください笑
#誤字脱字があれば指摘お願いします!
#いいなと思ったらお気に入り登録してくれると幸いです(〃∇〃)
#チートがずっとあるわけではないです。(何気なく時たまありますが……。)普通にファンタジーです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラス転移で神様に?
空見 大
ファンタジー
空想の中で自由を謳歌していた少年、晴人は、ある日突然現実と夢の境界を越えたような事態に巻き込まれる。
目覚めると彼は真っ白な空間にいた。
動揺するクラスメイト達、状況を掴めない彼の前に現れたのは「神」を名乗る怪しげな存在。彼はいままさにこのクラス全員が異世界へと送り込まれていると告げる。
神は異世界で生き抜く力を身に付けるため、自分に合った能力を自らの手で選び取れと告げる。クラスメイトが興奮と恐怖の狭間で動き出す中、自分の能力欄に違和感を覚えた晴人は手が進むままに動かすと他の者にはない力が自分の能力獲得欄にある事に気がついた。
龍神、邪神、魔神、妖精神、鍛治神、盗神。
六つの神の称号を手に入れ有頂天になる晴人だったが、クラスメイト達が続々と異世界に向かう中ただ一人取り残される。
神と二人っきりでなんとも言えない感覚を味わっていると、突如として鳴り響いた警告音と共に異世界に転生するという不穏な言葉を耳にする。
気が付けばクラスメイト達が転移してくる10年前の世界に転生した彼は、名前をエルピスに変え異世界で生きていくことになる──これは、夢見る少年が家族と運命の為に戦う物語。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる