59 / 93
海編
59.レーダーの弱点
しおりを挟むワイルド・イーグルス隊が放った20発のAIM-120D AMRAAMは見事目標に命中していた。
「ターゲットキル!目標全機撃墜!」
「WE12、WE1、ピクチャー、ボギー2グループス、ブルズアイ1-8-0、フォー0-7-0、ノースターゲット・エンジェルス6、サウスターゲット・エンジェルス6.5!敵機数80!」
「何だと?敵は20機じゃなかったのか?」
「わかりません!」
敵を撃破してほっと一息と思いきや、急にレーダー上に80機もの敵が現れたのであった。
これを見た誰もが焦り、動揺が広がっていた。
当初20機だったはずの敵が80機に増えた理由は、そもそも敵機は100機居たのだが5機ずつ密集して飛んでいたのでそれがレーダーには一つの目標として見えてしまっていたのだった。今こうしてレーダーに80機一気に写り込んだのは、先ほどのミサイル直撃を受け隊列が乱れバラバラになったので、そうなったことでようやく一つ一つの目標をとらえたからだ。
「目標さらに接近!BE1!聞こえてるか?敵が80機も向かってきているぞ!どういうことだ!?」
「暫し待て、司令につなぐ」
そのころ、空母でもこの情報を受け、空母艦内のCDC(戦闘指揮センター)は軽くパニックに陥っていた。
このCDCには空母周辺にいる艦艇だけではなく、空母から発艦した艦載機を指揮できる能力があり、遠く離れた艦載機のレーダーからの情報を共有し、そのデータを分配提供することができる、これを今はLiSMの戦術データリンクシステム(略称 TDLS)によって行っている(艦隊と艦載機全部に移植して衛星通信がでいるようにしている)。
その情報はCDC内の各大型ディスプレイにリアルタイムで表示されている。
「敵は急にわいてきたのか?!」
「いや、わからない、最初はレーダーでは正確にとらえていたはずなんだが……」
「どうした?何があった?」
作戦の状況の報告が何も上がってこなかったので不思議に思って降りてきたベイル艦長は、CDCでの慌てように何かがあったのかと察し彼は、それに対してこの艦を守るため部下を守るための当たり前のこととして介入しようとしていた。
「艦長ここはあなたの出る幕ではない!」
「ウィスティリア、貴様どういうつもりだ?」
「そのままの意味です艦長、これは航空隊の問題です!」
ウィスティリアはこの作戦を今まで散っていった仲間の為に絶対成功させなければというプレッシャーとコンダート王国初の航空部隊を預かった身として強い責任感をもって動かしていた。それを邪魔されると思いこの発言に至ったのだが、それよりもこの作戦を自分の手だけで成功させたいという意地が感情として大きく出てしまったようだ。
「何だと?私はこの艦を預かっているんだぞ?このことが悪化すれば私の部下も君の部下も危険にさらすことになるんだぞ?このことを対処しないで放っておく艦長がどこにいる?」
「いいえ、まだ私一人でやれます!スレイリィ聞こえるか私だ、すぐにミサイルを撃たせろ!」
「待て!今すぐ引き返してこい!こちらに戻ればイージス艦の対空攻撃で落とせる!」
「二人とも落ち着け、今はこk……」
「「しかし!」」
「うるさい!!こんな時に何を争っている!そんなことをしていたら多くの部下を死なせるんだぞ?つべこべ言わずに指揮を俺に変わらせろ!」
何か嫌な予感がすると思った俺は、艦長より少し遅れてCDCに入っていた、そこで航空隊トップと艦長がやりあっていたので、すぐさま指揮権をはく奪し俺自身が指揮を執ることにした。
「「はっ!」」
「それとお前らは後ろで立って見てろ!」
「「……」」
「返事は!」
「「はっ!承知しました!」」
「よろしい、EB1、指揮はたった今俺に移った、これより俺の指示に従え」
「EB1了解、何かあったのでしょうか?」
「何でもない、現在の敵との距離は?」
「敵との距離現在50海里、なおも接近中、いかがされますか?」
「戦闘隊全機のミサイルをもって撃破しろ!一匹たりとも撃ち漏らすなよ!」
「EB1了解、作戦実行いたします」
「EB1、オールWE、ボギー40シップス、ブルズアイ1-8-0、フォー0-4-0、ターゲット・エンジェルス6、ベアリング0-2-0(貴機より20海里)、フォー0-4-0」
「EB1、オールRR、ボギー40シップス、ブルズアイ1-8-0、フォー0-4-0、ターゲット・エンジェルス6.5、ベアリング0-3-0、フォー0-4-0」
「WB1、ウィルコ(了解)」
「RR1、ウィルコ」
「EB1、全機攻撃開始!」
その命令が発したのと同時に、すでにワタの操作によって割り振られていた目標に対してミサイルが一斉に飛んで行った。
第一斉射で50機を落とした、それを受け流石に敵もこちらの攻撃だと気づいたのかこちらに突っ込んでくるようにスピードを上げてきていた、ただそれも次の攻撃によって沈黙させられていた。
この攻撃によって敵は成す術もなくこの空に消えていった。
現場にいる兵にとっては今起きていることと自分が行った結果人を殺めたという実感がわかず、さらにはまたさっきと同じことが起きるのではないかと思い疑心暗鬼に駆られている。
ときは少しさかのぼり、二手に分かれた竜騎兵連隊は味方のいる方向を目指していた“はず”であった。
というのも、さっきの攻撃による混乱で方向を見失ってしまっていて、今は本来戻るはずであった方向とは逆の方向に進んでいってしまっていた。つまりは自ら敵陣に意図せず突っ込んでいっている状況に陥っていた。
しかし、前方のことがレーダーのように感知できるといえどたかが20㎞程度なので方向があっていることを確認することに全く寄与しない。
そんなことを思っていると再び、レーダーもどきにさっきと同じ“何か”が近づいてきているのが反応を示したようだ。
「副隊長!またです!」
「何がだ!」
「さっきとおんなじものが飛んできています!!」
「何だと?こっちは味方の艦艇がいる方向だぞ!?」
「反応さらに接近!回避!回避っ!」
回避行動を行い始めた時には時はすでに遅く、次の瞬間には副隊長が引き連れていた40機がすべて消え去っていた。
それと同時に隊長が率いている方にも攻撃が殺到し10機に着弾した。
「隊長!今ので10機がやられました!」
「副隊長応答しません!ほかの隊員からも応答ありません!」
「あっちは全滅したか……もしかしたらこっちの方向は敵の部隊がいる方向なのかもしれん!」
「隊長!意見を具申します!残る30機で反撃を仕掛けましょう!さすれば敵も驚いて浮足立つに違いありません!」
「そうだな、そうしよう、やられたままではやられていった彼らに示しがつかないしな!」
「また来ます!」
「なっt」
再びの攻撃によって帝国第一偵察竜騎兵連隊はこの世から完全にいなくなってしまった。
「敵機全機撃墜を確認!全機帰投を開始せよ!」
「EB1、ラジャー、当機は燃料が切れるギリギリまでこの空域を警戒監視します」
「わかった、RR1から順にWE20まで着艦せよ」
「ラジャー、RTB(Return To Base:帰投する)!」(全機)
これによって、コンダート王国にとって初の、そして歴史的な一戦を勝利で飾ることができた。しかし、今回のようにレーダーを信用しすぎることが原因による敵の数の誤認、さらに指揮や運用面でも問題がまだあり、このままだともっと複雑な戦闘がおこったときの対処ができなくなることや陸軍との連携がうまくいかなくなる可能性が出てくる。
しかし、彼らもこの後、これ以上の予想外の出来事が起こるなどとは夢にも思っていなかった
10
お気に入りに追加
515
あなたにおすすめの小説

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜
水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。
その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。
危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。
彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。
初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。
そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。
警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。
これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。
果たして、阿宮は見知らぬ世界でどう生きていくのか————。
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています

転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件
月風レイ
ファンタジー
普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。
そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。
そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。
そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。
そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。
食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。
不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。
大修正中!今週中に修正終え更新していきます!
異世界転移した町民Aは普通の生活を所望します!!
コスモクイーンハート
ファンタジー
異世界転移してしまった女子高生の合田結菜はある高難度ダンジョンで一人放置されていた。そんな結菜を冒険者育成クラン《炎樹の森》の冒険者達が保護してくれる。ダンジョンの大きな狼さんをもふもふしたり、テイムしちゃったり……。
何気にチートな結菜だが、本人は普通の生活がしたかった。
本人の望み通りしばらくは普通の生活をすることができたが……。勇者に担がれて早朝に誘拐された日を境にそんな生活も終わりを告げる。
何で⁉私を誘拐してもいいことないよ⁉
何だかんだ、半分無意識にチートっぷりを炸裂しながらも己の普通の生活の(自分が自由に行動できるようにする)ために今日も元気に異世界を爆走します‼
※現代の知識活かしちゃいます‼料理と物作りで改革します‼←地球と比べてむっちゃ不便だから。
#更新は不定期になりそう
#一話だいたい2000字をめどにして書いています(長くも短くもなるかも……)
#感想お待ちしてます‼どしどしカモン‼(誹謗中傷はNGだよ?)
#頑張るので、暖かく見守ってください笑
#誤字脱字があれば指摘お願いします!
#いいなと思ったらお気に入り登録してくれると幸いです(〃∇〃)
#チートがずっとあるわけではないです。(何気なく時たまありますが……。)普通にファンタジーです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
うちの冷蔵庫がダンジョンになった
空志戸レミ
ファンタジー
一二三大賞3:コミカライズ賞受賞
ある日の事、突然世界中にモンスターの跋扈するダンジョンが現れたことで人々は戦慄。
そんななかしがないサラリーマンの住むアパートに置かれた古びた2ドア冷蔵庫もまた、なぜかダンジョンと繋がってしまう。部屋の借主である男は酷く困惑しつつもその魔性に惹かれ、このひとりしか知らないダンジョンの攻略に乗り出すのだった…。

クラス転移で神様に?
空見 大
ファンタジー
空想の中で自由を謳歌していた少年、晴人は、ある日突然現実と夢の境界を越えたような事態に巻き込まれる。
目覚めると彼は真っ白な空間にいた。
動揺するクラスメイト達、状況を掴めない彼の前に現れたのは「神」を名乗る怪しげな存在。彼はいままさにこのクラス全員が異世界へと送り込まれていると告げる。
神は異世界で生き抜く力を身に付けるため、自分に合った能力を自らの手で選び取れと告げる。クラスメイトが興奮と恐怖の狭間で動き出す中、自分の能力欄に違和感を覚えた晴人は手が進むままに動かすと他の者にはない力が自分の能力獲得欄にある事に気がついた。
龍神、邪神、魔神、妖精神、鍛治神、盗神。
六つの神の称号を手に入れ有頂天になる晴人だったが、クラスメイト達が続々と異世界に向かう中ただ一人取り残される。
神と二人っきりでなんとも言えない感覚を味わっていると、突如として鳴り響いた警告音と共に異世界に転生するという不穏な言葉を耳にする。
気が付けばクラスメイト達が転移してくる10年前の世界に転生した彼は、名前をエルピスに変え異世界で生きていくことになる──これは、夢見る少年が家族と運命の為に戦う物語。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる