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外伝 レナ編
44.外伝 レナ編 王立士官学校
しおりを挟む関所から護衛に連れられて数時間歩くと大きな門へとたどり着いた。
この王都アルダート城は町全体を厚い城壁に完全に囲まれ町の中がうかがえないほどの背の高い城壁の周辺や門の上を24時間常に監視されているようだ。
ここでも同じように関所のようなものが設けられその前にはすでに入城を待つ多くの人々が列をなしていた。
私も同じように並ぶのかと思いきや護衛の兵士の人によると兵士や大商人、ギルドの上層部や貴族専用の門があるようなのでそこを通ることにした。
大蛇のように連なった人々の列を横目にその門へと連れていかれたが、そこでも少しばかりか列が出来ていた。
ここも本来であれば列に並び、何かしらの身分証明書等を提示しなければならないのだが、護衛の兵士たちはその列さえ素通りし兵隊専用の場所に向かった。
門を通り抜けてすぐにある待合室のようなところに通された、その入った部屋には普段では直接会うはずもないであろう人が待っていた。
「初めまして!レナ、私はこの国の“第一王女”のコンダート・メリアですわ、無理やりな形で“こちら”によんでしまってごめんなさい、ひとまず話がしたくて今日はここに来たの」
そこにいたのは何を隠そうこの国の第一王女だった、今はお忍びで来ているのか亜麻色のボロい外套を肩から羽織っていた、ただ時よりその隙間から除く真紅のドレスは王族や貴族の豪華さを感じる。
レナに至ってはなんのことだかさっぱりわからない上に雲の上の存在のような人が目の前にいるので目を見開いたまま身じろぎもせず固まってしまっていた。
レナが固まっている間部屋にいたお付の人達は去り、二人だけになった。
「さて、人のいなくなったところで……って、フフフッ、レナいつまで固まっているの?」
「はっ、失礼しました、なんのことだかさっぱりで……」
「急に驚かせたみたいでごめんなさいね、あなた自身ならわかると思うけど“前の世界”の記憶はあるかしら?」
それを聞いたレナは再びの硬直と沈黙
「その様子だとあるようね、そうよ呼んだのは私、あの時不幸なことに死んでしまったあなたの魂ををこの世界に呼びよせて生まれ変わって生きてほしいって思ったの、こちらの都合だけで呼び寄せてしまったことは謝るは本当にごめんなさいでもこんなことをしなくてはならないほどこの国は帝国によって攻められ困っているの、呼んだ理由の一つはあなたの最近の趣味だったことなの」
そこまで言い終わったメリアは後ろにあった木箱からおよそこの世界のものとは思えない黒い物体を二つ取り出した、それをメリアはレナに渡してきた。
驚いたことにそれは前の世界で見たHK416A6とHKVP9であった、といってもエアガンでだけであったが、今や実銃と比べてみても外観だけでは判断できないぐらいに精巧に作られているものであったのでまず間違いはないだろう。
「これは最初の召喚の時に出てきたものよ、最初は失敗してよくわからない物体が出てきてしまったと思ってがっかりしたけど何回か繰り返していくうちにこんなものも出てきたの、私たちには使い方がわからなくて……」
(なんでこんなものがこの世界に!?でも……)
「ちょっと失礼しますね」
「ええ、いいわ、それはもうあなたもものだから」
そういうとレナはおもむろにいじり始めた。そこで彼女は実銃と確認するのに手っ取り早くて安全な方法なやり方としていち早く弾倉を抜き取ることをした、こうすることによってBB弾を撃つものなのか実弾を撃つのかが確実にわかる(銃口を正面から覗くことででもわかることにはわかるがハイリスクすぎる)。
そして弾薬が薬室内に入っていないかどうかを確認するために両方とも弾倉を抜いたままVP9であればスライドを完全に引ききり、HK416の場合チャージングハンドルを引く、こうするともし薬室内に弾薬が装填されていてもエキストラクターによって排出される。この動作をしたら案の定弾薬が入ったままだったらしく両方とも勢いよく飛び出してきた。
「やっていることの意味は分からないけど、手つきを見る限りそれの扱いに関しては慣れているようね!」
「はい、実際に“本物”は使ったことはないですが知識としてはあったので……お話の腰を折るようで申し訳ないのですが私の学校についてはどうなるのでしょうか?」
「あら、ごめんなさいついその物体に興味がいってしまっていて、そのことは学長が説明してくれるわ!それとこの“銃”と呼ばれるものにもう一人興味を持っている人でもあるの!ねぇ学長?」
メリアがそういうと話が聞こえていたのか、その瞬間扉が開き男性が入ってきた。
部屋に入ってきたのはスキンヘッドでムキムキのいかついおっさんだった、そのおっさんの腕や顔に大きな傷がありいかにも数々の激戦を生き抜いてきた人という印象だ。
(元の世界だったら絶対ヤ○ザだよねこの人)
「初めましてレナさん!これから入ってもらう王立士官学校の学長のドリバン・ザザミーだよろしくね!」
「あ、はい!よろしくお願いします!」
(あれ?見た目に反して好印象なんだけど!しかもウインクしてるし!!)
「紹介が遅れてごめんね本当だったらこの部屋に入ったら私から話をしてあげないといけなかったんだけど、どうしてもってメリア“お嬢様”いうもんだから」
「もう!ドリバン!やめてよその言い方!」
「これは失敬!王女様」
「ごめんなさいね、この人はこうやって今は学長をやっているけど、これと同時に近衛軍の将軍もやっているの!」
「そ、そんなすごい人だったんですね!」
「あー、て言ってももう現場には出てないけどね!アハハハッ!」
(この人お茶目なところもあるんだ)
このドリバン・ザザミーという男は王立士官学校の学長であり王直属の近衛軍の最高指揮官でもある。顔の傷や腕の傷は数々の戦場でついたものだが、こんなにも傷が多いのは常に先頭に立ち単騎で敵陣に突っ込んでいくからなのだそうだ、しかもどんなにけがを負ったとしても必ず戻ってくるというある意味イカれた人だ、そんな彼の戦闘能力はけた違いで立った一人だけで1000人と相手しても難なく撃破するほどでまさに一騎当千である。しかし、現在は目立った戦闘が怒っていないのでその任につくことがなくなっているため、今は今後の王国の未来を行く若者たちに対して教えを施そうとこの学校で仕事をしている。それとは別に兵器研究も行っていてその一環として丁度今は“銃”の研究をしている(実際にHK416とVP9を実射試験した)、そのためこの世界で一番銃に対して理解があるようで、近い将来各学科で銃の知識・運用・戦術を教えられたらと考えているらしい。
そんなことはともあれ、この王立士官学校は陸軍所管の教育機関でこの学校を卒業とともにそのまま新任士官として軍に配属される、所謂エリートコースの入り口だ。そしてこの学園は三つの学科にわかれていて歩兵科・騎兵科・魔法科となっている。
話が一段落するとすぐにそのまま学校へと案内された。ここはアルダート城のすぐ脇にあり敷地は軍の演習場にも隣接している。
いきなりのことでいまだに状況の呑み込めないレナだが、王女にもらったこの二つの銃を手に自分の明るい未来のために進んでいくと決意したのであった。
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