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9.それでダメだったなら、もう彼には見切りをつけます。
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──恥ずかしい!
一通り泣いて、涙が枯れてくると、何だか胸がすっきりとした気持ちになった。けれど、次にはじわじわと羞恥の熱が込み上げてきて、私は顔を上げられなくなってしまった。
寄り添うような優しい言葉をかけられたのが久しぶりだったからか、私な散々子供のように泣いて、ドロクやクローバー嬢の不満や悪口をこれでもかと口にしていた。
ちょっとは人の話を聞けとか、婚約者のいる相手に色目を使うなとか、冷静になって常識というものを考えろとか、校内で人目も憚らずイチャつくなとか、最後ら辺は感情が高ぶり過ぎて、何で私があの馬鹿のために罵られ、突き飛ばされながら、何度も忠告してやらりゃならんのだ! ふざけんな! ──と。伯爵家の娘らしからぬ言葉遣いをしてしまい、猛省する。
そんな醜態を清く、正しく、美しいを地で行く生徒会の方々に見せてしまったのだ。
もういっそのこと、この場から消えてなくなりたい!
「う~!」
「大丈夫大丈夫~。泣きたい時は、い~っぱい泣いていいんだよ~?」
羞恥心から上がった唸り声を泣き声と勘違いしたらしく、メルティア嬢に優しい声で頭を撫でられた。
いえ、違うんです。顔を上げられないだけです。
「す、すみません・・・・・・もう大丈夫で──ずぶっ!」
ずっとこうしている訳にもいかないと、何とかくしゃくしゃになっているであろう顔を出来るだけ整えて顔を上げると、顔に何やら温かいものが覆い被さって来た。
「そのままだと目が腫れる。使え」
そう言って副会長が投げて寄越したこは、ほかほかの蒸しタオルだった。
「ありがとうございます・・・・・・」
お礼を言って、蒸しタオルを目に当てる。瞼越しにじんわりとした温かさが伝わって、何だかほっとする。
にしても副会長、蒸しタオルなんていつの間に──。
あまりの手際の良さに驚きつつ、蒸しタオルを顔から話すと、目の前で私を見上げるように生徒会長がしゃがみこんでいた。
きゅっと、膝に乗せていた方の手を握られる。
生徒会長の手は、蒸しタオルよりも温かくて心地よく感じた。
「落ち着いた?」
「すみません・・・・・・酷い姿を見せました」
そう言うと、生徒会長は二度、首を横に振った。
「全然。君の言ったことも、やったことも間違ってないんだから。泣くことも怒ることも、恥ずべきことじゃないよ」
肯定されることを嬉しく思う。
こんな風に話を聞いて貰えただけで、大分楽になった。
それから、ドロクのことを考える。
冷静に考えれば、ドロクとの関係の修復は無理だ。
このまま三ヶ月が過ぎて、ドロクがクローバー嬢と別れても、私はドロクに言われたこと、されたことを忘れることは出来ないだろう。
とりあえず、今はドロクに何を言っても無駄だし、どうするかは三ヶ月経ってから考える!
半ば思考放棄だが、そもそも現状では会話自体成立していないのだから仕方ない。
けど、その前に──。
私はある決意をした。
「もう一度だけ、ドロクと話してみます。それでダメだったなら、もう彼には見切りをつけます」
これが本当の最後の最後だ。
今までダメだったんだから、成功するなんて思ってない。これは私のけじめのためだ。
あんなんでも婚約者。
ちゃんと向き合って、思ってることをはっきり言って、それできっぱり切り捨てよう。
ドロク、これが最後の忠告です。
一通り泣いて、涙が枯れてくると、何だか胸がすっきりとした気持ちになった。けれど、次にはじわじわと羞恥の熱が込み上げてきて、私は顔を上げられなくなってしまった。
寄り添うような優しい言葉をかけられたのが久しぶりだったからか、私な散々子供のように泣いて、ドロクやクローバー嬢の不満や悪口をこれでもかと口にしていた。
ちょっとは人の話を聞けとか、婚約者のいる相手に色目を使うなとか、冷静になって常識というものを考えろとか、校内で人目も憚らずイチャつくなとか、最後ら辺は感情が高ぶり過ぎて、何で私があの馬鹿のために罵られ、突き飛ばされながら、何度も忠告してやらりゃならんのだ! ふざけんな! ──と。伯爵家の娘らしからぬ言葉遣いをしてしまい、猛省する。
そんな醜態を清く、正しく、美しいを地で行く生徒会の方々に見せてしまったのだ。
もういっそのこと、この場から消えてなくなりたい!
「う~!」
「大丈夫大丈夫~。泣きたい時は、い~っぱい泣いていいんだよ~?」
羞恥心から上がった唸り声を泣き声と勘違いしたらしく、メルティア嬢に優しい声で頭を撫でられた。
いえ、違うんです。顔を上げられないだけです。
「す、すみません・・・・・・もう大丈夫で──ずぶっ!」
ずっとこうしている訳にもいかないと、何とかくしゃくしゃになっているであろう顔を出来るだけ整えて顔を上げると、顔に何やら温かいものが覆い被さって来た。
「そのままだと目が腫れる。使え」
そう言って副会長が投げて寄越したこは、ほかほかの蒸しタオルだった。
「ありがとうございます・・・・・・」
お礼を言って、蒸しタオルを目に当てる。瞼越しにじんわりとした温かさが伝わって、何だかほっとする。
にしても副会長、蒸しタオルなんていつの間に──。
あまりの手際の良さに驚きつつ、蒸しタオルを顔から話すと、目の前で私を見上げるように生徒会長がしゃがみこんでいた。
きゅっと、膝に乗せていた方の手を握られる。
生徒会長の手は、蒸しタオルよりも温かくて心地よく感じた。
「落ち着いた?」
「すみません・・・・・・酷い姿を見せました」
そう言うと、生徒会長は二度、首を横に振った。
「全然。君の言ったことも、やったことも間違ってないんだから。泣くことも怒ることも、恥ずべきことじゃないよ」
肯定されることを嬉しく思う。
こんな風に話を聞いて貰えただけで、大分楽になった。
それから、ドロクのことを考える。
冷静に考えれば、ドロクとの関係の修復は無理だ。
このまま三ヶ月が過ぎて、ドロクがクローバー嬢と別れても、私はドロクに言われたこと、されたことを忘れることは出来ないだろう。
とりあえず、今はドロクに何を言っても無駄だし、どうするかは三ヶ月経ってから考える!
半ば思考放棄だが、そもそも現状では会話自体成立していないのだから仕方ない。
けど、その前に──。
私はある決意をした。
「もう一度だけ、ドロクと話してみます。それでダメだったなら、もう彼には見切りをつけます」
これが本当の最後の最後だ。
今までダメだったんだから、成功するなんて思ってない。これは私のけじめのためだ。
あんなんでも婚約者。
ちゃんと向き合って、思ってることをはっきり言って、それできっぱり切り捨てよう。
ドロク、これが最後の忠告です。
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