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7.それでも出来る限りの支えにはなりたい

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「圧力!? クローバー公爵がですか?」

「うん」

 生徒会長が頷く。当時のことを思い出しているのか、沈痛な声だ。

 クローバー嬢は、王国でも名門中の名門であり、最も古い貴族のひとつであるクローバー公爵家の令嬢だ。
 クローバー公爵家は爵位も高く、歴史も古いため、方々に強い権力を持っている。
 歴代当主の中には学園の上役を務めた方々もおり、現在でも学園に最も多く寄付している家でもある。

 確かに、個人間ならともかく、公爵が出てきたら生徒会でも歯が立たないだろう。

 とはいえ、公爵の行動には納得がいかない。

 公爵が一人娘であるクローバー嬢を溺愛しているというのは、社交界では誰もが知っている話だけど、それなら公爵は娘の不貞を咎めるべきだ。
 貴族の筆頭とも言えるクローバー公爵家の令嬢であるクローバー嬢はいわば、全ての貴族令嬢の手本となるべき人だ。なのに、娘可愛さに間違った行いを肯定するような真似は認められない。
 そもそも、学園は生徒の自主性を重んじ、子供だけでは手に負えない事態以外では手を出すことはしてはいけないという不文律がある。

 あまりにも勝手なクローバー公爵の振る舞いに、眉間に皺が寄るのがわかった。

「圧力って具体的にはどんな──?」

「まぁ、色々あったわね」

「う~ん、とにかくクローバー公爵は~? 生徒会を完全に~? 娘をいじめる悪者って認識してたよね~?」

「本当に色々あってね、そこら辺は割愛するけど、簡潔に言えば、生徒会は活動停止するとこまで追い詰められたんだ」

「──!?」

 今度こそ、開いた口が塞がらなかった。

 生徒会を活動停止?

 しつこいようだが、自主性を重んじる我が校では、生徒会が中心に動いていると言っても過言ではない。
 生徒会が機能停止すれば、学校行事、部活動、委員会、そういったことに回される予算管理や校則の改定などなど──それらがまったく回らなくなってしまう。
 そんなの、全校生徒を人質に取られたようなものじゃない・・・・・・。

「じゃあ、それで断念を・・・・・・」

 こう言ってはなんだが、生徒一人の相談のために生徒会を止める訳にはいかないだろう。
 それによって引き起こされる事態を考えれば、どちらを優先させるべきかなんて、火を見るより明らかだ。

「ああ。エルは最後まで何とか抵抗出来ないか走り回っていたんだがな──先に女子生徒の方が限界を迎えて休学した」

「・・・・・・そうですか」

 無理もない。自分の相談から、全校生徒に累を及ぼしかねない事態に発展しかけたのだ。しかも、その原因は婚約者の浮気で、その浮気相手の父親が理不尽な圧力をかけてくるなんて──心が折れても仕方のないことだ。

「あの時ほど、自分の無力さを痛感したことはないよ」

 生徒会長の言葉を最後に、生徒会室に沈黙が降りた──ように思われた。

 しかし、生徒会長はぱっと顔を上げ、立ち上がった。

「けれど、それはそれ。これはこれ。今は君の抱える問題に向き合うべきだ! 正直、こちらの事情は今話した通りだから、どれだけ力になれるかはわからないけれど、それでも出来る限りの支えにはなりたい」

 そう真摯な瞳で、生徒会長が言う。

 ────いや! 今の話を聞かされたら、なおさら相談出来ませんが!!!

 よし、逃げよう。

 すぐさま決断し、ドアに向かって走ろうとした──が。

「うわっ!?」

「急に立ち上がってどうしたの?」

「危ないよ~? 気をつけてね~?」

 ──いつの間にか、両腕をメルティア嬢とアインライン嬢に拘束されており、逃亡は呆気なく失敗に終わった。いや、ほんといつの間に・・・・・・。
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