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12,令嬢は鉄柵を隔てて盗賊団と話をする
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「こんばんは」
こんな時でも、カタリは変わらず微笑んでいる。
檻を挟んだ向こうにいる相手に、まるで道ですれ違い様に挨拶するように、カタリは盗賊団へと話し掛けた。
「何がどうなってるのよ、コレ!?」
何故、宝物庫が空なのか、何故、自分達は閉じ込められているのか、何故、ここにカタリがいるのか。
何もかもが意味不明だとサキは絶叫した。
「──嵌められたのか」
「まぁ、端的に言えばそういうことですね」
首魁の呟きに、カタリは頷く。
完全に罠に嵌まった首魁は、「クッ!」と悔しげな声を漏らした。
「ハァ? 嵌められた? 私たちが? あり得ない
!」
「現に宝物庫は空だろう。事前に別の場所に移したということか・・・・・・忌々しい!」
首魁は唾棄するようにそう吐き捨て、いまだ顔に巻いた布の奥から鋭い眼光でカタリを睨みつける。
しかし、どんな猛獣も檻の中に入っていれば恐くはない。
カタリは臆することなく、にこりとしたまま答える。
「はい。いずれ近いうちに貴方方が宝物庫へ足を踏み入れると踏んでいましたので、予め手を打たせて頂きました。盗賊団のことは伏せ、かつ、仕事が早く、信用の置ける者たちに任せたので、すぐに終わりましたわ」
「想定よりお父様がお怒りだったのには少し焦りましたけど」とカタリは小さな声で付け加える。
王家からの依頼でカタリが使用人を人選し、派遣したのはこのためだった。
盗賊団を宝物庫の罠に閉じ込めるのが真の目的だったが、万一にも真意を知られ、逃げられないよう宝物の移動に関わった者たちにはあくまで宝物庫の老朽化のため、改修工事を行うという嘘の目的を教えた上で、緊く箝口令を敷いた。
盗賊団に宝箱の中身が空だと気づかれては本末転倒のため、この捕縛作戦は今日までカタリを含め、たった数人しか知らないトップシークレットだったのだ。
「いつから気づいていたんだ? サキがヘマでもいたのか?」
「私がヘマする訳ないでしょっ、実際、あのボンクラ王子からは鍵を盗み出せたんだから!」
「あらあら、随分とお元気なのですね。なるほど、そんなにお芝居がお上手なら、盗みなんてしなくてもそれで食べていけたでしょうに──ああ、どんなに演技上手でも人気商売ですから、貴女には難しいでしょうね」
暗に性格が悪いと言われたサキは、囚われの身という状況もあってか沸点が低く、すぐに怒りが爆発した。
「王子に捨てられた女が調子に乗ってんじゃないわよ! このっ、せめてそのムカつく顔をズタズタにして──」
鉄柵の間から腕を伸ばし、カタリの胸ぐらを掴み上げる。
「まぁ」
そこまでされても、カタリは落ち着いていて、物珍しい生き物を見るように怒り狂ったサキの顔をマジマジと観察している。
その時、暗闇から低い声が這うように耳に届いた。
「何をしている?」
その声に、サキは喜びを浮かべた。
「ソウ王子!」
暗闇から分離するように現れたのは、険しい顔をしたソウであった。
こんな時でも、カタリは変わらず微笑んでいる。
檻を挟んだ向こうにいる相手に、まるで道ですれ違い様に挨拶するように、カタリは盗賊団へと話し掛けた。
「何がどうなってるのよ、コレ!?」
何故、宝物庫が空なのか、何故、自分達は閉じ込められているのか、何故、ここにカタリがいるのか。
何もかもが意味不明だとサキは絶叫した。
「──嵌められたのか」
「まぁ、端的に言えばそういうことですね」
首魁の呟きに、カタリは頷く。
完全に罠に嵌まった首魁は、「クッ!」と悔しげな声を漏らした。
「ハァ? 嵌められた? 私たちが? あり得ない
!」
「現に宝物庫は空だろう。事前に別の場所に移したということか・・・・・・忌々しい!」
首魁は唾棄するようにそう吐き捨て、いまだ顔に巻いた布の奥から鋭い眼光でカタリを睨みつける。
しかし、どんな猛獣も檻の中に入っていれば恐くはない。
カタリは臆することなく、にこりとしたまま答える。
「はい。いずれ近いうちに貴方方が宝物庫へ足を踏み入れると踏んでいましたので、予め手を打たせて頂きました。盗賊団のことは伏せ、かつ、仕事が早く、信用の置ける者たちに任せたので、すぐに終わりましたわ」
「想定よりお父様がお怒りだったのには少し焦りましたけど」とカタリは小さな声で付け加える。
王家からの依頼でカタリが使用人を人選し、派遣したのはこのためだった。
盗賊団を宝物庫の罠に閉じ込めるのが真の目的だったが、万一にも真意を知られ、逃げられないよう宝物の移動に関わった者たちにはあくまで宝物庫の老朽化のため、改修工事を行うという嘘の目的を教えた上で、緊く箝口令を敷いた。
盗賊団に宝箱の中身が空だと気づかれては本末転倒のため、この捕縛作戦は今日までカタリを含め、たった数人しか知らないトップシークレットだったのだ。
「いつから気づいていたんだ? サキがヘマでもいたのか?」
「私がヘマする訳ないでしょっ、実際、あのボンクラ王子からは鍵を盗み出せたんだから!」
「あらあら、随分とお元気なのですね。なるほど、そんなにお芝居がお上手なら、盗みなんてしなくてもそれで食べていけたでしょうに──ああ、どんなに演技上手でも人気商売ですから、貴女には難しいでしょうね」
暗に性格が悪いと言われたサキは、囚われの身という状況もあってか沸点が低く、すぐに怒りが爆発した。
「王子に捨てられた女が調子に乗ってんじゃないわよ! このっ、せめてそのムカつく顔をズタズタにして──」
鉄柵の間から腕を伸ばし、カタリの胸ぐらを掴み上げる。
「まぁ」
そこまでされても、カタリは落ち着いていて、物珍しい生き物を見るように怒り狂ったサキの顔をマジマジと観察している。
その時、暗闇から低い声が這うように耳に届いた。
「何をしている?」
その声に、サキは喜びを浮かべた。
「ソウ王子!」
暗闇から分離するように現れたのは、険しい顔をしたソウであった。
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