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4,少女は王子にお願いして黄金郷を見る
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「わぁ! すごいキラキラしてる!」
一面の輝きにサキは瞳を輝かせた。
時刻はカタリが薔薇園でトーマと出会っている頃。
婚約破棄をした日から、サキは毎日のようにソウに呼ばれ、王宮を訪れていた。
そして、今日。サキは一度見てみたいとソウにお願いして、王宮の宝物庫へと入れて貰った。
中には歴史的価値のある本や異国の変わった陶芸品等が保管されているが、何よりサキが目を奪われたのはキラキラと輝く金銀財宝や眩い宝石のアクセサリーだった。
「私、こんなに金銀や宝石が沢山あるところを初めて見ました! 感動です!」
「喜んで貰えてよかったよ。俺はいつでも宝物庫に入れるから、来たい時は言ってくれ。いつでも鍵を開けてやろう」
そう言って、ソウは金で出来た宝物庫の鍵をくるんと手の上で回した。
王家の宝物庫の鍵は五本あり、代々番人、国王、王太子、第一王子、第二王子が管理する習わしだった。もし、第一王子か第二王子が王太子だった場合は国王が二本管理することになっている。当代では王太子はソウの兄である第一王子のため、鍵の管理者は四人だ。
「ありがとうございます! そういえば、最近は隣国で例の盗賊団が出たようですね。こんなに一ヶ所に宝物を集めておいて大丈夫なんですか?」
周辺諸国を騒がす盗賊団の存在に、サキは心配そうに言った。
「問題ない。この宝物庫はこの国の頭脳と建築技術の粋を投じて建てた特別製で、鍵がなければ罠が発動する」
「わぁ! どんな罠なんですか?」
「知らん。今まで、賊が侵入したことなどないからな。何にしろ、盗賊たちがこの宝物庫から何かを盗むことは不可能だ。誰も鍵を盗まれるようなヘマはしないだろうからな! さて、そろそろいいか?」
「はい。ありがとうございました」
「早く部屋に戻って、茶にしよう」
部屋に戻ったソウは、宝物庫の鍵を鉄製の小さな箱に入れると、机の引き出しにしまい、既に座っていたサキの隣に腰を下ろした。
「──っ!」
「どうした?」
紅茶を一口含んだサキが、小さく呻き、口元を押さえた。
「いえ。この紅茶、私には少し苦くて」
「そうか。悪いが、砂糖を持ってきてくれ」
侍女にそう頼み、ソウは手ずから入れた水をサキに差し出す。
「はぁ。ソウ様はよく、こんな苦い紅茶が飲めますね」
「ああ。俺は飲食にこだわりないから、昔からカタリの好みに合わせたものを飲み食いしてたからな。にしても、そんなに苦かったのか。この紅茶」
よく分からないなと、紅茶を飲んでみてソウは首を傾げる。
カップをソーサーに戻し、サキの方を見ると、サキは俯いていた。
「サキ? どうかしたか?」
「ソウ様・・・・・・」
「ん? どうした?」
ソウは優しく、サキに何でも言ってみろと促した。
「ソウ様は私のことを愛してくれていますか?」
「ああ、もちろん。世界で一番愛しているよ!」
「カタリ様よりも?」
「当然だ。じゃないと婚約破棄なんてしない」
「私のどこが好きですか?」
「・・・・・・そうだな。サキはカタリよりも従順で口うるさくないし、しとやかだ。俺の理想だよ」
「そ、そうですか」
ソウに好きなところを言われ、サキは照れたように頬を赤らめた。
それから、きゅっとソウの袖を摘まみ、お願いをする。
「その、ソウ様。あまりカタリ様の名前を呼んだり、カタリ様と話さないで下さい。私はただの平民ですから、いつソウ様のお心がカタリ様に戻るかと不安なのです」
「サキ──そうか。すまなかった」
サキが何を不安に思っているかに気づき、ソウはぎゅっと力強くサキを抱き締めた。
熱い包容を受け、サキもおずおずとソウの背中に腕を回す。
ソウはサキの頭を撫でながら、断言した。
「安心しろ。俺の心が変わることなんてないから」
一面の輝きにサキは瞳を輝かせた。
時刻はカタリが薔薇園でトーマと出会っている頃。
婚約破棄をした日から、サキは毎日のようにソウに呼ばれ、王宮を訪れていた。
そして、今日。サキは一度見てみたいとソウにお願いして、王宮の宝物庫へと入れて貰った。
中には歴史的価値のある本や異国の変わった陶芸品等が保管されているが、何よりサキが目を奪われたのはキラキラと輝く金銀財宝や眩い宝石のアクセサリーだった。
「私、こんなに金銀や宝石が沢山あるところを初めて見ました! 感動です!」
「喜んで貰えてよかったよ。俺はいつでも宝物庫に入れるから、来たい時は言ってくれ。いつでも鍵を開けてやろう」
そう言って、ソウは金で出来た宝物庫の鍵をくるんと手の上で回した。
王家の宝物庫の鍵は五本あり、代々番人、国王、王太子、第一王子、第二王子が管理する習わしだった。もし、第一王子か第二王子が王太子だった場合は国王が二本管理することになっている。当代では王太子はソウの兄である第一王子のため、鍵の管理者は四人だ。
「ありがとうございます! そういえば、最近は隣国で例の盗賊団が出たようですね。こんなに一ヶ所に宝物を集めておいて大丈夫なんですか?」
周辺諸国を騒がす盗賊団の存在に、サキは心配そうに言った。
「問題ない。この宝物庫はこの国の頭脳と建築技術の粋を投じて建てた特別製で、鍵がなければ罠が発動する」
「わぁ! どんな罠なんですか?」
「知らん。今まで、賊が侵入したことなどないからな。何にしろ、盗賊たちがこの宝物庫から何かを盗むことは不可能だ。誰も鍵を盗まれるようなヘマはしないだろうからな! さて、そろそろいいか?」
「はい。ありがとうございました」
「早く部屋に戻って、茶にしよう」
部屋に戻ったソウは、宝物庫の鍵を鉄製の小さな箱に入れると、机の引き出しにしまい、既に座っていたサキの隣に腰を下ろした。
「──っ!」
「どうした?」
紅茶を一口含んだサキが、小さく呻き、口元を押さえた。
「いえ。この紅茶、私には少し苦くて」
「そうか。悪いが、砂糖を持ってきてくれ」
侍女にそう頼み、ソウは手ずから入れた水をサキに差し出す。
「はぁ。ソウ様はよく、こんな苦い紅茶が飲めますね」
「ああ。俺は飲食にこだわりないから、昔からカタリの好みに合わせたものを飲み食いしてたからな。にしても、そんなに苦かったのか。この紅茶」
よく分からないなと、紅茶を飲んでみてソウは首を傾げる。
カップをソーサーに戻し、サキの方を見ると、サキは俯いていた。
「サキ? どうかしたか?」
「ソウ様・・・・・・」
「ん? どうした?」
ソウは優しく、サキに何でも言ってみろと促した。
「ソウ様は私のことを愛してくれていますか?」
「ああ、もちろん。世界で一番愛しているよ!」
「カタリ様よりも?」
「当然だ。じゃないと婚約破棄なんてしない」
「私のどこが好きですか?」
「・・・・・・そうだな。サキはカタリよりも従順で口うるさくないし、しとやかだ。俺の理想だよ」
「そ、そうですか」
ソウに好きなところを言われ、サキは照れたように頬を赤らめた。
それから、きゅっとソウの袖を摘まみ、お願いをする。
「その、ソウ様。あまりカタリ様の名前を呼んだり、カタリ様と話さないで下さい。私はただの平民ですから、いつソウ様のお心がカタリ様に戻るかと不安なのです」
「サキ──そうか。すまなかった」
サキが何を不安に思っているかに気づき、ソウはぎゅっと力強くサキを抱き締めた。
熱い包容を受け、サキもおずおずとソウの背中に腕を回す。
ソウはサキの頭を撫でながら、断言した。
「安心しろ。俺の心が変わることなんてないから」
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