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1,令嬢は微笑んで婚約破棄を受け入れた
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「俺はこのサキを新たな婚約者とすることにした! よって、お前との婚約は破棄するぞ、カタリ!」
宮廷のど真ん中で、堂々と宣言したのは、この国の第二王子であるソウ。
婚約破棄を告げられたのは、公爵令嬢であるカタリであった。
ソウの腕の中には、一人の少女が抱かれており、はらはらとした様子で事の成り行きを見守っている。
周りにいた臣下やたまたま王宮を訪れていた貴族たちも、これはどういうことかと驚いている。
一方、カタリは冷静で、まるでこうなることが分かっていたかのように、にこりと微笑んで訊ねた。
「その方──最近、ソウ殿下が親しくされていた方ですわね。お名前はサキさん、とおっしゃったかしら? 彼女を愛しておられるのですね」
「そうだ」
「あ、あの──その、私──!」
サキという少女はあたふたして、何か言おうとしたが、ソウが制止する。
「サキは何も言わなくていい。カタリ、わかっているな?」
ソウがカタリをじっと見据える。その視線は、すべきことはわかっているな? と命令しているかのようだった。
その視線に怯えることもなく、カタリはカーテシーを取る。
「お慶び申し上げます。ソウ殿下とサキさんの幸せを願い、婚約破棄のお話、お受けしますわ」
カタリは、いつ今しがた婚約破棄を告げられたとは思えない程の美しい微笑みで、こんな場面だというのに、つい見惚れてしまう者もいた。
ソウ王子が、婚約者とは別の少女にうつつを抜かしているという噂、少し前から立っていた。
しかし、誰もが火遊び程度のものだと思っていた。
何故なら、婚約者であるカタリは、王家に次いで力を持つダマシュ公爵家の令嬢であるからだ。
ソウがダマシュ公爵の怒りを買うことは免れないだろう。
今後、宮廷の勢力図の変化する可能性がある。その場にいる者たちは、誰に付くのが自身にとって有益かを即座に考え始めた。
「そうか。手続きは俺がしておこう。用件はそれだけだ。もう帰っていいぞ。さぁ、サキ、行こう」
「は、はい・・・・・・」
ソウはサキの肩を抱き、歩き出す。恐らく、彼の部屋に向かうのだろう。
サキはされるがままで、一瞬、カタリの方を振り返ったが、すぐに前を向き、ソウに身を任せた。
その唇には、僅かに喜びが溢れている。
「上手くいくよう、お祈り申し上げますわ」
ざわめく宮廷の中で、遠ざかるソウたちの背中を見つめ、カタリだけが静かに微笑んでいた。
宮廷のど真ん中で、堂々と宣言したのは、この国の第二王子であるソウ。
婚約破棄を告げられたのは、公爵令嬢であるカタリであった。
ソウの腕の中には、一人の少女が抱かれており、はらはらとした様子で事の成り行きを見守っている。
周りにいた臣下やたまたま王宮を訪れていた貴族たちも、これはどういうことかと驚いている。
一方、カタリは冷静で、まるでこうなることが分かっていたかのように、にこりと微笑んで訊ねた。
「その方──最近、ソウ殿下が親しくされていた方ですわね。お名前はサキさん、とおっしゃったかしら? 彼女を愛しておられるのですね」
「そうだ」
「あ、あの──その、私──!」
サキという少女はあたふたして、何か言おうとしたが、ソウが制止する。
「サキは何も言わなくていい。カタリ、わかっているな?」
ソウがカタリをじっと見据える。その視線は、すべきことはわかっているな? と命令しているかのようだった。
その視線に怯えることもなく、カタリはカーテシーを取る。
「お慶び申し上げます。ソウ殿下とサキさんの幸せを願い、婚約破棄のお話、お受けしますわ」
カタリは、いつ今しがた婚約破棄を告げられたとは思えない程の美しい微笑みで、こんな場面だというのに、つい見惚れてしまう者もいた。
ソウ王子が、婚約者とは別の少女にうつつを抜かしているという噂、少し前から立っていた。
しかし、誰もが火遊び程度のものだと思っていた。
何故なら、婚約者であるカタリは、王家に次いで力を持つダマシュ公爵家の令嬢であるからだ。
ソウがダマシュ公爵の怒りを買うことは免れないだろう。
今後、宮廷の勢力図の変化する可能性がある。その場にいる者たちは、誰に付くのが自身にとって有益かを即座に考え始めた。
「そうか。手続きは俺がしておこう。用件はそれだけだ。もう帰っていいぞ。さぁ、サキ、行こう」
「は、はい・・・・・・」
ソウはサキの肩を抱き、歩き出す。恐らく、彼の部屋に向かうのだろう。
サキはされるがままで、一瞬、カタリの方を振り返ったが、すぐに前を向き、ソウに身を任せた。
その唇には、僅かに喜びが溢れている。
「上手くいくよう、お祈り申し上げますわ」
ざわめく宮廷の中で、遠ざかるソウたちの背中を見つめ、カタリだけが静かに微笑んでいた。
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