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第一章 紫炎のグリモワール
13.紅い瞳の悪魔
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「レムガちゃんっていうのかぁ。可愛いなぁ」
朝。早めに出ようとしたら、玄関でお父さんと遭遇した。お父さんはレムガさんを見るや否や、口角を弛め、デレデレモードになってしまった。
昨日会いたそうにしてたもんね。レムガさんの頭を撫でまくっている。レムガさんはされるがままだけど、嫌なら抵抗してもいいんですよ?
「お父さん、私もう出なくちゃだから」
「ああ、そうか。父さんもそろそろ電車に間に合わなくなるな」
私とお父さんは靴を履き、お父さんは駅、私は学校へと真逆の道を進んだ。
携帯で時間を確認すると午前六時半。学校へは徒歩約二十分かかる。ホームルームは八時半からだから、七時につけば大丈夫かな?
ともにぃに早めにと言われたけど、正確な時間を訊いてないことに気づき、さっき直接確認した。メールをしたけど、返信が来なかったので、家に押しかけた。こういう時、家が近所だと便利だ。
「学園長、どうしたんでしょうね?」
私は腕に抱きかかえているレムガさんに訊ねた。
「学園長? トガリのこと?」
「はい」
見上げてくるレムガさんに頷く。レムガさんを朝一でって、ことはそれなりに急ぎの用があるのかな?
「トガリのことだから、なにか考えていると思うよ」
学園長のことをよく知っているような言い方。
「レムガさんと学園長ってどういう関係なんですか?」
「トガリ? トガリは──危ないっ!」
「え──? きゃあっ!!」
凄まじい爆発音と共に周囲の温度が急に上がった気がした。
思わず瞑ってしまった目を開くと、私は人の姿のレムガさんに抱きかかえられていた。さっきとは立場が逆だ。
理解が追いつかない頭で、それでも状況を把握しようとする。なんだか目線が高いことに気づき、自分が今、塀の上にいると気づく。
そして、自分たちがいた場所を確認すると、道路が焦げつき、少し抉れていた。何かが爆発したような焦げ跡。けれど、辺りにはそれらしき破片は一切見当たらない。
焦げ跡を見て、ひょっとしたら自分がふっ飛んだかもしれないという恐怖が沸き上がってきて、心臓がうるさく脈打つ。
何が起こったの……?
「ヒマワリ、大丈夫?」
「あ……、はい」
私とは打って変わって冷静なレムガさんが訊ねてくる。
ガクガクと震え、どう見ても大丈夫な状態じゃなかったが、掠れた声でなんとか頷いた。
「あの……一体何が……?」
恐る恐る訊ねる。
レムガさんは塀から飛び降り、私を下ろしてから数メートル手前にある路地影に向かって言った。
「なんのつもり? いるんでしょ? 出てきて」
初めて聞く厳しい声だった。
次に男の高笑いがして、路地から誰かが姿を現した。
最初に長い赤髪が目に入り、次に赤い瞳と目があった。コツコツと足音を立てるブーツに黒いオーバーパーカー。余った袖をぶらぶらと揺らしながら、男は言った。
「やっほー、レムガ。おはよう」
「ガル。なんで攻撃したきたの?」
陽気に笑う男にレムガさんは不機嫌に訊く。レムガさんもこんな表情するんだね。いや、攻撃されれば当然か。
レムガさんの台詞で、あの焦げ跡はどうやらこの人が作ったらしいことが分かった。正体は全く分からないけど。
男の人はレムガさんの質問を無視して話す。
「いやー、探したぜ。てっきりトガリのおもちゃ箱かと思ったけど、いないし。って、そのお嬢ちゃん誰?」
お嬢ちゃん──この場合、私しかいないよね。
「貴方こそ、誰ですか?」
私は相手の正体を確かめるため、訊き返した。
相手は顔をしかめることなく、あっさり答えた。
「オレ? 俺は魔王配下、第三眷族ファルガ族公爵。ガルランド・ゾーラ・ファルガッド。三番目の魔術書、紅炎のグリモワールのマスターだ」
「グリモワール……」
聞き覚えのある自己紹介にグリモワール。
炎を使う男。
レムガさんの知り合い。
「まさか──」
ヒントが脳内で符号していく。
その隣でレムガさんが正解を言った。
「ガルは僕と同じ──グリモワールの悪魔だよ」
朝。早めに出ようとしたら、玄関でお父さんと遭遇した。お父さんはレムガさんを見るや否や、口角を弛め、デレデレモードになってしまった。
昨日会いたそうにしてたもんね。レムガさんの頭を撫でまくっている。レムガさんはされるがままだけど、嫌なら抵抗してもいいんですよ?
「お父さん、私もう出なくちゃだから」
「ああ、そうか。父さんもそろそろ電車に間に合わなくなるな」
私とお父さんは靴を履き、お父さんは駅、私は学校へと真逆の道を進んだ。
携帯で時間を確認すると午前六時半。学校へは徒歩約二十分かかる。ホームルームは八時半からだから、七時につけば大丈夫かな?
ともにぃに早めにと言われたけど、正確な時間を訊いてないことに気づき、さっき直接確認した。メールをしたけど、返信が来なかったので、家に押しかけた。こういう時、家が近所だと便利だ。
「学園長、どうしたんでしょうね?」
私は腕に抱きかかえているレムガさんに訊ねた。
「学園長? トガリのこと?」
「はい」
見上げてくるレムガさんに頷く。レムガさんを朝一でって、ことはそれなりに急ぎの用があるのかな?
「トガリのことだから、なにか考えていると思うよ」
学園長のことをよく知っているような言い方。
「レムガさんと学園長ってどういう関係なんですか?」
「トガリ? トガリは──危ないっ!」
「え──? きゃあっ!!」
凄まじい爆発音と共に周囲の温度が急に上がった気がした。
思わず瞑ってしまった目を開くと、私は人の姿のレムガさんに抱きかかえられていた。さっきとは立場が逆だ。
理解が追いつかない頭で、それでも状況を把握しようとする。なんだか目線が高いことに気づき、自分が今、塀の上にいると気づく。
そして、自分たちがいた場所を確認すると、道路が焦げつき、少し抉れていた。何かが爆発したような焦げ跡。けれど、辺りにはそれらしき破片は一切見当たらない。
焦げ跡を見て、ひょっとしたら自分がふっ飛んだかもしれないという恐怖が沸き上がってきて、心臓がうるさく脈打つ。
何が起こったの……?
「ヒマワリ、大丈夫?」
「あ……、はい」
私とは打って変わって冷静なレムガさんが訊ねてくる。
ガクガクと震え、どう見ても大丈夫な状態じゃなかったが、掠れた声でなんとか頷いた。
「あの……一体何が……?」
恐る恐る訊ねる。
レムガさんは塀から飛び降り、私を下ろしてから数メートル手前にある路地影に向かって言った。
「なんのつもり? いるんでしょ? 出てきて」
初めて聞く厳しい声だった。
次に男の高笑いがして、路地から誰かが姿を現した。
最初に長い赤髪が目に入り、次に赤い瞳と目があった。コツコツと足音を立てるブーツに黒いオーバーパーカー。余った袖をぶらぶらと揺らしながら、男は言った。
「やっほー、レムガ。おはよう」
「ガル。なんで攻撃したきたの?」
陽気に笑う男にレムガさんは不機嫌に訊く。レムガさんもこんな表情するんだね。いや、攻撃されれば当然か。
レムガさんの台詞で、あの焦げ跡はどうやらこの人が作ったらしいことが分かった。正体は全く分からないけど。
男の人はレムガさんの質問を無視して話す。
「いやー、探したぜ。てっきりトガリのおもちゃ箱かと思ったけど、いないし。って、そのお嬢ちゃん誰?」
お嬢ちゃん──この場合、私しかいないよね。
「貴方こそ、誰ですか?」
私は相手の正体を確かめるため、訊き返した。
相手は顔をしかめることなく、あっさり答えた。
「オレ? 俺は魔王配下、第三眷族ファルガ族公爵。ガルランド・ゾーラ・ファルガッド。三番目の魔術書、紅炎のグリモワールのマスターだ」
「グリモワール……」
聞き覚えのある自己紹介にグリモワール。
炎を使う男。
レムガさんの知り合い。
「まさか──」
ヒントが脳内で符号していく。
その隣でレムガさんが正解を言った。
「ガルは僕と同じ──グリモワールの悪魔だよ」
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